[サイプラススペシャル]89 変わらぬ伝統は「変わり続ける」こと 麻袋から紙袋へ、包装資材手がけて50年

長野県佐久市

新興マタイ

「新興マタイ株式会社」の社名に使われる「マタイ」は「麻袋(あさぶくろ、音読みではまたい)」からきている。麻袋といえば穀物や資材の運搬にはなくてはならない時代もあったが、今日使われる場面はほとんどない。展開する事業とは何か、長野県佐久市を訪ねた。

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2つの顔

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「JR小海線中込駅から徒歩1分」新興マタイ株式会社の本社・工場所在地である。だが、線路沿いの建物の屋根には国内メーカー8社の太陽光パネルが載り、『太陽電池研究施設』『発電データ表示中』の看板も見える。さらにその奥に目をやると、コンクリートを打ちっぱなしの広いスペースに茶色い色の円筒状の柱が並ぶ。どこかで見たような茶色い色相、何かの原料か?
変わり続ける新興マタイ、変わらぬ新興マタイの2つ顔が並ぶ入り口だった。

袋自体に価値があるわけではない

呼吸する紙袋

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新興マタイは、1946年、一度利用された麻袋を回収し、その布から麻袋を再生し市場に出すという今でいう"循環"型のものづくりで創業、その後原料はクラフト紙に変化したものの、紙袋をはじめとする包装資材事業を社業の中核として発展してきた会社である。「新興」とは、新しさへの挑戦の意味を込める。2代目の金子武弘社長は現在36歳、しかし就任して既に10年、新たな10年に向かって長期経営計画を表明する時期がきたと先を見据える。

紙袋のポリシー

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「袋の価値とは何なのか、真剣に考えました。」金子社長は語る。
「袋は、原材料に20円、加工代が30円、だからこの袋の価値は50円です、と言ってみたところで、お客様には何の価値もありません。1000円のセメントを袋に入れることで、持ちやすく湿気にくいなどの付加価値がついて1050円で売れるのであればその差が袋の価値と考えたのです。」包装して初めて価値がでる商品、その商品の価値をより高める包装紙材、しかも低コストで提供するというポリシー。穏やかな表情に確信が宿る。

茶色い円筒形の柱から

1ロール6000メートルのクラフト紙

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入口に並んでいた茶色い円筒は、まさにクラフト紙、紙袋の原料であった。幅は、50cmから150cmまで5センチ刻み、そのロールが縦に4段5段と積み上げられて柱状になっていたのだ。
1ロールは長さ6000メートル。「距離」として把握する長さである。また、様々ある紙の厚さは、1㎡が75g、78gと重さで表示される。新興マタイの原料の在庫量は、常時1000t。入口の茶色い色の円筒状の柱は、まさに林のようなボリュームだ。

4台の印刷機と5台の製筒機

重包装といわれる業務用の紙袋の多くは、2重3重にクラフト紙を重ねた構造で、外側には商品名や社名が印刷されている。製造工程は、この外側の印刷から始まる。1~3色の油性や水性のインクを使い、文言やマークを印刷する。印刷時の汚れは禁物だが、同じ商品でも販売エリアによって表示を変えるとか、PL法施行後は商品の製造年月日や注意事項の表記を追加するなど、積まれた時の見栄えも考えた大事な工程だ。厚い布地に付けられたゴム版は、印刷工場内で彫られている。インク棚の脇に積まれた様々な文字と色がついたゴム版は新興マタイの歴史を物語る。印刷面を乾燥させ巻き取ったロール紙は専用のフォークリフトで、隣の建物内に運ばれる。ここで待っているのが製筒機、平面から立体を作り出す機械だ。

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工場内には製筒機を中心に5つのラインが並ぶ。2005年に増強された設備で、1工場としての生産能力は国内最大級、新興マタイの紙袋製造はここに集約されている。
ロール状のクラフト紙はこのラインで、畳む・切る・貼る・折るという工程を経て、紙袋になる。製品の種類は、紙だけではなく、防湿のため真ん中に合成樹脂のシートを折り込んで3重構造にしたものや両底糊張り袋という特別な形のものなど様々あって、広い用途で使われていることが見て取れる。サイズも2kg用5kg用から40kg用など。中身の商品が運搬しやすい量が袋のサイズなのだ。さらにミシンを使った「紙を縫う」作業や紙袋に紐をつける作業も工場内で行われている。

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注文は1種類500枚から受けます

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新興マタイの1日当たりの生産能力は50種類15万枚、1ラインでは1分間に100~150枚の生産が可能だ。しかし、注文は「1種類500枚から受けています。」
これが新興マタイの得意とする短納期・小ロット生産である。十分な原料の在庫を持ち、印刷から販売まで一貫している国内生産体制の強さだ。

設備のオプションというと機能の追加をイメージするが、新興マタイでは購入機械から既存の機能をはずして人の手で行う作業に変更した工程がある。紙の厚さや袋のサイズ、次の工程への受け渡しなど機械を調整するよりも経験豊かな社員の手仕事の方が品質面でも効率面でも勝る場合があるというのだ。だから「ここは人が多い工程ですが・・・。」と金子社長は説明する。個人の力が発揮される工程でもあるのだ。

Newest"マタイ"

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新興マタイには生産部門と並んで商事部門もある。最初は「袋の中身の販売」や「袋の納入先の製品を販売」から始まったというが、1994年には環境エネルギー事業へ進出し、太陽電池の直販・卸売事業を始めた。1999年に京セラのフランチャイズ全国1号店になり、現在は社内に太陽電池研究施設を設置するほどで、この部門は売上高の成長も著しい。
「太陽光」は世界的にも関心が高い分野であり、国内・海外メーカーとの取引や、先駆者としての経験を生かしたコンサルティング業務など、新興マタイの果たす役割は引き続き大きい。
しかし、金子社長は、「社員の6割が携わる包装資材事業は、新興マタイの核です。製造業としてのDNAは大切にしたい。」と語る。10年後の姿は、新興マタイの英文表記である「Newest Corporation=最新の会社」を更に前進させたものに違いない。

【取材日:2010年8月3日】

企業データ

新興マタイ株式会社
長野県佐久市中込1-10-1 TEL:0267-62-1111
http://www.newest.ne.jp/