[コラム]ものづくりの視点

vol.92おはよう爺さん
山岸國耿

 先日、 朝 畑で、近所の私より6才年上の先輩とよもやま話をしていました。ちょうどその時間は、中学生の通学時間滞で何人もの中学生が通り過ぎましたが、その先輩は必ず「おはよう!」と声をかけておられました。「おーすごいな」と感心してしまいました。今まで私は、中学生との挨拶は、その様子を見て挨拶をするようであればしますが、そうでなければしませんでした。

 そこで思い起こされましたのが、私が小学生のころ、ある近所のおじいさんが、私ども小学生にも必ず「おはよう!こんにちは!」と声をかけてくださいました。そのことを家に帰って、「あのおじいさんは、私達小さい子供にも必ず挨拶されるよ。」と親に話すと、「あのおじいさんは、村の中で日頃から立派な方なのだ。「みのるほど、こうべの垂れる稲穂かな」ということわざがある。立派な人ほどきちんと挨拶するものなのだ。あのおじいさんを見習って、お前たちもどなたにも必ず挨拶するように。」と言われたことを思いだしました。

 さて、私は若いころ県内の中小企業を巡回訪問し、経営や技術など各種の相談にあずかっていました。その際現場でよく話題となったことに、「若い従業員は挨拶が下手だ、しっかりできない。」などがありました。「朝礼などもしたいが、スムーズにできない。又、今まで作成していなかった簡単な日報などを、新たに記入させたいが円滑にいかない。」など簡単なことだと思っていることでも、新たに習慣づけることの大変さが話題に出ました。

 家には家風があるように、企業にもそれぞれ社風があります。社会の変化や企業の成長に合わせ、良い意味で社内での習慣等のしつけをすることも、必要なことと言えましょう。企業を訪問した時など、隅まで掃除され整理・整頓された企業もありますが、そうでない企業もあります。
 挨拶をきちんとすることが、堅実な社風や企業文化を創り出していく第一歩と言えますし、社会人として社会生活をしていく上でも大切なことと言えましょう。

 あれ以来、中学生と会えば必ず挨拶をすることとしています。更に小学生にも「おはよう!」と声をかけ始めました。すると、全く他のことに気を取られていた小学生が、おやという顔をこちらに向けながら「おはよう!」と返事を返してきます。最近では、「こんにちは!」と、向こうから声をかけてくる小学生も現れてきました。
 学校で挨拶の教育を受けているとはいえ、実に清々しく楽しいことではありませんか。

【掲載日:2011年7月14日】

山岸國耿


昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。
長野県工業試験場長を最後に定年退職。その後財団法人長野県テクノ財団に勤務、専務理事を平成22年3月末に退任、平成22年5月に公益財団法人 HIOKI奨学・緑化基金の監事に就任。
平成22年7月に国の地域活性化伝道師に就任。