[サイプラススペシャル]15 酪農から世界が見えた 輝け!オリオンの三ツ星

長野県須坂市

オリオン機械

ニッチでシェアNo.1をめざす!
北信州の売上400億オーバー企業

 長野県で売上げ400億円を超える企業はそう多くない。須坂市に本社を置くオリオン機械は、35のグループ会社全体で連結売上432億円(2008年3月期)、社員数1600名超の北信を代表する優良企業のひとつだ。
 須坂長野東インターチェンジから車で約5分。7.4ヘクタール、東京ドーム1.5個分の敷地に2階建ての本社ビルがある。外見は控えめだが、中身はすごい。そんなオリオン機械のものづくりの実像に迫る。

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コアとなる技術は酪農機器から

酪農が原点

 オリオンのものづくりの原点は酪農機器にある。
 昭和32年、国産初の「ミルカー」の生産販売を始めた。「ミルカー」は、人に代わって牛の乳を搾る機械だ。当時、酪農の大規模化にともなって、乳搾りの人手が急激に不足するようになっていた。しかも、大変な重労働。「外国にあるという搾乳機が日本でも作れないだろうか」そうした酪農家の要望に応え、オリオンは開発に取り組んだ。

 「人の手の感触に近いものでなければ、乳がよく出ないんです。牛のニーズってすごいですよ、一番デリケートな部分ですから。生き物を相手にする機械には、医療機器のような繊細さが要求されるんです」太田哲郎社長は笑う。

 手のように繊細に、やさしく搾るためには「真空技術」が、複雑な動きを可能にする高度な「制御技術」が必要になった。さらに、牛乳の鮮度を保つという大きな課題もクリアしなければならない。
 「牛乳は雑菌が増えやすいので、ぜったい輸入できない食品なんです。それほど鮮度の維持が難しい。急速に冷却しなくてはいけません。そのための低温技術に磨きをかけました」

酪農から発展

 その酪農機器も、現在ではオリオンの売上げの20%に過ぎない。
主力は自動車業界などで活躍する「産業機器」で、売上げの半分以上を占める。
「産業機器」は工場などで使われる機械だ。オリオンの手掛ける製品のほとんどは、一般の人たちの眼には触れない専門的な分野で「ものづくり」を支えている。

日本のものづくりを支える

 オリオンは、ニッチ(すきま)を得意分野としている。
 たとえば工場の特定の区域の温度を厳密に管理できる装置「精密温調機」や、レーザー加工機で使われる冷却装置「チラー」など、限定された環境や分野に特化した製品が多い。また精密加工工場で使用される、空気を吹き出すエアブラシ。この空気中の水分を取り除く装置「エアドライヤー」もオリオン製だ。「ドライポンプ」は印刷業界で印刷物を一枚一枚ばらす際にも活躍している。
 こうした産業機器は、工場での品質管理や生産性の向上のためにはなくてなはならない装置だが、大量生産でないため大手は参入しにくい。そこに酪農で磨いたオリオンの技術が生きる。

牛の乳を搾る搾乳機。現在のものは、牛舎内の移動も自動。

「技術よりも大事なのはヒト」という、太田哲郎社長

ドライポンプはオリオンの自社工場でも活躍する

目指すは「世界No.1製品」

世界No.1の酪農機器

 ニッチを攻めるオリオン。経営方針は「世界No.1製品の開発に挑戦」だ。
 「まず世界をめざさなければ日本でも一番になれない。つねに世界に目を向けて、そこで売れるような商品をつくることが大切」太田社長は力を込める。「世界No.1が目標、そうハッキリ言い切ると、戦略の発想が変わってくるんです。」

 「搾乳ユニット自動搬送装置(キャリロボ)」も世界No.1、トップシェアの商品だ。牛舎で搾乳機械を自動的に動かす装置で、この開発によって酪農家の労力を4割も減らせた。
 「世界No.1製品」は、「ナンバーワンの品質でナンバーワンのシェア」を獲得するという、オリオンのものづくりに対するこだわりなのだ。

次々に「世界No.1」

 ナンバーワンは、酪農だけでない。主力の産業機器でも、ポンプの技術を応用した「サーボ式真空調整器」、厳しい温度管理技術を徹底して生まれた「ライン型温度特性検査装置」や「省エネ露点センサー」などが世界トップシェアを誇る。ポンプも温度管理も、言うまでもなく酪農で培った技術だ。

 たとえば、「ライン型温度特性検査装置」。
 クルマに使われる半導体などの電子部品は、寒冷地から熱帯までどんなに過酷な環境でも故障は許されない。そこで、様々な温度環境を人工的につくり、電子部品の温度特性をチェックすることが必要になる。「ライン型温度特性検査装置」は、それを効率的に行う装置だ。
 日本の高品質のクルマづくりには、オリオンの検査装置が大きな役割を担っている。

搾乳ユニット自動搬送装置(上)と、牛乳の低温貯蔵タンク(下)

ライン型温度特性検査装置(上)と「世界No.1」の省エネ露点センサー(下)

製品は少量多品種。ひとつひとつ組み立てられていく。


出会いを大切に、世界へ羽ばたく

単なる「営業マン」じゃない

 オリオンは、優れたものづくりで成長してきた開発型の企業だ。成長を支える最も大切な「顧客対応」と「開発」の要素も、酪農を原点としている。

 「基本的にはお客様の目線に立つことがいちばん重要。お客様の望むことがわかれば、ものづくりは、その時点で半分以上は成功したようなものです」太田社長によると、顧客からの要求は年々高く、難しくなってきているという。
 オリオンの営業マンが大事にするのは「まずはお客さんの要望を聞く」こと。「特に酪農機器は、結局のところサービスで差がつくんです。うちの営業マンは、全員、メンテナンスができます。取扱いが難しい酪農機器ですが、どの営業マンでもその場ですぐに修理ができるんですよ」

 トップシェアの獲得には、市場のニーズを見つけ出す能力や顧客の心を読み取る力が大切だ。それを設計者・技術者にフィードバックし、新しい市場をもたらす製品を生み出す。マルチな能力を持つ「営業マン」の活躍が、オリオンを支え、飛躍させている。

国境を越えた「良きパートナー」

 オリオンは、海外戦略でも「つながり」を重視する。
 「海外に工場をつくるのは、『市場をつくるため』なんです。単にモノをつくるのではなく、現地で販売もしていきます。日本人だけでもうけようなんて考えはダメ。必ず、現地の人にも利益があり、喜んでもらわなければ永続的な発展はありません」
 いまインドでの新しい展開を模索している太田社長。一番大事にしているのは、お互いを認め合えるような「良きパートナー」探しだという。
 「今ちょうど、いい出会いへの感触ができてきたところです」太田社長は顔をほころばす。
 冬の夜空に輝く星座のように、オリオンはこれからも「世界No.1」の光を放ち続けるだろう。

現場には若い社員が多い。真剣なまなざし。

デザイン的にも優れているヒーター(上)とドライポンプ(下)

工場見学の学生へのお土産、レーザー加工による鉄のクワガタ。地域を大切にしたいという太田社長の考え方は、こんなところにも現れている。


【取材日:2008年10月15日】

企業データ

オリオン機械株式会社
長野県須坂市幸高246 TEL.026-245-1230
http://www.orionkikai.co.jp/