[コラム]ものづくりの視点

vol.107教育も輸出できる??・・・商業サービス業の海外進出
山岸國耿

 最近のメディアによりますと、ユニクロは中国に1,000店舗を展開、佐川急便はベトナムに進出、ユニチャームもインドで販売開始、イオンはベトナムへの投資が1200億円に拡大、ツヴァイはタイで婚活事業に参入。また、教育分野でも、公文のインドネシアの教室は550に、学研はアジアで日本語教室、ベネッセもアジアで幼児教育塾をスタート。ドラッグストア業界でもアジアに大量出店、更に良品計画、ワタミ、吉野家等小売・外食産業の海外出店数が国内を逆転する等々、大手企業やサービス業各社のアジア進出が大きく報じられています。これらは国内の需要の低迷に見切りをつけ、巨大な中間層が生まれようとしているアジアへの関心の高まっていることを実感するニュースです。

 一方、労働生産性という指標があります。これは、労働者1人当たりがうみ出す稼ぎ高(付加価値)や生産の効率性・・・を指しています。企業の利益や従業員の賃金、更には経済成長の推進力につながる重要な指標です。
 報道によりますと、我国の労働生産性は、OECDなどの先進国34か国中第20位と極めて低い状況にあります。特に、米国を100%として比較すると、全業種では67%ですが、自動車、電機等は高いものの、内需型の商業サービス業などでは極めて低く「我国の労働生産性全体の足を引っ張っている。」とも言われ、これらの向上が産業構造上最大の課題となっています。

 前にも紹介致しましたが、東京大学の戸堂教授は「企業が国際化して海外とつながることで、新しい技術や知恵を生み出して成長する。」と、国内にとどまるよりも進出した企業の方が発展していると言っておられます。
 当然海外では、国内と違い社会や経済の仕組み、商習慣、制度等が全く異なります。その中で、リスクをとって、良いサービスや商品を安く提供して厳しい競争に打勝ち、より効率的で高い付加価値をうみだす強い企業に生まれ変わることが期待されます。そのノウハウが、会社全体に広がり労働生産性の向上につながるものと思います。
 「スポーツ選手が強くなるためには、地区大会を目指すのみでなく、オリンピックを目指せ。」と言われていますが、海外進出も一面同じことが言えましょう。

 このような商業サービス業等の海外進出は、人口減少時代に入り需要が拡大しない経済環境から抜け出るとともに、我国経済の最大の課題であるこれら業種の低生産性を改善するための一つの手段となりましょう。
 更には、農業や医療等の他の業種の海外進出や、アジアのみでなく欧米等先進諸国への進出も大いに期待されます。
 加えて「日本の常識は世界の非常識」とか、「日本の社会は内向き化し、益々ガラパゴス化している。」とも言われており、このような他流試合が社会経済全般に良い波及効果をもたらすものと思います。

【掲載日:2012年4月 9日】

山岸國耿


昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。
長野県工業試験場長を最後に定年退職。その後財団法人長野県テクノ財団に勤務、専務理事を平成22年3月末に退任、平成22年5月に公益財団法人 HIOKI奨学・緑化基金の監事に就任。
平成22年7月に国の地域活性化伝道師に就任。