[コラム]ものづくりの視点

vol.44イノベーションとイノベーションブロック
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

組織の罠

 最近「イノベーション」という言葉が、国の各種施策の文章の中に、低炭素社会、クラスター、コンソーシアム等と並んで数多く使われています。いわば"はやり言葉"となっていますが、このイノベーションとは、"革新"とか、"新事業、新産業"との意味で使用されています。具体的には、個々の会社が、環境の変化に対応して技術革新や新しいビジネスモデルを発想し、新事業を興し次の成長の波に乗ることがイノベーションの"真の意味"といえましょうか。

 長野県テクノ財団では、各種の研究会を開催しています。その中で会員から時おり悩みの一つとして、新しい提案をしても、自社の社内で正当に評価されないことや理解が進まないことなど"外"よりもむしろ"内"に、新事業化が進まない要因がある・・・等が出されます。
 私は若い頃、県内の企業の現場を訪問しいろいろな相談に乗っていました。その際よく出る話題が、原因は内にある・・・ということでした。

 このことは、その会社の風土や文化が、"横並び思考、指示待ち姿勢、年功序列、怒れない上司、少数意見排除、前例慣例主義、減点・完全主義、問題先送り"等、イノベーションを阻害する組織になってしまっていることによる場合が多いのです。これらのことを、イノベーションブロック(革新阻害要因)とよび、企業が成長できない要因となってしまう"組織の罠"とも言われています。

 競合企業との厳しい競争に打ち勝ち、新事業を成長軌道に乗せるというイノベーションを興していくためには、会社の総合力を結集した全社的な取り組みが求められています。その際、会社の組織を"能力・独創重視、若手登用、だら幹の追放、加点主義、組織の分割・合併"等により、新しい"戦う組織・風土"に創りかえることが、最も重要とされています。そうでないとせっかく技術開発しても新商品や新事業に育たず 宝の持ち腐れとなり、イノベーションとは程遠い結果となることが多いのです。即ちイノベーションブロックを徹底して克服することが、イノベーション成功の一つの鍵といえましょう。(「新分野進出の実際」で詳述、昭和61年長野県中小企業総合指導所発行)

 当財団では、経営革新リーダ養成講座や次世代リーダ養成塾等を開催し、イノベーションを根底から支える企業の本当の力を醸成したいと考えています。

【掲載日:2010年1月13日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。 http://www.tech.or.jp/