[サイプラススペシャル]363 新たな炭素材料でリチウムイオン電池の性能を向上 信大工学部のものづくり⑲

長野県長野市

信州大学工学部電気電子工学科 林卓哉教授 村松寛之助教

カーボンナノチューブ・グラフェンなどを研究
携帯・スマホや電気自動車のリチウムイオン電池に活用

新たな炭素として注目されている、カーボンナノチューブやグラフェン。近年普及が進む電気自動車やスマートフォンに搭載されるリチウムイオン電池の材料として使われている。これらの材料によって電池性能を向上させる研究を行っているのが、林先生と村松先生の研究室だ。

取材後記

新たな炭素材料の研究

新たな炭素材料の研究 修士1年の高橋昌宏さんが手に持つのが、炭素材料の「グラフェン」。炭素の六角構造を1枚に並べた、グラファイトを剥がしたような構造となっている。黒鉛をはがした1枚から数枚になる新しい材料だ。このグラフェンを丸めた円筒状の構造となっているのが、カーボンナノチューブだ。


グローブボックスで電池の組立も

グローブボックスと呼ばれる空間の中でリチウムイオン二次電池を組み立てるのは、修士1年の濱砂貴之さんたち。リチウム金属の酸化を防ぐため、酸素や水の少ない空間の中で組み立てられる。酸化を素材として使われているのは、もみ殻などの農業廃棄物から取り出した炭素材料だ。

グローブボックスで電池の組立も

素材による性能差をチェック

素材による性能差をチェック 修士2年の村瀬弘行さんは、グローブボックスで組み立てた様々な材料を使用したリチウムイオン電池の性能をチェックする。樹脂を炭素化したものや、シリコンなどを原材料として使用している。これらを材料にすることで、従来のリチウムイオン電池に比べて、10倍以上の性能向上が期待されている。


ミクロの世界を覗く大型顕微鏡

ミクロの世界を覗く大型顕微鏡

大型顕微鏡で炭素材料の構造を調べているのは、学部4年の中西誠さんと修士1年の布廣祥平さん。自分たちが作った炭素素材を、原子レベルで観察することが出来る。六員環構造(六角形の網状)に生成されていることを確認するもので、六角形がきれいに並ぶことで、より強固な構造になるという。 ミクロの世界を覗く大型顕微鏡


あらゆる素材の可能性を追究

現在特任教授を務める遠藤守信先生から脈々と受け継がれてきた、信州大学の「お家芸」とも言うべきカーボンナノチューブの研究。バイオマスなどから取り出されるカーボンナノチューブなどの炭素材料は、汚染物質を濾過してきれいにする効果も持っている。エネルギーデバイスとしても電気自動車などのリチウムイオン電池などの更なる性能向上を目指して、学生たちは主体的に研究に取り組んでいる。

あらゆる素材の可能性を追究

【取材日:2016年1月27日】

企業データ

信州大学工学部電気電子工学科 林・村松研究室
(研究室のご案内)信州大学工学部電気電子工学科 林卓哉教授・村松寛之助教