[コラム]ものづくりの視点

vol.99ASEAN地域最大級の金属加工、工作機械見本市「METALEX2011」が開幕
財団法人長野県テクノ財団 海外展開戦略支援オフィス プロデュ―サー
若林謙一

 未曾有の洪水のために延期を余儀なくされたASEAN地域最大級の金属加工機械及び工作機械見本市「METALEX2011」が21日(水)、タイのバンコク国際貿易展示場(BITEC)で開幕しました。

 25回目ともなる今年のテーマは"MANUFACTURING REVIVAL"(モノづくり再興)。
 オープンセレモニーではタイの閣僚らが洪水の被害を受けた企業に対して、最大限の援助と早急な復旧を約束すると宣言。タイ中部を襲った大洪水で1カ月以上遅れての縮小開催となったものの、11カ国の特設パピリオンの他、世界各国から2,700を超える企業と、約4,000の新型加工機械、技術、加工品などが並びました。

 見本市会場は多くの来場者の熱気に包まれ、タイの金属加工業界の健在ぶりをアピールしていました。長野県からは、JETRO(日本貿易振興機構)の支援を受けて、(株)アルプスツール(坂城町)、オリオン機械(株)(須坂市)、(株)サイベックコーポレーション(塩尻市)、太陽工業(株)(諏訪市)、東洋精機工業(株)(茅野市)、(株)ホクト精工(千曲市)の6社(過去最多)が出展。NAGANOのモノづくり産業が誇る"超精密技術"をPRするとともに、商談コーナーには多くのバイヤーらが訪れています。

 展示会は24日(土)まで続き昨年を凌ぐ68,000人もの来場者を見込んでいます。

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【掲載日:2011年12月22日】

若林謙一

財団法人長野県テクノ財団 海外展開戦略支援オフィス プロデュ―サー

vol.98縦割り現象
山岸國耿

 先日、ある大手証券会社に勤務している20才代の知人が、訪ねてきました。「実は会社を辞めた。まだ再就職先は決まっていない。」とのこと。「大企業に勤務しており将来を大いに嘱望されていたのに、残念だ」と言ったところ、「会社の都合もあって・・・」とのことでした。

 最近大手の銀行グループでも、人員削減の動きがありました。更に電機関係の大手企業からも、業績の悪化による同様の話を聞きます。

 私の若いころ倒産とか、首切りと言えば、まず中小企業でした。大企業に就職すれば、退職まで安泰だ。 ・・・と決まっているようなものでした。大企業を頂点とし中堅企業、中企業、そして多数の小企業とピラミットのように企業構造を描いた時、大企業グループに倒産が少なく、中小企業グループに倒産が多いという状況を指して、このピラミットを上と下とに横に切ったような「横割り現象」であった。・・と言えましょうか。

 しかし、最近では大企業でも終身雇用を保障されない厳しい時代となってきています。
 中小企業のみならず、大企業でも実質的に人員整理をする企業も多くみられ、大企業でも中小企業でもそれぞれが、健全な会社とそうでない会社とに分かれる構造となって、ピラミットを縦に切ったような「縦割り現象」となってきています。

 森は、古い木を倒木しなければ新しい木が育たない。・・・との、「倒木更新」という言葉があります。地域の雇用等に大きな貢献をしている企業の倒産は、影響も大きく大変残念なことですが、一面リスクを取って利潤をあげている現在の株式会社制度は、倒産も想定していると言えましょう。

 技術革新や消費者動向の変化、グローバル化などによって、産業の新陳代謝は益々短サイクル化してきています。海外企業の動向にも全く目を離せません。一瞬の判断のミスから商機を失うと、大企業といえども短期間に経営自体に大きなダメージを受ける時代となりました。更に今後、市場からの強制退場を迫られる事例が多くなる、厳しい経済環境が予想されます。
 今回は、良く知る優秀な知人の退職から、経済環境の大変な厳しさを肌身で感じた次第です。

【掲載日:2011年11月30日】

山岸國耿


昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。
長野県工業試験場長を最後に定年退職。その後財団法人長野県テクノ財団に勤務、専務理事を平成22年3月末に退任、平成22年5月に公益財団法人 HIOKI奨学・緑化基金の監事に就任。
平成22年7月に国の地域活性化伝道師に就任。

vol.97おいしいリンゴ
山岸國耿

 昨秋イギリスを訪問する機会がありました。毎日バイキング方式の朝食に、リンゴが出されました。そのリンゴは、私などが小さい頃食べたあのリンゴに似たものでした。小さく固く酸っぱさがあって、懐かしく当時を思い出しました。現在私たちが食べている「ふじ」などのようなリンゴが見当たらないので、食品店や食堂など行く先々で、注意してリンゴを見ていましたが、ほとんどがあのようなリンゴでした。日本の現在のリンゴは、品種改良と栽培技術の向上によって私の小さい頃のリンゴとは全く違ってきています。数少ない海外旅行で見た経験ですから、確定的に言えることではありませんが、日本では日常的に見るようなリンゴが、私の見渡した中に無く大変驚きました。
 家内も同行しましたが、他の果物や野菜についてもいくつかで同じ思いを持ったようです。

 このような思いを持っていた矢先に、長野県の阿部知事さんがイタリアを訪問され現地の生産団体と協議されて、長野県が開発したリンゴの新品種「シナノゴールド」をイタリアで栽培することになったとのニュースを聞きました。イタリアでも日本の新技術によるリンゴが栽培されるようになるのか・・と感慨を深くしました。

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 先日、日経新聞の紙上で、東京大学の戸堂教授は「輸出や直接投資等の海外交易を進めている企業は、していない企業と比較すると生産性がより上昇するし、国際化を進めることによって今までには無かった知恵や技術を生みだして成長する。又日本の農産物の多くが海外のものよりも品質が高い。日本発の農産物を世界に広めていけるのではないか。」と述べておられました。

 又、先日の日経新聞紙上には、「我国は少子化等によって内需が縮小に向かう。加えて、中・高所得層は高々1億人余りであるのに対して、アジア等では、今後10年間で約19億人に増大し巨大なマーケットになることが予想されている。現在"日本通運が引越業務を、セコムが警備サービスを、ヤマハが音楽教室を・・・"などと、今まで海外と全く関係の無かったサービス産業においても、アジア等への進出が加速している。」と報道されました。

 今回のリンゴについては、全くの素人ですので、単なる評論的なことは言ってはいけませんが、農業分野やいろいろな分野でこのような海外展開の余地があるのではないでしょうか。
 今まで国内向けであって国際競争の無い業種の中にも、海外企業との競争に充分打勝つ分野が多数あるのではないかと思います。

 戸堂教授が述べておられましたとおり、海外交易を積極的果敢に推進することが今後の我国経済発展の有力な手段の一つになると思います。
 特に電気、自動車などの外需型の業種のみでなく、それ以外の金融、医療、公共、土木、サービスなどの内需型産業の国際化がその鍵となるのではないでしょうか。
 企業は、一面からみるとゴーイングコンサーン(継続企業体)として宿命的に成長し続けざるを得ない組織体です。成長し勝ち続けるためには、小さな市場から大きな市場に打って出ることも選択肢の一つと言えましょう。
 これら関係企業のリスクを恐れない奮闘に期待したいものです。

【掲載日:2011年10月28日】

山岸國耿


昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。
長野県工業試験場長を最後に定年退職。その後財団法人長野県テクノ財団に勤務、専務理事を平成22年3月末に退任、平成22年5月に公益財団法人 HIOKI奨学・緑化基金の監事に就任。
平成22年7月に国の地域活性化伝道師に就任。