[サイプラススペシャル]03 一貫生産 ゼロから作る 時代のニーズに応える「ものづくり集団」

長野県東御市

コトヒラ工業

全国トップを誇るユニットバスパネルの一貫生産から 南極昭和基地でも採用されたバイオトイレの製造まで

 マンションやアパートをはじめ、今や戸建て住宅でも一般化しているユニットバス。年々多様化するサイズや素材に応じて、壁と天井のパネルを1枚1枚オーダーで生産しているのがコトヒラ工業。ここで製造しているのは松下電工をメインに全国シェア20%を誇るユニットバスパネルだ。
 製造ラインの設計から生産、梱包、発送に至るまで一貫生産で手掛ける信頼の体制が高い評価を得ている。

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1つ1つの注文が積み重なれば大量生産

 ユニットバスの定義は、一般的に床と壁と天井、それに浴槽などがセットで構成された浴室のこと。コトヒラ工業で製造しているのは、この中の壁と天井部分のパネル。1室分は壁7枚、天井2枚の全9枚から構成されている。

 ユニットバスの登場は東京オリンピック開催に向け、ホテルや集合住宅の建設ラッシュに入った1960年代。時間と手間のかかる在来工法より簡単に浴室ができることで普及し始めた。コトヒラがユニットバスの製造を始めたのは1971年、松下電工の製品からだった。ユニットバスのメーカーとしては、先行する大手数社を追う形でスタートしたメーカーだ。
 当初から、集合住宅など規格統一されたパネルの大量受注ではなく、戸建て住宅など1室1室異なるサイズを製造するという、いわばオーダーメイド感覚の製造だった。しかも納期はほとんどが短期決戦。注文を受けた日には、すでに納期が経過していたなどという時代もあった。それでも「1つ1つの注文が積み重なれば大量注文」との松下電工の考えに、コトヒラも応え続けた。

自社システムの開発で受注から発送まで6時間

 右上がりに増える受注に即応できるシステム開発が課題となってきたころ、近隣の企業が会社を整理するという話が入る。まさに渡りに船だった。1986年、コトヒラはその企業の開発セクションにいた人材を全員入社させ、開発部門を立ち上げた。
 その結果、石膏ボードを水圧でカットする技術から、ミリ単位でカットする技術、鉄鋼パネルを折り曲げる技術などのOA化(Office Automation)、FA化(Factory Automation)の革新を実現。現在、自社開発の生産システムで動いている製造ラインは8つ。130種類ものパネルを組み合わせ、サイズのオーダーにも即応し、受注から製造、自社開発した梱包機械を経て、発送まで最短6時間で完成する。24時間稼働で1日約8000枚の壁パネルが製造され、日本中に搬出されるようになった。

製造予定に合わせてユニットバスのパーツが無数にセットされる。これからそれぞれの仕様に合わせ加工されていく

個別の使用に合わせた加工がどんどん進む。カスタマイズ性をFA化で実現した点がコトヒラの大きな強みだ

パネルの角にアールをつける技術は特許も取得した。これらの技術がコトヒラ製品の品質向上に直結する

ものづくりを知るから、ゼロから開発できる

 自動ラインの開発途上では「社内でソフトウェア開発にかける時間は無駄なのではないか」と、システム開発を社外の専門会社に発注したことがあった。しかし、社内で開発すれば3、4日で完成するソフトウェアが「半年経ってもハードウェアを動かせなかった」という結果だった。
 ソフトウェアだけ、ハードウェアだけの知識ではなく、スタッフ全員が現場のものづくりを知っているからこそ、ソフトウェア開発に生かされ製造へとつながるという全社納得の結論に達した。
 数年前には、壁パネルの角に丸みをもたせて折り曲げる技術を開発し特許を取得。水漏れと腐食を防ぐために提案した技術だ。高品質でニーズに応じるだけでなく、独自の技術開発にも力を注いでいる。

南極でも活躍する画期的なオリジナル製品

 コトヒラではメーカーニーズに応える高品質な製品だけでなく、自社ブランド商品の開発も進めている。昭和38年から取り組んでいるスキーロッカーやスタンドの製造をはじめ、スリッパの殺菌ロッカー、在庫を持たないJIT(Just in Time)で製造する半導体検査機なども好調。
 またバイオの力で排泄物を水と炭酸ガスに分解する環境に優しい「バイオトイレ」も自社で開発。バイオトイレは南極の昭和基地で使われているほか、中部国際空港(セントレア)建設時にも大活躍した。さまざまな方面において徹底的なものづくりスピリットを発揮するコトヒラ工業がこれからどこへ向かうのか、今後いっそう目が離せない。

工場内で愛おしげにラインを解説してくださる手塚会長。言葉の端々から絶えず前へ進もうとする意欲が感じられた

微生物による分解システムを利用したバイオトイレ。水を使用しない省資源トイレとして、自然施設などでの活用も注目されている


【取材日:2008年7月14日】

企業データ

コトヒラ工業株式会社
長野県東御市滋野1320 TEL.0268-63-0001(代)
http://www.kotohira.biz/
 全国トップレベルを誇るユニットバスパネルの一貫生産から、南極昭和基地でも採用されたバイオトイレの製造まで。住宅関連や情報・システム、環境分野といった幅広いジャンルにおいて、確かな技術力と時代のニーズに応える「ものづくり企業」として注目されている。