[コラム]ものづくりの視点

vol.21技術シーズと技術ニーズとの出会いの場、産学連携交流会
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

長野県テクノ財団はその仲人役を勤めています

081208column-1.jpg先日「物質・材料研究機構シーズ発表会」を諏訪市で開催しました。企業から多数の参加者があり、活発な質疑がありました。この研究機構は、総人数1600余名という大変大きな研究機関で世界最高レベルの研究開発をしています。この機構の第一線の研究者6名の方々に、企業の技術課題の解決や開発ニーズに役立つテーマで、技術者を対象とした発表をしていただきました。

 

 

 

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当財団は、信州大学はもとより、東京理科大学、群馬大学等の技術シーズと企業の技術ニーズをマッチングさせる工科系の「産学連携交流会」や医学部や農学部等との「医工・医農連携交流会」を、年数回開催しています。
この「技術シーズ」という言葉ですが、大学等で開発された企業の新製品開発等に役立つ"種"となる技術を指しています。「技術ニーズ」とは、企業が新製品等を開発するのに必要な技術を指しています。これらの技術シーズを持つ大学等の先生と技術ニーズを持つ企業の技術者が交流し情報を交換することを「シーズとニーズのマッチング」といっています。いわば、"将来ある若者同士の出会いの場"とでもいいましょうか。

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昨年、このような産学連携交流会が縁で当財団のコーディネータが仲介し、東信地域のある企業と群馬大学の先生の間で共同研究契約が結ばれ、現在研究開発が進んでいます。
又、東京理科大学の先生とある企業との間で、現在共同研究契約締結に向け、話合いが進んでいます。このようにかなりの数の企業で、大学等の先生の技術を活用して新製品等の開発が進められています。そしてこの仲介を当財団のコーディネータが勤めています。

当財団では、大学と企業の連携による技術開発の推進を事業の最大の柱としていますが、その最初の入り口となるのがこの産学連携交流会です。
新しい産業の芽となり、新分野を拓くこのような技術の交流会を積極的に開催し、共同研究や新製品の開発等に結び付けていきたいと考えています。

【掲載日:2008年12月 8日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。
http://www.tech.or.jp/

vol.20自社製品を持ちたい・・・
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

部品型企業から製品型企業への転換を支援(その1)

企業には、大きく分類すると、「部品型企業」と「製品型企業」があります。
まず「部品型企業」ですが、これは、"もの"づくりの工程である「企画、開発、生産、販売」のうちの「生産」工程を主に分担し、特定の親企業から受注した部品を生産するいわゆる下請け型の企業です。県内には、自動車や電機などの県内製造業の主力となる分野に数多くの部品型企業があり、その中には、高い生産性を有し、品質の良いものを生産している企業が多数あります。

一方、県内には少数ですが、「製品型企業」があります。これは先ほどの「企画、開発、生産、販売」工程が全部一貫して社内にある企業のことを指しています。これらの企業は、製品開発のための技術者や販売店に営業マンを配置したりして、不特定なお客を受注先としています。
企画や開発などのことを「源流工程」といいますが、「利益の源泉は源流工程にあり」といわれるように、この工程を持つ製品型企業は、部品型企業に比較し、利幅の大きい場合が多いのです。

たとえば、東信地区のある企業の場合、長年電気メーカの下請けをしていましたが、近年 懸案だった介護用品の開発を始めました。そこで当財団では、この企業に大学の先生を紹介したり、共同して研究会を立ち上げるなど支援しています。
又北信のある企業では、社長さんがお一人で数十年前から家庭用品を開発していましたが売れるものができず長い間苦労されていました。当財団でも折に触れ相談に乗っていたところ、最近ようやく売れる新製品が開発できて、従業員も数人雇うまでになり社長さんのご努力が実りました。

当財団では、部品型企業に対しては、生産性向上のための研修会等を開催したり、部品の性能向上のための技術開発などを支援しています。
その一方で、製品型企業の技術開発も積極的に応援しています。大学の先生を紹介したり、共同研究の相手を見つけたり、技術開発研究会を組織したりなど技術面から応援しています。
特に・・・今は下請け企業だが、ぜひ自社製品を開発したい・・・と、最近 部品型企業から製品型企業を目指す企業がみられます。
これらは、活力ある新産業を生み出す"源"となる場合が多いので、技術面のみならず、経営や販売面からも全面的に応援しています。

 

 

【掲載日:2008年12月 1日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。
http://www.tech.or.jp/

vol.19世界に日本の技術力の高さをアピールした日本国際工作機械見本市
LLCプロセスフォーカス代表
森本 五百樹

工作機械は十一面観音像

 日本の工作機械は、その技術の高さをとっても、出荷高の規模をとっても、世界ナンバーワンです。質、量とも、ドイツやアメリカを抜いて世界の頂点に立っています。そんな日本のレベルを見せてくれる工作機械の国際見本市が、今年も東京ビッグサイトで6日間にわたって開催されました。

 ビッグサイト全体を使った展示会ですから、全部見て回るのも大変。敷地85000㎡ですから、東京ドームの約2倍。ここに国内外工作機械や工具メーカなど600社が最先端の技術を展示してくれます。
実際行ってみると、モノを形にする機械の素晴らしさに圧倒されます。

 機械というと騒音と油。昔は、そんなイメージだったのですが、今はまったく違います。切削機械は、素早く静かにモノを削り出し、プレスは、しなやかに動きます。見ていて、その動きの美しさや創造の場にいる実感に少しくうなります。

 どんな複雑な形をしていても、材料と工具を巧妙に動かして形を作ってしまう、その高度な技術。工作機械のその姿は、なんとなく十一面観音像のようです。あちらこちらから手が出てきて、あっという間に輝く製品が出来上がってしまいます。自由自在に動く機能を備えた機械とそれを同時に即時に制御するソフトウエアの力。この二つの技術を融合させて、工作機械を世界のトップに押し上げた日本の実力は、どこから来たのでしょうか。歴史と伝統を受け継いできた先人たちの努力に頭の下がる思いです。

美術館もいいものですが、モノつくりに直接携わっていない人にとっても、2年に1度のこんな見本市に出かけてみるのも、いろんな発見をするのではないでしょうか。何といっても人間は、道具を使う動物なんですから。

 

 

【掲載日:2008年11月26日】

森本 五百樹

LLCプロセスフォーカス代表
長野市出身 1946年生まれ ㈱東芝、GE東芝タービンコンポーネンツ、北芝電機勤務を経て 2007年 LLCプロセスフォーカス設立し、プロセスアナリシスとビジネスアナリシスをツールに経営改善をコンサルテイング並びにIT支援を行なっている。