[サイプラススペシャル]215 世界を舞台に「水」環境の研究 国立長野高専のものづくり

長野県長野市

国立長野高専 環境都市工学科 酒井美月先生

隠れた強豪校!?長野高専女子バレー部
部活も研究も!活躍する理系女子たち

 「部活も研究も、全力でアタック!」
 レシーブ、トス、アタック。体育館で熱心に練習するのは国立長野高専の女子バレー部のメンバー。部員数は6人ですが、チームワークはばつぐんで、高専の大会では関東信越地区大会4連覇中の強豪校です。
 今回ご紹介するのは、女子バレー部の顧問でもあり長野高専のOGでもある環境都市工学科の酒井美月先生です。酒井先生は、世界を舞台に「水」環境の研究をしています。

酒井先生のテーマは環境水工学

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女子学生にとって身近な存在

 「仲良く楽しく、でも練習は厳しく、です!」チームのモットーは?の質問に、笑顔でこたえてくれたのは電子制御工学科3年丸山優菜さん。

 理系・技術系が中心の高専=工業高等専門学校は、どうしても男子中心のイメージが強いのですが、こうしたバレー部のように女子の部活動も男子たちに負けない活躍しています。年度によって違いはありますが、毎年約30人の女子学生が入学していて、とくに電子情報工学科と環境都市工学科は女子の割合が高くなっています。


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 もともと先生も女性が少なかったのですが、英語、国語、環境、機械と現在は4人の教員が指導にあたっています。バレー部の顧問で環境都市工学科の酒井美月先生は、専門科目としては長野高専初の女性教員です。

 「みんなに優しくて、すごく身近な存在で、大好きです」と、同じくバレー部の環境都市工学科4年の久保田萌さんが言うように、部活でも授業でも、酒井先生は女子学生たちにとって頼りになる、身近な存在のようです。

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データにしてわかりやすく伝える

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 酒井先生の専門は、水理学や、環境水工学など、水の研究です。とくに、微量な残留物質が水環境の中でどんな動きをしているのか研究しています。
 「実際にフィールドに出て水を汲んで、それを調べるという研究をしているので、感覚で語られがちなことをデータにして実際に人にわかりやすく伝えるということが一番の魅力」と、酒井先生。たとえば川の流れでも、透き通っている=きれいな水や、近くに住宅地が多い=きたない水というイメージでなく、フィールドワークと呼ばれる現場での調査を行い、その中で得られたデータをもとに、地域環境のあり方を検証するという研究を行っています。

 高校の教師とは違い、高専の先生は教育と研究の両方をこなしています。環境都市工学は土木系の学問で、私たちが快適で文化的な生活を送るためのインフラ(社会基盤施設)をつくる技術者を育てています。酒井先生の担当する水理学は、水の流れに関する力学で、環境学や計測学、構造力学、土質力学などと同じ土木系の基礎的な学問です。卒業生は、国や地方自治体、建設業、電力やJR等の公益企業など多方面の分野で、社会の基盤となる施設をつくっています。

舞台は世界!

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カンボジアの環境省で研究

 国内だけでなく、研究を海外にも広げる酒井先生。今年1月までの10か月間、カンボジアの環境省で研究をしていました。
 「土木は、実はあまり応用がきかない学問です。この国ではこうだけど、別の国ならまったく別ということがよくあります。カンボジアでは、その場所にあった知識というのを適宜考えていくことの必要性を強く感じました」と、酒井先生。橋や道路などをつくる土木は世界共通と思いきや、実際はその土地に合わせることが必要なのだとか。酒井先生は、海外での研究で「その場所にあった知識をその場で適宜考える」ことの重要性を学び、その経験を教育にも生かしています。


海外でのインターンシップ

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 酒井先生の研究を含め、ほかにも国際的な活動は活発です。長野高専では、学科4年生の夏休み期間の短期インターンシップと専攻科1年生の10月から4か月の長期インターンシップが必修科目になっていて、教室で学ぶだけでなく、実際の企業の中での学びを重要視しています。(専攻科1年生の長期インターンシップについては、スペシャル207国立長野高専×ミマキエンジニアリング「長期インターンシップ」ご参照)
 そんな制度を活用して、実際に海外の企業で研修した学生もいます。環境都市工学科4年の大塚光雄さんと、波田腰遥さんです。2人は昨年夏、カンボジアの企業で研修してきました。「新しい体験がたくさんありました」と大塚さん。波田腰さんも「行ってみて、いろいろ感じることができた」と、企業での実習と海外での経験は、学生たちをより大きく成長させたようです。


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生活に密着した研究テーマ

 「自然豊かな長野県なので、河川の観察や採水などで地域の四季の変化を感じることも楽しみのひとつです。ただイメージだけで語られてしまう自然というものを、きちんとデータを収取することで、私たちの暮らしがよりよくなる研究に繋げていきたい。土木工学のフィールドは地域、国土、地球そのものです。研究の現場が生活にとても密着しているので、人々の生活や地域環境の変化に敏感でなければいけないと思います。そういった感覚を研究の中で忘れないようにしています。」
 部活も、研究も、全力で取り組む長野高専。女子学生たちの活躍、海外での実習、そして酒井先生の水環境の研究も、これからますます期待が膨らみます。

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【取材日:2013年03月05日】

企業データ

(学校のご案内)国立長野高専

http://www.nagano-nct.ac.jp/