[サイプラススペシャル]65 技術力を「MIXNUS」ブランドへ 今求められる「行動力」

長野県岡谷市

みくに工業

 「還暦を迎えたみくに工業の次の次のステージをどう作り上げていくのか、それが大きなテーマでした。」林誉英(はやしよしひで)社長は、こう語り始めた。みくに工業は、精密部品加工と、部品の組立や量産装置の製造を柱とするものづくり企業。「世界の時計SEIKO」の文字が見える本社屋上の看板にも、みくに工業の歴史の一端がうかがえる。
 100年に一度という厳しい時代の波をかぶりながらも、「転んでもただではおきない」という43歳、3代目林社長が率いるみくに工業の、新しいページが始まった。

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「うちの会社、本当にやっていけるのか」

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 岡谷市にあるみくに工業は昭和24年、専用機の冶工具を製造する「みくに機械製作所」として創業、その後、諏訪精工舎の協力工場として腕時計部品の製造をはじめる。専用機の設計・製造と精密加工を2本の柱として、発展を続けてきた。しかし、2007年の米国サブプライムローン、2008年リーマンショックに代表される世界金融危機は、みくに工業も直撃、2009年5月期の売り上げは、前期の3割減、月によっては最盛期の半分以下にまで落ち込んだ。林社長は、「このときは、社員みんなが、本当にうちの会社だいじょうぶか、と感じたと思いますよ」と語る。「なぜ自分たちのジェネレーションでこんなことがおきてしまったのかと思いました。」の言葉は、今でこそ口に出せる本音だ。


 専用機の設計・製造と精密加工技術という2本の柱は、すべて「こういうものが出来ないか」という注文を受け、研究し、開発し、磨かれてきた。しかし、仕事が減り、売り上げが落ち込み、改めて「みくに工業の技術とは何か」と問われたとき、この2つの技術力は、それぞれの分野で完結しており、相乗効果も発揮されていないことを、林社長は実感したという。出来ることは何でも受け、結果としては、価格競争の激しい分野にも手を広げ、「総花的」な生産が続いていた。そこにこの世界不況がおそった。

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 「今は、何かを作る技術がありますということよりも、みくに工業はこれが出来ますと打って出ることが大事。」だから「業務も体制も、見直しが必要だった。」と林社長。「選択と集中」、「事業仕分け」を敢行したのだ。


 その象徴が「MIXNUS(ミクナス)」、「MIX(融合)、NURSE(支援)、AND US(共に)」から、生まれたみくに工業のブランドだ。

「MIXNUS(ミクナス)」ブランドに集約する技術力

 ここ数年、みくに工業は、医療機器分野での新製品の開発を進めている。松本歯科大と共同開発した歯科用洗浄針の製造、また、信州大学と研究を進めている「注射針を安全に取り外す装置」など、みくにのコア技術を、新しい領域でも、ビジネス化していこうとしている。mikuni04.jpg特に歯周病治療に使われる、0.2ミリの針先の穴から薬剤を噴射する歯科用洗浄針(クレンジングニードル)は、「MIXNUS(ミクナス)」ブランドの製品第一号である。
 研究開発への継続的な投資は、将来のみくにを支える基盤だ。

 しかし、この医療分野も、これまでの精密加工技術力の蓄積のひとつでしかない。ベースはやはり精密部品加工。主力は、「スプリングテストプローブピン」の量産である。このピンは、半導体の通電テスト装置に使われる接触ピンで、ICチップの性能を検査する際、欠かせない部品。パソコンや携帯電話など、情報端末を支えているといっても過言ではない。
 細いもので外径0.1ミリ、短いもので全長1ミリ、一本の細い金属の棒にしか見えないが、バネを含む4つの部品で構成されている微小微細の高機能部品。みくに工業は、このテストプローブピンを、開発・設計から、切削、洗浄、めっき、組立まで、一貫加工で生産している。
 プローブピンに施す次世代メッキとして、硬質純金めっきの開発も手がける。この分野では、各機関や研究所とのLSI高密度実装に向けた技術の共同研究も進む。蓄積された技術や、技術産学官の連携を生かした研究は、次のミクナスブランドにつながる新しい「芽」になっていくに違いない。


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 ニーズにあわせた各種の専用機や装置製造分野では「マイクロパーツソーター」「マイクロパーツ洗浄装置」がミクナスブランドを代表している。
 「マイクロパーツソーター」は、微細な部品の位置や方向をパレットの上へ、搬送し、整列させる装置。さらに、形や寸法の違いを認識し、混在する部品を分ける機能も併せ持つ。社内で使用するために作られたものだが、微細部品を扱う企業から注目され、展示会にも出品するようになり、問い合わせも多い製品だ。
mikuni06.jpg  「マイクロパーツ洗浄装置」は、微細な切削部品を洗浄し、液切から乾燥までを1台で行う。微細部品の洗浄機能の高さに加えて、幅120センチ高さ160センチと小型で省スペース、使用電力も少ない省エネタイプで、定期保守も容易で使いやすい装置だ。
 どちらも精密部品を手がける社内のニーズが、装置の設計開発に結びついた製品。社内で発案、工夫され、社内で実用化された装置を、商品として、お客様にも提供している理想的な流れだ。部品加工部門と装置の設計開発部門の融合から生まれた「MIXNUS(ミクナス)」の新しい動きといえる。

技術は使われてなんぼ、使われない技術は意味がない

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 29歳で、みくに工業に入社した林社長の夢は、「みくにを呼ぶと課題が解決する」といわれる、トータルソリューションを提供する会社にすることだという。
 「いくら技術力があっても、待っていても仕事は来ない。技術は使われてなんぼ、ましてどのような領域でつかわれるかによって常に磨かれていなければ、結果として使われないような技術では意味がないのです。」林社長の言葉に力がこもる。
 これまでのように、言われたことをやるだけではなく、このみくにの部品が何になるのか、どう使われるのか、発注した会社と同じフィールドで考え、お客様のニーズにあったみくに独自の提案を行う。目指す会社はここからだ。お客様に、ワンストップサービスを提供する企業にしていくためには、研究開発部門と同様に、営業部門の役割は今後一層大きくなる。

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 「みくにの技術が役に立つ場面が、必ずあるはずだ。」厳しい環境下の第2の創業である。

【取材日:2010年3月3日】

企業データ

株式会社みくに工業
長野県岡谷市田中町2-8-13 TEL:0266-23-5611
http://www.mikuni-kogyo.co.jp/