[サイプラススペシャル]134 巨大工場で一貫生産!「サーボモーター」 新製品は「世界一」冷却ファン・モーター・電源装置

長野県上田市

山洋電気

生産も開発も「メイドイン・ナガノ」
私たちの新製品は、どれも世界一

山洋電気の主力は、冷却ファンや産業用モーター、無停電電源装置など。本社こそ東京だが、国内工場は長野県上田市に集中している。生産も研究開発も、すべて上田市内。歴とした「メイドイン・ナガノ」と言って良いだろう。

2010年の売上は703億円と、前年の425億円からV字回復を果たした。その原動力のひとつが、2009年に稼働した神川工場だ。山本茂生社長曰く「私たちの新製品は、どれも世界一」。巨大工場に「世界一」のものづくりのカギが隠されていた。

巨大工場に潜入!「サーボモーター」の秘密とは

ケタ違いに大きい!最新鋭施設

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 軽井沢と上田を結ぶ全長27.3kmの浅間山麓広域農道、通称「浅間サンライン」。名前の通り北には浅間山、また南に上田、東御、小諸の盆地を眼下に眺める。この道の上田市側の入り口付近にある白亜の建物が、山洋電気の神川工場だ。ローマ字で"SANYO DENKI"の文字が視界に飛び込んでくる。

 とにかくケタ違いに大きい。約6.7ヘクタールの広大な敷地に、延床面積48000平方mの工場棟。屋上には、150kWの太陽光発電パネルが並ぶ。
 案内された工場内も、驚くほど大きい。隅から隅まで直線でおよそ120m。ワンフロアをひとまわりするだけで、500mは歩く。グラウンドがすっぽり屋根に覆われている、というイメージだ。ここで、およそ1000人もの社員が働いている。
 この巨大施設で、一体なにがつくられているのだろうか?


工業用精密モーター「サーボモーター」

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 「私たちが作っているのは、これ。この工場で一貫生産しています。」
 上田事業所サーボシステム事業部生産第一部の小林美範部長が手にしたのは、組み上がったばかりの工業用精密モーター「サーボモーター」だ。小林部長の言葉通り、プレスから塗装や組み立てまで、神川工場で一貫生産される。
 長野県で作られたサーボモーターは、工作機械・ロボット・半導体製造装置などに組み込まれ、世界中で活躍する。

 ラテン語が語源の「サーボ」とは、英語のslave・servantの意で直訳すると「奴隷」。サーボモーターは、司令部であるコントローラーや制御装置(サーボアンプ)からの指令に従って動作する。ロボットや産業機械などの分野で欠かせない自動制御装置の技術だ。


世界一の性能

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 「性能は、世界一。」
 そう話すのは、広報部遠藤剛之部長代理。「モーターにとって大事なのは、ちゃんと回ること。指示通り動くための『応答速度』と、回転が安定する『整定時間』が短いのが、世界に認められる技術。」
 サーボモーターは、組み込まれた装置の中で指令通りに動かなくてはいけない。ここで大事なのが、検出機能。電力供給を受けただ単に回転するだけでなく、俊敏かつ高精度な動きを実現するため、モーター自身が動作状態を常に確認し、指令とずれないようにフィードバック(打ち返し)している。
 指令信号とフィードバック信号との差が小さくなるよう、いかに制御するかが重要だ。まさに精密モーター。だからこそ「ちゃんと回ること」という基本が大事になる。

 「日本で一貫生産するから、高い性能、品質、信頼性を維持できる」と、生産部門を担当する小林部長。円高基調や製造業の海外シフトが続く中、「こんな時代に、なぜあえて国内に大きな工場をつくったの?と聞かれます。」遠藤部長代理は笑いながら話を続ける。「上田でもともと働いている社員がいたから、ここに工場を建てた。海外で同じものはできない。」

新製品のどれも「世界一」

ビッグサイトで開催!テクノフロンティア2011

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 「私たちは、新製品をたくさん作っている。そのどれもが、開発時点で必ず世界一。」山本社長は、ゆっくりと説明をはじめた。
 場所は変わって、東京ビッグサイト。7月下旬に開催された、アジア最大規模の専門技術展『テクノフロンティア2011』の会場で、山洋電気のひときわ大きなブースは多くの技術者たちの注目を集めた。
 メカトロニクスや電源・バッテリーなどの先端要素技術が集まる展示会の核となるのは、29回を数えるモーター技術展。「1回目から参加している」という山本社長の説明通り、山洋電気はモーター分野において日本のトップランナーであり続ける。

「すぐに売らない」山洋電気

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 スポットライトを浴びて、大小様々な製品が並ぶ。一番小さいモーターは、指の先に乗る程のサイズで、ロボットの指の関節などに使われるという。
 モーターだけではい。冷却ファンや、無停電電源装置なども手がける山洋電気。とくに、産業用太陽光発電のインバーター(電流変換機)は国内トップクラスのシェアを誇る。ほとんどが「メイドイン・ナガノ」の製品だ。


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 「お客様(機械製造メーカーなど)から『こういう製品を売って欲しい』と言われても、山洋電気はすぐに売らない。」最新の自社製品の展示を前に、山本社長は意外な言葉を口にした。
 「私どもの製品は、どれもがお客様の装置に組み込まれる。何に使われて、何を目指しているのかということをお聞きして、それに最適なものを用意する。」製品の使われかたまでリサーチして、場合によっては期待以上の製品を納めることができる、だからこそ「すぐに売らない」のだ。

組み込まれる装置も「世界一」

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 「世界中に競争相手がいる。」
 なぜ世界一にこだわるのか?の問いに、山本社長の表情が険しくなった。「世界一でなければ、『安いもの』が喜ばれる。」北米・欧州・東アジアを中心にいくつもの営業拠点を構える山洋電気。上田市内の4工場のほか、フィリピンにも生産工場がある。
 もちろん価格は重要だ。だからこそ、神川工場のような大規模な生産ラインでコストダウン可能な効率化を図った。しかし「安いだけのものを売るつもりはない。」
 「お客様の目指しているものをいちはやく察知して、それをつくる。目指しているのは『今までになかったもの』。だから、世界一になる。組み込まれるお客様の装置も世界一になる。」

見えないところで「幸せ」を支えるものづくり

生産・開発は長野県

 1927年創業の山洋電気は、太平洋戦争中の1944年に上田市内に工場を開設して以来、長野県でものづくりを続ける。かつてはインテル純正CPUクーラーのほとんどが山洋電気の製品だった。
 サーボモーターを一貫生産する神川工場の他、冷却ファンなどを手がける富士山工場、制御装置をつくる築地工場、モーター生産の塩田工場と国内の生産4拠点は全て上田市内だ。さらに、300人以上のエンジニアを要する研究開発拠点・テクノロジーセンターを上田リサーチパーク内に構え、市内4工場と連携し高信頼・高性能「世界一」の新製品を開発する。

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「人々の幸せ」のため

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 「私たちの製品は普段、皆さんが目にする事はありません」と、広報担当の遠藤部長代理。しかし、長野県で作られた高性能・高品質・省エネの製品の数々は、世界から認められている。
 例えば、電源装置。「携帯電話や放送などの無線基地局などで採用されています。」見えないところで山洋電気のものづくりの技術が、私たちの暮らしを支えている。


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 社長をはじめ社員がたびたび口にする山洋電気の企業理念は、「全ての人々の幸せをめざし、人々とともに夢を実現する」。
 「何をするにも企業理念をもとに活動する。被災した競争相手に対しても、損得ぬきで協力した」と、山本社長。東日本大震災後、神川工場でも東北を中心とした被災地域への復興対策を最優先した。
 「人々の幸せ」のため、山洋電気は「世界一」の製品を作り続ける。

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【取材日:2011年7月20日】

企業データ

山洋電気株式会社
長野県上田市殿城5-4 TEL:0268-22-8585
http://www.sanyodenki.co.jp/