[コラム]ものづくりの視点

vol.11ものづくりは“ツール”
LLCプロセスフォーカス代表
森本 五百樹

良いものづくりは、まず道具から。

 ~包丁一本晒しに巻いて~と歌にありますが、日本料理を作るに、包丁一本だけではどうも足りないようです。

素材の良さをそのまま生かし、色や形の美しさを保つためには、それぞれの素材と調理法にあった包丁を使いこなす必要があります。また、ここに日本料理の特色があるんですね。良いものづくりは、まず道具からというわけです。

 料理人がつかう包丁の9割は、大阪、堺の刃物だそうです。600年の歴史をもち、京料理や江戸前料理を支えてきた堺の包丁は、今もその生命を脈々と保っています。ここまでその寿命を永らえているものづくりの秘訣は何でしょうか。

 それは、「料理人にいい料理を作ってほしい」、たったその思いだけだそうです。お刺身包丁といっても、どんな魚に使うのか、薄作りなのかどうなのか、料理人の体格や考え方、いろいろ聞いて注文を受けて作り始める。すごいですね。でもそんな包丁で作った料理を食べられたら、また幸せというものです。

明治の時代、芝浦製作所(今の東芝)に、長崎から小林作太郎という一人の見習工が入社してきました。大変な努力家で、学校も出ていないのですが、創意工夫を重ね、最後はそこの取締役にまで出世しました。

そんな彼が自宅に作っていたもの。それは自分の工作室です。彼は、会社で使う工具を一人自宅で改良し、いい道具にして、そしていい製品を作る。昔の人の執念というか、集中心というか、すさまじいものを感じますね。

いい道具を作ること、そしてそれを使っていい製品を作る。昔から変わらないものづくりの原点です。

 

 

【掲載日:2008年10月29日】

森本 五百樹

LLCプロセスフォーカス代表
長野市出身 1946年生まれ ㈱東芝、GE東芝タービンコンポーネンツ、北芝電機勤務を経て 2007年 LLCプロセスフォーカス設立し、プロセスアナリシスとビジネスアナリシスをツールに経営改善をコンサルテイング並びにIT支援を行なっている。