長野県坂城町
ヤマザキアクティブ
一般的なボルトやナットは、繰り返し振動を与えると徐々に弛んできてしまう。通常はワッシャーなど別の部品を追加して解消するが、ボルトとナットだけで容易に弛まないのが「アクティブクロス」と呼ばれる製品だ。坂城町にあるヤマザキアクティブが開発したもので、長時間大きな振動がかかる大型プレス機やトンネル削岩機などに採用されている。信大工学部などとの産学連携にも積極的で、特許や意匠登録も多数取得している。
ヤマザキアクティブは、社長の山﨑忠承氏が1967年に起業。もともと部品メーカーに勤めていたが、自分の好きなものづくりを追究したいという想いで独立した。そんな山﨑社長が開発したのが、弛まないボルト「アクティブクロス」。きっかけは、ボルトの弛みによる大型トラックのタイヤ脱輪で起こった悲惨な人身事故だったという。
アクティブクロスの大きな特徴が、「スカート」と呼ばれるこの部分。このスカートが振動を吸収することによって、ねじが弛まない構造を実現した。ヒントとなったのは、風呂場などで使われるビニール製の吸盤。開発当時は大きく広がっていたが、研究開発によってJIS規格に適合する形状にまで収めることに成功した。
もう一つの特徴が、この大きな溝。ボルトの頭部分に溝を入れることは、応力で飛んでしまうという定説があり業界ではタブーとされていた。しかし山﨑社長はあえてこの常識を打ち破ることに挑戦。実験を繰り返すことでボルトが飛ばないことも証明されたうえに、スカートと溝の組み合わせによって吸収性が高まり、より弛まないボルトとナットを作り上げた。
テストによって品質の高さは実証されたものの、大型メーカーは実績のない部品を新規で導入することに慎重なため、当初はなかなか採用してもらえなかったという。そこで山﨑社長は、まずサンプルで使ってもらうことで、アクティブクロスの性能の高さを実感してもらう作戦に出た。サンプルが全く弛まなかったことで取引先の信頼を得て徐々に販路を拡大。現在は鍛造機械やトンネル削岩機をはじめ、ラリーなどで活躍する自動車部品にも採用されているという。
従業員数15名と決して規模は大きくないが、山﨑社長は「技術については我々のような企業も大企業も変わらない。それが我々の生きる道。」と自社の技術力に自信を持っている。また工業が盛んである坂城町の次世代にものづくりの素晴らしさを伝えるために、地元小学校の工場見学も積極的に受け入れているという。常識を覆す独自の発想で開発に成功したアクティブクロスは、まさに「コロンブスの卵」というべき傑作だ。
株式会社ヤマザキアクティブ
長野県埴科郡坂城町南条2223-2 TEL:0268-82-7635
http://www.active-x.jp