[コラム]ものづくりの視点

vol.27100の反対意見がある・・・
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

長野県テクノ財団は“挑戦する企業づくり”を支援しています

 新しいことを始めようとする新提案には、「100個の反対意見がある」とよく言われます。・・・金がないから、人手がないから、時期がよくないから、・・よくある意見です。

 県内の大手企業で、長い間トップをされている長老が、「わが社の最大の問題点は、昨年と同じことをしていることだ」と言われていました。企業経営のすべての場面において、昨年と同じように前例を踏襲するだけで、問題意識を持たず、ことに当たって改善しようとしない・・・、このような現象をイノベーション・ブロック(改革阻害要因)といっていますが、そのような企業体質や社風、行動様式を戒められた言葉です。

 新しいことを始めますと、リスクが確かにあります。始めた人は、そのリスクを負わなければならなくなります。前例踏襲は安全ですし、改革に尻ごみすることも一面うなずけます。
 しかし、「リスクを取る人が社会を拓く、経済を拓く」ことも又真実です。

 米国のオバマ氏が「チエンジ」をかかげ新大統領になりました。米国でも変化が必要なのでしょう。
 日本は、外国から見て「変わりたく無い日本」と言われているとのこと、日本人は保守的なのでしょうか。

 さて、企業経営は「変化への対応」とよく言われます。社会、経済、消費者動向など企業をめぐる環境は、めまぐるしく変化しています。又その速度も近年きわめて速く、思いもかけないことが瞬く間に広がります。このような環境変化の本質を適確に把握し柔軟に対応することが、企業経営全般に必要と言えましょう。企業の組織や運営のあり方など、徹底した改革が求められています。

 当財団では、「経営革新リーダ養成塾」や「若手経営者育成講座」等、このような企業風土や経営組織の改革、あるいは、新しい経営者やリーダのあり方等の講座を開設しています。今後も"強い企業づくり"や"挑戦する企業づくり"など経営革新への支援もしていきたいと思います。
 なお、このことは、当財団も・・・新しいことに挑戦する組織にしなければ・・・と私自身、日ごろ自戒していることの一つでもあります。

【掲載日:2009年3月 4日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。
http://www.tech.or.jp/

vol.26海外企業・大学等と技術交流をする
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

長野県テクノ財団は 国際連携を推進しています

 先日 当財団では、「国際ナノ・ワークショップ in長野」を長野市で開催いたしました。カナダ、フィンランド、イタリア、韓国等のナノテクノロジー(超微細技術)を研究する企業及び大学関係者に多数お集まりいただき、研究開発の現状が発表されました。大変活発な質疑があり盛会でした。

 その際、当財団は、カナダのケベック州の産学官連携組織「ナノケベック」との間で、「連携協定」を締結しました。「ナノケベック」は当財団と同様、地域産業の高度化をねらいとして、ナノテクテクノロジーの世界的先進地をめざし各種の事業を実施しています。今後互いに科学技術に関する情報の交換や、人的交流等をしていきたいと考えています。

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 当財団では、昨年9月にもイタリアの官民出資企業「ベネトナノテック」と同じく「連携協定」を結び、以後連携の第一歩として技術情報の交換等をし始めていますが、今回はその第2弾となるものです。

 当財団は、文部科学省から委託費を受けて、産学官連携により地域に新産業を育成する「知的クラスター創成事業」を実施しています。その事業の一環として、ナノテクノロジー分野で世界最先端の開発拠点となることを目指し、信州大学とブリティッシュコロンビア大学(カナダ)との連携やウイーン大学(オーストリア)、ミシガン州立大学(米国)等の先生方との交流などを実施しています。

 一方企業は、国内のみならず、海外の企業との厳しい競争にさらされており、開発力、生産力、販売力等経営全般にわたり海外企業と太刀打ちできる総合的な力、即ち国際経営力の向上が急務です。特に日進月歩する科学技術面では、将来を見据え一歩も譲れない環境下にあります。そのため、海外の大学や企業との情報交換や人的交流等は欠かせない状況となっています。

 そこで、当財団では、今後もナノテクノロジー等県内産業を先導する技術の海外の先進地域や大学等と密接な情報交換等をするため、「連携協定」を結び、県内企業の技術力向上に役立てていきたいと考えています。

【掲載日:2009年2月25日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。
http://www.tech.or.jp/

vol.25「市場」と「技術」の両面から新分野を探る
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

長野県テクノ財団では、企業の新分野進出を支援しています

 当財団では、現在、職員が遅くまで残業をし、来年度事業の編成作業をしています。
中でも今年は、大変厳しい経済環境を受けて、県内の関係企業からは、次の景気回復時に備えた新しい事業分野を模索する相談等が寄せられています。
 そこで当財団では、このような企業の新分野への進出を支援する事業を来年度事業の一つとして企画し、予算に組みこもうと考えています。

 私たちの周囲の身近な製品は、例えば 桶が木からプラスチックに変わり、衣服も綿や絹からポリエステル等に、レコードからCDになど、技術革新などにより変遷してきています。
 県内企業をみてもその主要製品は、製糸から電気部品へ、時計から半導体へなどと、時代の変化に合わせた新しい事業分野に次々と転換してきました。

 企業は、ゴーイング・コンサーン(継続企業体)として、倒産させることなく不断に成長することが求められています。そのためには、対象とする製品や事業の分野を常に成熟した分野から成長分野へと、転換し続ける必要があります。私どもでは、このことを"新分野進出"、とか"ドメイン(事業領域)の転換"などといっています。

 企業にとってこのような新分野進出は、失敗した場合大変大きな損害を被る危険性が十分あり、慎重を要します。その為検討しなければならない要点の一つに、開発した製品を買ってくれる「市場」があるのか、その企業に創れる「技術」があるのか・・・の2点があります。

 例えば、南信地域のある農業用機械メーカでは、農業用機械に使うコンプレッサーを製造していましたが、この技術を活用し、半導体の製造に使う装置を開発しました。この場合「市場」は従来と全く異なる半導体業界ですが、「技術」は、コンプレッサーという熟知した技術です。このような形を「新市場・現技術型」といっています。

 又 南信地域のある電機部品の加工企業では、従来数十ミクロン単位の切削しかできなかったものを、新しい機械を開発しミクロン単位まで可能となって、受注単価の高い精密部品の加工が可能になりました。
 このような新分野への進出の形態を「現市場・現技術型」といっています。

 北信地域のある建設機器の製造企業が、新たにレストランを開店しました。このような場合を「新市場・新技術型」といっています。

 このように、新分野への進出といっても様々な形がありノウハウが異なりますので、企業は、主として開発した製品の「市場」の将来性と自社の持つ「技術」の2点などから、成功するか否かを十分検討したうえで見込みがあれば進出することとなります。

 当財団では、このようないろいろな形の新分野進出をきめ細かく支援するため、新しい事業分野を探すための「新技術新市場探索セミー」や新分野に進出するためのノウハウや手法等を研修する「新分野進出戦略講座」、そして、当財団所属のコーディネータによる相談などを実施し、次の時代に対応した企業への脱皮をお手伝いしています。
 これらの取り組みは、県全体の産業構造を将来性ある成長産業へ転換することに寄与するものと考えています。

【掲載日:2009年2月20日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。
http://www.tech.or.jp/