[コラム]ものづくりの視点

vol.23創っても売れない・・・・
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

長野県テクノ財団は、「売れる製品づくり」を支援しています

 先日、当財団と同じような、企業を支援するための研究開発や人材育成事業を専門に実施している機関の全国会議がありました。その席上、「技術開発をするがその技術を基にして創った新製品が売れない、ましてや事業化できない」という悩みが、多数の参加者からありました。又、当財団には企業の皆様からの意見や提案を頂く運営委員会や企画委員会がありますが、その席でも決まって出るのが、「営業力を強化するための事業をしてほしい・・・」との提案です。

 中小企業の現場の人たちの間でよく言われている言葉に「1:10:100」があります。これは、新製品の"源"となる新技術の開発を成功させるために、企業がこの開発にかける総合的な力を"1"とすれば、それを新製品として売れる状態にする即ち製品化するには、その"10"倍の力が必要だ、更に、開発した新製品が売れて、人件費を支払い、設備投資をし、適正な利潤が上がり、持続的に商売ができること、すなわちこれを事業化といいますがこの事業化に成功するには"100"倍の力が必要だ、という言葉です。
 又「1に売り先、2に人材、3、4、が無くて5に技術」ともいわれています。企業経営にとって、「まず"1"番は売り先があることだ、次に大切なことは人材だ、力のある従業員が居ることだ、"3"、"4"、は無くて、技術は"5"番目だ・・・」というのです。それだけ売り先が大切だといっているのです。
 これらの言葉は、正確に分析し厳密に検証したものではありませんし、違う見解を持っておられる方もいらっしゃいますが、売ることの困難さを言い表した、中小企業の現場で経験的に言い交わされている言葉の一つです。

 技術者自身は、必ず売れる・・・と信じて開発に心血を注いで打ち込みますが、「技術開発には成功したが、それを基にして創った新製品が売れない、商売にならない、開発した投資が無駄になった、お蔵入りになってしまった・・・・」このような事例が大変多いのです。
 世の中には商品があふれています。売れる商品が沢山あります。消費者や、時代が求める製品を作れば必ず売れることも現実です。

 当財団の浅間テクノポリス地域センターでは、各企業の営業部門のトップクラスの方々に会員になっていただき、広告宣伝や販売組織、販売促進方法、消費者動向の変化など他人に言えない営業現場の"コツ"や"ノウハウ"など、お互いの経験を語り合って交流する「営業幹部交流フォーラム」を開催しています。
 他にも「販路開拓アドバイス事業」や「製品企画マーケティング塾」など、営業力強化のための事業を数多く実施しています。
 今後、新製品の開発から事業化までトータルで支援したり、製品の特色に合わせたきめ細かな営業力強化の事業を実施していきたいと考えています。

【掲載日:2009年1月 5日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。
http://www.tech.or.jp/