[サイプラススペシャル]131 清らかな「心」と健康な「体」で、すばらしい「製品」を 地域と作り上げたLED電球を新たな事業の柱に

長野県諏訪市

シントク

創業以来一貫して諏訪地域に根ざしたものづくりを続けているシントク。液晶装置や半導体装置の土台となる大型部品と、プラステック用金型部品が主力製品だ。近年新たな事業として、自社ブランドのハロゲン型LED電球を市場に送り出した。社員の心と体を磨くことで、より良い製品を生み出すという方針を貫いている。

自社で一貫製造する大型マシーンベース

「材料」から「加工」への転換とともに社名を変更

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 1975年に下諏訪町で創業。以前の社名は「信州特殊鋼」で、材料をお客様の要望する寸法にして納入していた。その後、より付加価値を生み出すために、材料の販売から加工へと徐々に転換し、社名も「シントク」に変えた。現社長の小坂紳之助氏(44歳)は、創業者である父親から31歳で会社を引き継いだ。社長の「紳之助」という名前は、就任時に自らつけたもの。「シントクを助けるというつもりでつけた名前なのですが、逆にシントクの社員みんなに助けられています」と笑う社長。穏やかな人柄が滲み出るリーダーだ。

他に類を見ない大型設備

 シントクの強みは、主力製品である液晶パネルや半導体の製造装置の土台となる大型マシーンベースの製造を一貫して行えること。溶接⇒焼鈍(しょうどん=焼きなまし熱処理)⇒ショット(表面処理)⇒マシニング(切削・穴あけ加工)⇒研磨という5つの工程を全て自社工場でおこなう。マシニングに使われるドリルなどの加工用刃物の数は360本。最大で3.5m×8mサイズのマシーンベース加工が可能だ。しかもマシーンベースは全てが発注先からのオーダーで同じものはほとんどない。「大企業はともかく、中小企業でこれだけの設備を持っている所はない。」小坂社長は胸を張る。

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地域との関わりを大事に

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 シントクが現在の業態に至った背景には、地元である諏訪圏のものづくり環境が大きく影響している。地域が求める超精密のプラステック金型を製作するほか、当時県外でしか作られていなかった大型マシーンベースを自社で作ることで地元の取引先の要望に応えた。一貫して自社で加工することによって、品質の向上と納期の短縮を実現。この体制は、諏訪地域のものづくりにも大きく貢献。日本の中心部にあるという立地条件を生かして、県外からの受注にも幅広く対応している。

新工場によって社員の働き方も変化

普通の工場と違う環境に

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 現在の主力製品である大型マシーンベースを製造しているのは、2005年に完成した茅野市の八ヶ岳工場。自然豊かな環境の中にあって、周りの風景に調和している。新工場建設にあたって、「単なる普通の工場にはしたくなかった」と語る小坂社長。以前ヨーロッパで視察した現地の工場を見て、「こんな工場を作りたい」という願望を具現化させたものだ。天井を高くして窓を大きくするとともに、リフレッシュコーナーなども充実させた。取引先や工場見学に訪れる地元の学校などへのPR効果も期待したが、それ以上に社員の仕事に取り組む姿勢が徐々に変わっていったという。

環境が変わることで社員のやる気も向上

 キーワードは「素足で歩ける職場作り」。以前の工場は金属片が散乱し油まみれだったが、新工場を作った際「このままではいけない」という強い思いから掲げられた目標だ。工場の壁には、樹木を描くなど周辺の環境に同化するような工夫も施されている。取材当日も広大な敷地の中で作業が進められていた。工場がきれいになることで、製品に対するクレームも減少していったという。社員のモチベーションにも好影響を与えたのだ。

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「すばらしい」と言われる製品は清らかな「心」と健康な「体」から生まれる

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 この言葉が、シントクのものづくりの原点。実際に社員全員が毎朝清掃とランニングを実施しているという徹底ぶりだ。社員の内面を鍛える一方で、工場などの職場環境を整えるという内外両面でのサポートを行なっているシントク。「当社の自慢は社員」と語る小坂社長の言葉は、社員との信頼関係の強さの表れだ。

LED電球を新たな事業の柱に

新たな事業の柱を

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 現在の主力製品のひとつであるプラステック金型については、中国や東南アジアの台頭によって今後採算が厳しくなると予想している。この部門に代わる新たな主力製品として、シントクが開発したのがLED電球。長野県出身の力士にちなんで「LAIDEN」と名付けられた自社ブランドは、現在はまだ目新しいハロゲン型のLED電球だ。特に35Φ(ファイ)サイズの電球は現在シントクでしか製造しておらず、他社との差別化を図っている。

諏訪地域の技術力を結集

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 LED技術のノウハウを持つ社員が入社することでスタートした電球の開発だが、シントクにとっては全く未経験の分野。この商品が完成するまでには、地元諏訪地域の十数社におよぶ企業が携わっている。それぞれの得意とする技術力、開発力が注ぎ込まれている。このLED電球は、ある意味諏訪地域のものづくり技術の結晶ともいえる。

当たり前を徹底しておこなう

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 品質を最優先と考えるシントクは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾」という5つのSを徹底することに日々努めている。当たり前のことを徹底することが何よりも大切だと語る小坂社長。「お客様に素晴らしいといわれる製品を届けたい。そうすれば必ずリピーターになってもらえる。」小型精密部品から大型機械部品まで長年培った技術をベースに、ハロゲン型LED電球を新たなる事業の柱にするべくシントクの挑戦は続く。

 

【取材日:2011年7月5日】

企業データ

シントク株式会社
長野県諏訪市大字中洲566-7 TEL:0266-58-4404
http://www.shintoku.co.jp/