[サイプラススペシャル]201 自然豊かな地元の米と水で醸し出す酒 良い酒づくりは良い麹づくりから

長野県池田町

大雪渓酒造

県内で広く飲まれている清酒「大雪溪」。このお酒をつくっているのが、安曇野の北部に位置する池田町にある明治31年創業の大雪渓酒造だ。吟醸や純米酒などの特定銘柄だけでなく、一般的に広く飲まれている普通酒にも力を入れている。今年も「大雪溪」ブランドは様々な品評会で数多くの商品が上位入賞を果たしている。昔ながらの酒づくりの工程を守り続けるために、全国でも数少ない設備を導入している。

「お客様に愛される正直な酒造り」を

信州の自然が生んだお酒

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「ここ池田町は自然環境が素晴らしいところ。地元で採れたお米と水で、地元の方に愛されるお酒をつくっていきたい」と語るのは、三代目社長の薄井敦行氏(65歳)。銘柄の「大雪溪」は、池田町からも見える北アルプスの白馬大雪渓から命名されたものだ。昭和28年には全国新酒鑑評会で最優秀賞を受賞し皇室にも献上されたという歴史ある蔵元で、その後も県内外の品評会で高い評価を受け続けている。


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地元産の米と水にこだわる

お酒の原料となるのは、米と水。大雪渓酒造で使われる米は、県内の契約栽培農家が育てた酒米の「美山錦」や「ひとごこち」などほとんどが信州産だ。仕込みに使われる水は、敷地内にある井戸から汲み上げた北アルプスの天然雪解け水の伏流水を使用している。まさに「メイドイン信州」のお酒だ。

タンクの中で熟成され出荷

酒蔵では早朝から蔵人たちが入念に酒を仕込む。米から麹をつくり、これに蒸し米と水と酒母(酵母)を混ぜ合わせタンクで約25日間発酵させる。貯蔵庫には1万リットルサイズのタンクが約50本置かれ、出荷の時を待つ。発酵が進む段階で温度管理に使用する氷も、井戸から汲み上げた天然水から作られている。日本酒はその年毎に醸造・出荷されるため、毎年が勝負の連続だという。

酒造りの原点は「おいしい麹」

昔ながらの酒造りを再現した設備

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「良いお酒を造るため大切なのは、良いお米から良い麹を作ること」と語る薄井社長。良い麹を作るための設備投資にも余念がない。麹にする米に水分を均等に含ませる洗米・浸漬(しんせき)装置は、特許を取得した特別なものを使用している。古くは手作業で行われていた方式を機械に応用したもので、昔ながらの伝統的な酒づくりを受け継いでいる。


五段式製麹機で造られる麹

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水に漬けられた米は、蒸して麹菌を繁殖させることによって米麹となる。この作業工程の中で、大雪渓が使用しているのが五段式の製麹機(せいぎくき)。米麹の層が厚いと発酵にムラが出てしまうため、薄く広げて米の中にまで十分に麹菌を繁殖させる方式を採用しているという。この方式は吟醸などの特定銘柄のみに採用している酒蔵が多い中、大雪渓は普通酒の米麹もこの製法で作っている。

「おいしい麹」にこだわる杜氏

お酒造りのリーダーとなるのが「杜氏」。昨年大雪渓の杜氏となった長瀬護さんは37歳と若手だが、15年間ベテラン杜氏の下で経験を積み自身の酒造りに確固たる信念を持っている。「麹が美味しければ、そこから造られるお酒も間違いなく美味しいはず。だから食べても美味しい麹を作ることにこだわっている。」と語る長瀬さん。この麹へのこだわりが、大雪渓の酒造りの原点と言える。

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特定銘柄だけでなく普通酒も

全国品評会で数々の賞を受ける

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今年長瀬杜氏や蔵人たちの努力が生んだ「大吟醸山田錦原酒」が、全国新酒鑑評会で金賞を受賞した。また全国燗酒コンテストでは「吟燗」が極上熱燗部門で最高金賞を、「上撰」が熱燗部門で金賞を受賞。これ以外にも長野県清酒品評会で首席優等賞を受賞するなど、多くの商品で品質が高く評価されている。

「地元の人に愛される酒を、より旨く」

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大雪渓酒造は出荷量の9割以上が県内で、比率も一般に広く飲まれている普通酒が多いのが特徴だ。「地元に必要とされるお酒になるために、どこよりも美味しい普通酒を造っていきたい。」と語る薄井社長。地元の蔵で、地元の米と水を使い、地元の人たちに飲んでもらう。地域の酒蔵が果たしてきた「地産地消」の役割を忠実に担い続けている。

様々な場面で楽しめるお酒を

統計を取り始めた1970年には約150万klあった日本酒の消費量は、2010年には60万klを割り込むまで減少している。特に若年層の日本酒離れは、今後克服しなければならない大きな課題だ。大雪渓酒造でも女性向けのアルコール度数低めのものや、燗酒にあうものなど季節や飲み方にあった特別商品を多くつくっている。長瀬杜氏をはじめとする蔵人たちが、今日も伝統の味を守りつつ新たな酒造りにチャレンジしている。

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【取材日:2012年11月22日】

企業データ

大雪渓酒造株式会社
長野県北安曇郡池田町会染9642-2 TEL:0261-62-3125
http://www.jizake.co.jp/