[サイプラススペシャル]84 「再生」というものづくり as good as new“新品同等”

長野県大町市

信越電装

倉庫に積まれた大きな鉄製のかご、中にぎっしり詰まっているのは使い古された油まみれの自動車用スターターモーターなどの部品、その数30万個。廃棄物ではない。これがリマニュファクチャリング(=使い古しの製品から新品同等の製品を製造すること)の原材料、コアと呼ばれる再生を待つ部品なのだ。
「自家用車の寿命は10年」そんな常識をくつがえす“再生のものづくり”に出会った。長野県大町市の信越電装である。

「MOTTAINAI」の実践は、40年以上も前から

リマニュファクチャリング = 再生とは

shine-reman03.jpg

 環境への関心の高まりとともによく耳にするようになった「3R(リユース=もう一度使う、リサイクル=再利用する、リデュース=物の量を減らす)」、しかし、もう一つR=Remanufacturing(リマニュファクチャリング)は、まだまだ日本ではなじみが薄い言葉だ。
 リマニュファクチャリングとは、寿命を終えた製品から、利用できる部品を取り出し、新品同等の性能を持つ製品に作り上げ、提供すること。自動車関連でいうと、日本で自動車リサイクル法が成立したのは2005年1月、しかし、世界的に見ると、自動車部品のリマニュファクチャリングは、第2次世界大戦時に米国で始まったおり、すでに60年以上の歴史がある。

生産量は国内トップ、そしてサービスも

shine-reman04.jpg

 信越電装が、1960年代から手がけるリマニュファクチャリングの製品は、自動車用スターターモーターとオルタネーター(=充電発電装置)。「自動車の電装部品の修理からスタートした会社です。たくさんの選択肢の中からではなく、企業として生き残るためにはどうするか、チャレンジを続けてきて後ろをふりかえったら、ここまで来ていました。」社員130名を率いる2代目社長の小松信吾氏(56歳)は語る。
 自動車用スターターモーターとオルタネーターのリマニュファクチャリングは、もともと海外に輸出された日本車の部品を海外から輸入し、再生して輸出するところから始まったが、今では国内向けの販売も増えている。「毎日、日本中の自動車メーカーや修理工場から、1000本の問い合わせの電話が入ります。」という。しかも、その問い合わせの96~97%は在庫のなかにあるそうだ。国内外の各メーカーの、様々な年式の部品、30万個の原材料を確保している力は大きい。在庫が確認できれば即発送、北海道・福岡・横浜・仙台に配送拠点を持ち、全国どこへでも翌日には製品を届ける。究極の対応は、コアがあれば、午後3時までにはいった注文は翌日届けるという「当日生産グループ」の仕事、「ボンネットをあけて待っている顧客を待たせるわけには行かない。」心意気がサービスにも現れる。

新品を作る技術は、ない

製品はas good as new‐新品同等-

shine-reman05.jpg

 信越電装が作る製品は、「as good as new 」、新品同等である。これは1941年設立された世界中で1000を超えるリマニュファクチャリング関連の会社で構成されるAPRA(自動車部品再生業協会)が掲げる性能保証でもある。(この協会への加盟も信越電装は日本初。)

 リマニュファクチャリングは、コアの買い付けから始まる。コアのコンディションが、その後の作業工程やコストを左右する。特に海外でコアを扱う専門業者や解体業者とは、コアの状態を見極め、買い付け価格の交渉も必要、経験を重ねた営業担当が年に何回かは現地に飛んでいる。
 次は、仕分け作業。1週間に4トン車で2回は運び込まれるコアを、品番シールを確認しながら、一つ一つ仕分けてデータの入力を行う。国内販売だけでも、9000種類もの製品を扱う信越電装では、扱う製品が多すぎて製品カタログは出せないそうだ。ここで入力されたコアの情報がもととなって、日々の問い合わせに即応できる信越電装の製品管理システムが機能する。

作業を支える設備も自社で

shine-reman06.jpg

 工程は、大きく5つ、「分解」「洗浄」「研磨」「組立」「製品」、新品の生産ラインとは大きく異なる。
 原材料であるコアの分解は、大きな作業台で行われる。ケースをはずし、ネジ1本まで文字通りばらばらにする手作業。そこで取り出された部品の汚れを落すのは、洗浄部門。洗浄液の温度も洗剤の配合にもマニュアルはない。形状によって、固定したり、回転させたり、とにかくキレイにしなければならない。ものによってはショットブラストにより投射材を吹き付け、汚れを落とし磨き上げる。さらに乾燥・研磨と続き、製品に組みたてる。
 作業フローや方法はすべて、試行錯誤の結果だ。それぞれの工程で使用する機械や工具・作業台も、社内で作った。まさにチャレンジの連続が切り開いてきたリマニュファクチャリングの技術だ。

shine-reman07.jpg shine-reman08.jpg

信頼のブランド 名前は「Shine(シャイン)」

shine-reman09.jpg

 摩耗した接触部は削り直し、消耗パーツは新品に取り替えて組み上げられ、製品が完成。検査は、抜き取りではなく、全品検査だ。一つ一つの製品を、パソコンを使って、その製品が本来持つべき機能を数値化したデータと照合する。出荷されるのはこの検査に合格した製品のみ。新品同等の性能を保証した検査表と、信越電装の製品番号、ブランド名がつけられる。ブランド名は「Shineシャイン」、文字通り輝くシールだ。各部門での検査の後、更に品質保証課で、抜き取りのチェックも行われ、出荷には万全を期す。
 「お客様は壊れたからしょうがなく買う製品、しょうがなく買った製品がまたすぐ壊れたらとんでもないことになります。ウチには、新品を作る技術はありませんが、このあたりがこの商売のキーポイントですね。」小松社長は語る。「シンエツスペシャルで欲しい。」信頼を裏付ける声が届く。

世界品質

shine-reman10.jpg

 信越電装は、海外販売の実績も長い。中でもベンツの再生製品の8~9割は、同社製のもの。また、自動車部品メーカーボッシュとの直接取引は30年にも及び、「ボッシュ再生品」のタグをつけて出荷している。世界品質のリマニュファクチャリングである。
 中近東はじめ砂漠地域への出荷には、一つ一つをビニール袋にいれ砂が入らないようにするなど、梱包も気を使う。ボンネットを開けて待つお客様は、日本だけではない。

 リマニュファクチャリングが標準語になる

モットーはフェア

shine-reman11.jpg

 小松社長のモットーは「フェア」、廃棄品を少なくし、いかに再生部品を増やすかそれが利益につながると考え続けてきた。社長就任以来「会社の業績がよくなれば、社員みんなの生活も良くなる。」という思いで進んできたという。
 「日本人は壊れたら新しいものを買ったほうがいいという傾向があるが、国際的にみると、保証もついているし、再生品で修理しようという考え方もある。日本でも若い人の間では必ずしも消費は美徳ではなくなってきている。」と日本のリマニュファクチャリングの第一人者でもある小松社長は語る。

 製品の寿命イコール部品の寿命ではない。様々な分野でリマニュファクチャリングのマーケットは、拡大していくに違いない。「再生」というものづくりが続く。

【取材日:2010年7月13日】

企業データ

信越電装株式会社
長野県大町市大字平2656-210 TEL:0261-22-2255
http://www.shine-reman.com/