[コラム]ものづくりの視点

vol.48赤提灯が高度経済成長を支えてきた???
山岸 國耿

 私ごとで恐縮ですが、この3月に定年で長野県テクノ財団を退任いたしました。ご支援ご協力有難うございました。
 実はその際、仲間の皆さんから何度かに渡り送別会を開催していただきました。私も長いサラリーマン生活のなかで、送ったり送られたりと数多く経験いたしました。送別会が終わると仕事上の今までの様々な課題や悩み事が吹っ切れて、新しい仕事に対する不安と期待に思いを巡らしたものでした。気持ちの切り替えに、とても役立つ催しでした。
 同じように、春の"花見"、夏の"暑気払い"、暮れの"忘年会"などは、それぞれ季節の移り変わりに"息を一つ入れ、リフレッシュができる"良いチャンスとなりました。

 先月、ある政党の衆議院議員が、自分の政党の幹部や執行部の批判をマスコミに発表いたしました。そのことを同じ政党の仲間の議員が、「同じ党の批判を外部にしてはいけない、批判できるのは"赤提灯"までだ。」とマスコミに語っておられました。

 同じ様なことが日本的企業経営の中で、上司に対する様々な思いなどを赤提灯で仲間同士語り合うことが、ガス抜きとなり共同体意識を醸成し明日への元気の源となっています。
 西欧の企業経営では、職場でも、極めて合理的な割り切った考え方をする・・とのことですが、日本の企業風土では、社員間の強い紐帯や連帯感、帰属意識、忠誠心などが重要視されています。 その反面として赤提灯が、人間関係を深める一方で、表向きに言えない組織等への意見や不満の捌け口の役割を果たしている・・ともいえましょう。

 このように、送別会や赤提灯などが、成長する組織や戦う企業を創る上で、士気向上の面からその一旦を担ってきたともいえましょう・・。
 そのことを指して「赤提灯が、日本の高度経済成長を支えてきた ???」との声も・・・
 これらのことは、人々の人生観や幸福感が変わり、世代が変われば昔話となるでしょうが・・・、
 さて皆様、いかがでしょうか、

【掲載日:2010年4月21日】

山岸 國耿


昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。その後財団法人長野県テクノ財団に勤務、専務理事を平成22年3月末に退任

vol.47盛んな産産交流
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

隠れた成果を生む

 長野県テクノ財団では、現在来年度の事業計画を立てています。その検討の中で、本年度当財団に入った職員から「今年【次世代人材養成塾】を担当し、年間5回開催した。年度最後の会合の時、会員から来年度もぜひ続けてほしいとの要望があった。特に会員同士で"仕事の取引が始まったり、共同研究に向け技術者の往来等が始まった"などの報告があった。この会は、講師の御指導のもと会員企業を訪問して勉強等してきたが、その成果に加え、予想しなかった会員同士のこのような水面下での実質的な交流が始まり驚いた。」との報告がありました。

 この塾では、次世代の経営幹部を育成することを狙いに、会員数10数名で組織され、年間5回程会員企業を順番に訪問して、企業経営経験者である講師からのアドバイスに基づき、訪問企業の経営課題の解決方法等について勉強しています。

 当財団は、このような会員制の研究会や塾を80個ほど開催しています。そのほとんどが、大学の先生方にご指導を頂く産学官交流のスタイルです。
 中には、今回のように、大学の先生によらずに企業の方々を中心とする研究会や塾も開催しています。当然講師や見学先等からのいろいろな勉強や会員の情報交流等が中心となりますが、今回の塾のように、参加した会員同士が回数を重ねるごとに親しくなり、新鮮な人間関係が築かれ自然発生的にお互いに自分の企業を紹介したりして、会員同士の商売や共同研究にまで具体的に進む場合が大変多いのです。
 ただこのような事例は、企業秘密に関することが多いため表に出ないのですが、件数ではかなりの数となっています。

 これらのような企業と企業の交流スタイルを、"産産交流"と呼んでいます。"産学官交流"も成果が上がりますが、このような産産交流にも隠れた成果が数多く上がるため、参加者も多く、人気の事業の一つとなっています。
 産学官交流よりも産産交流のほうが成果が上がる・・?? との声も
 当財団としましても今後に向け、このような研究会等を数多く実施していきたいと考えています。

【掲載日:2010年3月26日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。 http://www.tech.or.jp/

vol.46研究開発資金 21億円を導入
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

 長野県テクノ財団では、講習会や先端技術研究会などいろいろな事業を実施しています。その一つとして以前にもお話しいたしましたが、国などには、企業の研究開発等を支援する各種の補助金等の制度があり、当財団では、それらを導入する際の申請書類の作成のお手伝いや、管理法人として補助金等の経理処理を担当することなど、様々な面で支援をしています。

 これら研究開発に向けた補助金等は、"提案公募型競争的資金"とも呼ばれ、多種多様なメニューがあります。全国に広く公募され、企業等から多数の提案・応募があり、その中から慎重な審査を経て採否が決定されます。

 企業にとっては、研究開発は、多額な資金を使っても失敗することも多くリスクの高いものなので、このような公費による支援は大変ありがたいものとなっています。   

 また一面、研究開発は、一企業の技術力の向上のみならず、産業構造の高度化を促し、雇用の確保等を通じ地域にも貢献いたします。

 当財団では、平成21年度は、件数では平年ベースの2倍の約60件、金額では、総額で21億円と平年より約5億円多く、企業等へのこれら資金の導入を支援することができました。

 ある企業関係の方からは、「企業で売上高に占める研究開発費の割合は平均3%と言われている。従って今回の21億円の研究開発資金は、逆算すると約600億円を売り上げる企業の研究開発資金に匹敵する」との話しも・・??

 当財団では、事業活動の自己評価項目の一つとして、これら資金の企業等への導入支援を、件数・金額として掲げ、職員一丸となって取り組んでおり、今年度の結果に大変喜んでいるところです。

 今後もこのような、企業等の研究開発力の向上に役立つ、提案公募型の競争的資金の導入を積極的に図っていきたいと考えています。

【掲載日:2010年3月 8日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。 http://www.tech.or.jp/