[サイプラススペシャル]191 技術力とモノづくりで“新しい価値”を創造する 必要なのは変革

長野県長野市

長野日本無線

上信越自動車道の長野インターチェンジを下り長野市内に向かって走ると、屋上がガラスに囲まれた特長のある円筒形の建物(社内ではタワーラウンジと呼ばれている)が右手前方に見えてくる。長野日本無線株式会社の本社工場だ。1949年設立、長野本社でも1,000人を超える従業員が働くエレクトロニクスメーカー、その広い敷地に足を踏み入れる。

従業員の半数は技術者

柱は3つの事業領域

一口にエレクトロニクスメーカーといっても長野日本無線の事業領域は、多岐にわたっている。日本無線㈱から独立後、通信機器から電子機器、OA機器、電源装置の分野へと事業を拡大してきている。
現在、柱となっているのは情報端末や無線装置の「情報・通信」、ファックスやコピー・プリンタなどの事務用機器に代表される「メカトロニクス」、ACアダプタや電源装置関連製品の「電源・エネルギー」の3分野、それぞれの高い技術を応用・発展させ、多種多様な製品を社会に送り出している。

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信頼されるパートナーとして

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「我社は技術者集団、技術者をコアにしていたから生き残ってきました。従業員の約半数は技術者、これが強みです」。自身もコンピュータのエンジニアとして入社、以来各部門で長野日本無線のものづくりに携わってきた丸山智司社長(65才)は、技術開発型企業としての歩みを強調する。
管理セクションのある建物の入り口近くには、国家資格の有資格者を紹介しているコーナーがある。一人ひとりの写真を添付した資格者の紹介がガラスケースに収められ、廊下の広い一角を占める。一般の消費者が直接目にする製品が少ないとはいえ、高いスキルを持つこの技術者集団が大手製造業から「長野日本無線さんでなければ」という信頼を勝ち取ってきた。多種多様な製品が並ぶショールーム同様に長野日本無線の「ものづくりの力」を示すコーナーだ。

必要なのは変わること

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何から何までできますが

「長野日本無線は何から何までできるじゃないですかとよく言われます」そう語る丸山社長の表情は厳しい。「3つの分野があると1つは厳しくても1つは伸びる。ベースは恵まれていますよ、ベースがあるから好きなことができます」。しかし「日に新た」を座右に置く丸山社長が従業員に向かって強調するのは「変革」。これから成長していくために必要なのは、改善ではなく変革、グローバル企業へ脱皮するために「日々変わること」だという。


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自動車産業にも製品を供給

長野日本無線の歴史は委託による製品造りから始まっている。社名に「無線」とあるように、通信を最終的な長野日本無線のコア技術と位置付けながらも、株主となっている大手メーカーとの協業によって、会社の基礎を磐石にしてきた。大量生産されるACアダプタを手がける一方、人工衛星に使用される特殊電源などの開発・生産にまで分野を広げている電源・エネルギー分野しかり、事務機器に代表されるメカトロニクス分野では医用機器、環境・省エネに向けた新製品の開発も手がける。
今、大きな可能性があると力を入れている1つは、エコカーに使用される車載部品の事業である。大手メーカーの車に何種類も搭載されているというこの部品の生産現場でも実践されているのが、「改革のものづくり」だ。

生産効率を改善し海外に勝てる生産ライン

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「ライン生産方式」で生産性をあげる

ものづくりの基本は、品質・納期・コストと言われるが、車載部品の製造現場で強調されたのは「性能と納期は守れて当然、残りは生産性の向上」効率と戦うものづくりだ。車載部品の製造は徹底して自働化を進め、組立工程はリレー生産方式と名付けられた直線型の生産ラインで効率を加速する。このリレー生産方式は、1人の受け持つ作業量や工程の見直しはもちろん、部品を取る手の動き、その数センチのムダをなくすために部品の供給方法を変え、冶具を改善し、立ち位置すら変更して考え出された。1つの部品の置き位置を変えることの積み重ねが、6人の仕事量を3人で担当することを可能にし、作業スペースを30%カットという具体的な数値に繋がり、生産性が2倍になるという大きな成果を創り出していくのだ。


長野本社工場はマザー工場

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今後、アジアを中心とする新興国の市場拡大を考えると、市場近くのものづくりは避けられない趨勢だ。部品供給メーカーでもある長野日本無線の生産拠点もやはり、アジアを見据えている。
しかし、長野での生産拠点は守ると丸山社長は語る。「いわばマザー工場です。国内で最善の生産ラインをつくり上げ、海外へ持っていく。海外での生産性を更に高めていく、そのための工場です」。もちろん必要な時に・必要なモノを・必要な量だけ、供給するという日本国内のサプライチェーン上で果たす役割も減じることはない。

新しい価値の創造を

ワイヤレス充電システム

1台のEV車が長野日本無線のショールームの真ん中に置かれている。使用するエネルギーは電気だが、特筆すべきは非接触で充電できること。伝送距離は30センチではあるが、飛ばせるエネルギー量も、開発当時の30wから2010年には1kwが可能になった。文字通り近未来の無線給電システムといえる。EV車に搭載された大電力ワイヤレス充電システムには長野日本無線が持つ高周波アンプ・充電器・制御の技術も活かされており、無線というコア技術をベースに造られた新しい価値の創造の象徴といえる。 

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他にもトータルな技術力を持つ長野日本無線は、省エネルギーや環境等社会システムのスマート化を見据えた製品の開発にも力を注いでいる。

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夢は従業員と一緒に

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「人財なくして事業は成立しない。思い切った投資をして人財育成においても"長野日本無線流"をつくりたい」丸山社長はにこやかに語る。加えてグローバルで通用するような自主ブランドを創りたいと熱い思いも吐露する。
「長野日本無線の名前を変えるような新事業を従業員と一緒につくる。そして長野日本無線の技術が活きる最適な市場でナンバーワンを獲る」。
協業から自立へ、そして目指すはグローバル企業、丸山社長の夢が実現する日はそう遠くないだろう。

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【取材日:2012年09月04日】

企業データ

長野日本無線株式会社
長野県長野市稲里町1163番地 TEL(026)285-1111(代表)
http://www.njrc.co.jp/