[コラム]ものづくりの視点

vol.32霧が晴れれば、景色は全く違っている・・・・
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

「ものづくりNAGANO応援懇話会」から・・・

 先日、「ものづくりNAGANO応援懇話会」が、信州大学の遠藤守信教授にご出席いただき開催されました。この懇話会は、信越放送㈱が主催して「長野県の基幹産業である製造業、とりわけ世界的な技術を持つ力のある企業が多数ある県内の"ものづくり"の現状を、内外に広く情報発信していく・・」等の趣旨で昨年設立され、今回はその一環として開催されたものです。
 日本銀行松本支店の柳原支店長さんをはじめ、県内多数の有力企業の皆様が参加されました。

 まず、遠藤先生の講演があり、成長の鈍化低迷している国内製造業の現状とこれを打開する手段として、科学技術が、歴史的にみて経済社会発展の原動力になっている状況が紹介されました。先生が発明された新素材のカーボンナノチュ-ブは、航空宇宙からリチュウム電池などの身近な生活用品に至るまで大きな市場になることが予想され、その原動力の一つになるとみられています。
 大変夢のある元気になるお話を頂きました。

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090602colum-03.jpg その後、遠藤先生を囲み懇談会が開催され、出席された企業の方々からいろいろなお話がありました。その中で、「現在の大変厳しい経済環境下、いつ景気回復するのか予測できない現状の中で・・・トンネルの向こうには、新しい世界が開けている・・・、霧が晴れれば、景色は全く違っている・・・など、景気が回復した暁には、世の中に新しい技術や事業が多数立上るため、従来の事業のままでの企業経営では生き残りが難しい、新しい経済環境となっているだろう・・・。」
 従って、「今、次の一手を考えなければ・・・」との切実なご意見が、何人かの出席者からありました。

 私も全く同感です。企業は、現在のような霧のかかったいつ晴れるかわからない時にこそ、自社の強みと弱みを市場と技術の両面から分析し、"的"を新しい事業や次代の技術に絞る、その開発に予算と人を集中させて助走し始め、景気が回復したら一気に走る、他社を抜き去る・・それが、現在の企業戦略の一つではないかと考えます。

 長野県テクノ財団は、今こそが、全力でこれらを支援する時期ととらえ、次の新技術や新事業の"種"を広く紹介し、ヒントとなる素材を提供していきたいと考えています。
 現在、次代に狙いを定めた開発資金の導入支援や約50テーマの技術開発研究会を開催していますが、更に充実させて期待に応えていきたいと思います。

【掲載日:2009年6月 2日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。
http://www.tech.or.jp/