[コラム]ものづくりの視点

vol.25「市場」と「技術」の両面から新分野を探る
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

長野県テクノ財団では、企業の新分野進出を支援しています

 当財団では、現在、職員が遅くまで残業をし、来年度事業の編成作業をしています。
中でも今年は、大変厳しい経済環境を受けて、県内の関係企業からは、次の景気回復時に備えた新しい事業分野を模索する相談等が寄せられています。
 そこで当財団では、このような企業の新分野への進出を支援する事業を来年度事業の一つとして企画し、予算に組みこもうと考えています。

 私たちの周囲の身近な製品は、例えば 桶が木からプラスチックに変わり、衣服も綿や絹からポリエステル等に、レコードからCDになど、技術革新などにより変遷してきています。
 県内企業をみてもその主要製品は、製糸から電気部品へ、時計から半導体へなどと、時代の変化に合わせた新しい事業分野に次々と転換してきました。

 企業は、ゴーイング・コンサーン(継続企業体)として、倒産させることなく不断に成長することが求められています。そのためには、対象とする製品や事業の分野を常に成熟した分野から成長分野へと、転換し続ける必要があります。私どもでは、このことを"新分野進出"、とか"ドメイン(事業領域)の転換"などといっています。

 企業にとってこのような新分野進出は、失敗した場合大変大きな損害を被る危険性が十分あり、慎重を要します。その為検討しなければならない要点の一つに、開発した製品を買ってくれる「市場」があるのか、その企業に創れる「技術」があるのか・・・の2点があります。

 例えば、南信地域のある農業用機械メーカでは、農業用機械に使うコンプレッサーを製造していましたが、この技術を活用し、半導体の製造に使う装置を開発しました。この場合「市場」は従来と全く異なる半導体業界ですが、「技術」は、コンプレッサーという熟知した技術です。このような形を「新市場・現技術型」といっています。

 又 南信地域のある電機部品の加工企業では、従来数十ミクロン単位の切削しかできなかったものを、新しい機械を開発しミクロン単位まで可能となって、受注単価の高い精密部品の加工が可能になりました。
 このような新分野への進出の形態を「現市場・現技術型」といっています。

 北信地域のある建設機器の製造企業が、新たにレストランを開店しました。このような場合を「新市場・新技術型」といっています。

 このように、新分野への進出といっても様々な形がありノウハウが異なりますので、企業は、主として開発した製品の「市場」の将来性と自社の持つ「技術」の2点などから、成功するか否かを十分検討したうえで見込みがあれば進出することとなります。

 当財団では、このようないろいろな形の新分野進出をきめ細かく支援するため、新しい事業分野を探すための「新技術新市場探索セミー」や新分野に進出するためのノウハウや手法等を研修する「新分野進出戦略講座」、そして、当財団所属のコーディネータによる相談などを実施し、次の時代に対応した企業への脱皮をお手伝いしています。
 これらの取り組みは、県全体の産業構造を将来性ある成長産業へ転換することに寄与するものと考えています。

【掲載日:2009年2月20日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。
http://www.tech.or.jp/