[サイプラススペシャル]66 特殊性、機能性を生かした商品開発を テントを作り続けて100年

長野県長野市

北信帆布

キャンプやイベントに欠かせないテント、そのテントを作り続けて100年になる企業がある。長野市の北信帆布。3代目の福島一明社長(65歳)は、さらに、あと100年生き残るために、「売れる商品を作りたい、新しい製品を作っていきたい。」と熱く語る。テント製造の最前線を取材した。

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時代の先端を行く

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 「菜種油を塗って防水加工をした内山和紙を材料にして、『道中合羽』という雨具を製造したのが、北信帆布のルーツです。」明治41年のことである。中野市から豊野町までの間を走っていた鉄道馬車の屋根に使う幌を、「ゴム引き加工」という生ゴムを塗った天竺木綿で製造したり、人力車の幌を作った時期もあった。大正12年の関東大震災の直後には、東京から長野県内に疎開してきた工場用の倉庫や社屋用に、杉丸太を芯棒にして、麻縄で引っ張るという引っ張り形のテントを提供した。太平洋戦争中には、明かりが外に漏れないように、電球を覆う黒いシートの製造販売を手がけた。テントという業種は変わらないものの、扱う商品、その業態は時代とともに変化してきている。

 戦後、トラック輸送が盛んになると、荷台の幌を製造。しかしこの製品も、いまやアルミのパネルに代わってきた。その時代に求められる商品、売れる製品を作って行く、いわば時代を追いかけ、時代を先取りしたものづくりをしていかなければ、100年の歴史を持つ老舗といえども、この先はない。福島社長の思いもここにある。

テントは移設できる"建物"

 「テントの特長は何だと思いますか?」福島社長の問いに、工場の敷地内に見かけるグリーンのテント型の倉庫を思い浮かべた。
「テントは移設できます。仮設解体を前提でつくられたものですから。」

 通常の建物は、解体すればごみでしかない。解体して再利用するというのはテントだけが持っている機能である。ある場所に期間限定で建物が必要になったとき、通常の方法では、建設費用に一坪何十万円と必要になるが、テントであればその何分の一のコストで設置できる。しかも一ヶ所で不要になっても、別の場所に移して再利用できる。仮設とはいっても、耐久性があり、15年、20年は十分使用できる。設置場所は三角でも、四角でも融通がきく。テントそのものは、「事業に必要な設備」としてリースの対象にもなっており、ビジネス分野でも柔軟な使い方ができる施設だ。

機能を提供する ・・・ 必要な場所に、必要な形と空間を

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 一口にテント製造といっても、北信帆布の手がける商品は、キャンプ場やイベント会場で見かけるテントだけではない。工場や流通のストックヤードとして使われている、いわゆるハウステントとよばれるもの、オーニングと称されるテント地で作られた日よけや雨よけ、また、間仕切り用の電動シャッターとして使われるシートの施工・設置などもある。
本社内にはテント用シート素材はあっても、製品はない。ニーズのあるところが、北信帆布のものづくりの現場、テント製造とは必要な場所に、必要な形と空間を創り出す仕事とも言える。


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 今、福島社長が力を入れているのは「機能化」である。テントの基本材料は「帆布」と呼ばれているが、もともと薄いという弱点がある。しかし、その欠点も、機能でカバーできれば、新たな魅力が生まれる。

 テントシートに、樹脂コーティングを施す、防水・防災・防燃・断熱などの加工を行い、その機能に特化した空間を創り出す、これが目指す機能化だ。 例えば、農産物や食品の保冷に使うテント冷蔵庫は、断熱性に優れた保冷施設として使われているが、更に緊急仮設タイプ「テント組立て式冷蔵庫」も開発、特許を申請している製品だ。人が多く集まる場所に設置するコンパクトなクリーンルームは、自由度の高い設計とコストが魅力、実績は全国に広がっている。

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 最近の事例としては、山形県内に設置した果実の熟成促進シートの施工があげられる。 既存の倉庫内に、名産の柿の渋抜きを行う専用の空間を創り出したのだ。気密性が高く、防塵・防風効果のあるシート(内側には0.8ミリのポリエステル帆布、外側は厚さ3センチのポリウレタン断熱シートで2重にし、3層構造になっている)を開発し、密閉されたスペースを作り、そこに、炭酸ガスを送り、柿の渋を抜くという仕組みだ。柿の渋抜きには、アルコールを使えば1ヶ月ほどかかるというが、炭酸ガスを使ったこのテント内だと4~5日で出荷できる甘い柿になるという。

倉庫内には6メートル四方で、高さ5メートルの空間がいくつも作られ、必要な量の柿の渋を抜く。しかし、渋抜きが終われば、柱を使わず、シートを巻き上げる工法のため、元の広いスペースが確保され、別の目的に利用できる。必要な時期に必要な空間を作ることが可能だ。この方法は、バナナの熟成や、生花にも応用できるという。


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また、「医療用テント」の開発も始めている。災害現場など屋外での治療用に、シートを分割して持ち運び、必要な場所で衛生状態が保たれる空間をテントで創り出したいと意欲的だ。

仕事は「○○のようなものが欲しい」から始まる

 北信帆布が製造するテントのほとんどは、オーダーメイドだ。仕事は、顧客からの「こんなものが欲しいな」という話から始まることが多い。テントの設計は、CADシステムを使って「○○のようなもの」というニーズを製品にしていく設計部門、さまざまな種類のシート素材を、縫製加工するノウハウ、この2つが北信帆布を支える。

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 テントシートを使った製品も手がけている。古くは、建設現場で冬は砂利が凍ってしまう、何とかならないかと相談をうけ、電熱線が入ったシートを工夫した。今は、テントシートを利用したコンテナの製造がある。工事現場で見かけるシートコンテナ、丈夫で通気性、防水性があり、通常の運搬や排出作業が容易であるばかりでなく、フォークリフトでの運搬も可能だ。もちろんサイズはオーダーメイド、これを応用した商品保管用のシートコンテナもある。


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 「間口の寸法を測って、ご近所で商売をしていた時代は、昔のこと。時代を先取りした商品を開発する時代です。いろいろな業界の持っている技能や機能、考え方を新商品に結びつけようと、異業種連携の交流会にも積極的に参加しています。」
福島社長のアンテナは高い。


【取材日:2010年3月5日】

企業データ

株式会社北信帆布
長野県長野市風間下河原2034-19 TEL:026-221-3500
http://www.hanpu.jp/