メイドイン長野にこだわるデイリーフーズ

　信州・千曲川のほとり、坂城町のデイリーフーズ。 看板に大きく記された「メイドイン長野」にこだわったジャム作りの会社だ。
　「ジャムおじさん」こと髙松さんについて、さっそく社内の方々に伺った。
　「新しいもの、新しい素材、新しい機械、新しい製法など、常に新しいことを考えている方だと思う」と、商品開発技術研究所の松田恒文さん。祖父と孫ほど年の離れた社員上野香織さんも「80歳という年齢を感じさせないほど、とてもお若くて、いつも明るく元気な方です」という。

　今回の主役は、デイリーフーズ副会長髙松宏さん。御年80歳。1970年にデイリーフーズを設立、およそ45年にわたり、生産・商品開発の第一線で「生よりおいしい」ジャムをつくり続けている。

「べちゃるのもったいない」から柿ジャム

　髙松さんが大事にしている「べちゃるのもったいない」。「べちゃる」というのは方言で「捨てる」の意。つまり「捨てるのはもったいない」の精神で、これまでジャム作りに取り組んできた。 　「べちゃるのもったいない」から生まれたのが「さ柿ジャム」だ。

　「我々の子どものころは、柿はおやつだった。みんなでもう木に登ってとったり、隣のうちの柿の木をもいで食べたものですよね」と髙松さん。甘く熟した柿をほおばる子どもたちや、渋柿を軒先に吊るし干し柿をつくる、そんな信州の晩秋の光景を懐かしむ方も多いだろう。しかし時代は変わった。「今は柿がたくさんなっていてもそのまんまでほったらかしてある。『もったいない』から何とかなんないかなと思って、それで使われない柿を使って作った」のが「さ柿（さかき）ジャム」だ。
　原料の柿と、地元・坂城（さかき）の名前をかけたネーミングも髙松さんのアイデアだ。

構想から30年!人気の「発酵ジャム」

　コマーシャルでもおなじみ「発酵ジャム」。4年前に発売し今やデイリーフーズの代名詞ともいえるヒット商品も髙松さんの発案だ。
　「30年くらい前、たまたまその頃はアルコールを、例えばリキュールとかブランデーとかワインとかそういうものを少しずつ入れたジャムをつくりたいと思った。試作してみるととてもおいしいんですね。でも、ひとビンずつ入れるというのは大変な作業だから、なんとか他に方法がないものかと思いまして」発想から30年、発酵の専門家を招き研究を重ねたどり着いたのが、ヨーグルトなどと同じ植物性乳酸菌だった。

　「ワインからヒントを得て乳酸菌をつかってジャムを作ったら、素材の味も損なわれないし、おいしいだけでなく体にもいいわけですから、これはいいものができたと嬉しくなりました」と、髙松さんも自信の品だ。155g入りの小瓶は390円ほど、いちご、りんご、ブルーベリーの定番商品に加え、にんじんの人気も高い。

「人のやらないこと」へ挑戦

　デイリーフーズの売上の多くは、大手菓子メーカーなど業務用が占める。余談になるが、私たちがよく口にするあのアイスやクッキーなどにもメイドイン長野のジャムが使われている。
　ケーキに欠かせないジャムも手がけるデイリーフーズ。工場内には自らケーキ屋さんまで構え研究する徹底ぶりだ。ショーケースにならぶ色とりどりのケーキにはもちろんすべてデイリーフーズでつくったジャムが使われ、ここで開発されたレシピは全国に公開される。

　「人のやらないこと、人のできないこと、難しいこと、手間のかかること、面倒くさいこと。そんなことを考えてこれからやっていこうと、いつも考えています」と髙松さん。「べちゃるのもったいない」精神で自然エネルギーもフル活用した工場、新しいことを考え、人がやらない手間のかかることにあえて挑戦する髙松さん。元気の秘訣は?と聞くと「よく歩くことですね」と子どものような笑顔を見せた。

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