[サイプラススペシャル]551 世界を魅了する「ガラス漆器」 信州の伝統工芸、新しい挑戦。

塩尻市木曽

丸嘉小坂漆器店

美しく、誠実で、ドキドキさせる
木曽の伝統工芸「漆」をガラスに!?

「美しく、誠実で、ドキドキさせる漆ガラス。私たちが作っています」

無数の線を放射状に描いたガラスの器が、光を受け美しいつやを放っています。
ガラス食器に施された塗料、信州の伝統工芸でもある「漆(うるし)」です。
「YES!ものづくり」
今回は塩尻市木曽平沢の丸嘉小坂漆器店(まるよしこさかしっきてん)を紹介します。

漆塗りガラス食器が躍進

3代目が立ち上げた新ブランド「百式」

1957年創業の丸嘉小坂漆器店は、社名にある漆器の名の通り、漆塗りの家具やガラス製品、漆器の製造・販売を手掛けるものづくり企業です。

信州木曽地域の伝統的な漆器づくりの新しい挑戦が、漆塗りのガラス食器でした。

代表取締役小坂玲央さん
「漆を塗った製品がメインで、中でもガラスに漆を塗った製品が会社の8割くらいのシェアを占めています」
5年前ほど前まで売上高の内訳は家具7割で、ガラス製品は2割ほどでした。
転機になったのは2013年に立ち上げた、漆ガラスの自社ブランド「百色(ひゃくしき)」。3代目の小坂社長が自ら企画しました。

ガラスに「塗れない」が常識だった

丸嘉小坂漆器店会長で伝統工芸士の小坂康人さん
「ガラスに漆を塗ること自体は、漆塗りの職人にとって『塗れない』というのが常識のうちだった」

常識では不可能だったガラスへの漆加工、同社は20年余り前からガラスに漆を塗る技術の開発を進め、県工業技術総合センターの協力で技術を確立しました。1994年、日本酒やビールなどの酒器が中心の自社ブランド「すいとうよ」を立ち上げ、漆塗りガラスを全国に先駆けて発売しました。
400年の伝統を持つ木曽漆器の用途を広げ、使いやすく楽しいものにしたいという想いで製品化しました。「工業試験場の指導員の方たちと一緒に開発してきました」と、小坂会長

信州の伝統工芸の新しいカタチ

ガラスの表面加工がキモ

百色はガラス食器の裏側(底面側)に漆を塗り重ねています。
職人さんが均等な太さの線を引ける蒔絵(まきえ)筆を使って繊細な模様を描き、はけで漆を上塗りしていきます。ナイフなどを使っても裏側の絵柄は傷つかないのが特徴で、ガラスの透明感と漆の質感の絶妙さから海外からも注目を集めています。

不可能だったガラスへの漆、どうやって加工しているのでしょうか?
丸嘉小坂漆器店 塗師 小坂智恵さん
「ガラスの表面に漆と結びつきやすいものを加工して下処理をしたうえで、漆を塗っていって、最後に焼き付けます。もともと漆というのは茶色くて透けたメープルシロップみたいな色なので、顔料を混ぜて様々な色を出しいています」

漆塗りガラス食器 世界へ

小坂玲央社長
「百色というブランド、2年ほどまえから世界発信していますが、世界でのシェアをどんどん広げていくことが1つ大きな目標です」
長野県の伝統産業のあたらしい「ガラス漆器」が、世界の市場を魅了します。

【取材日:2018年07月02日】

企業データ

丸嘉小坂漆器店
〒399-6302 長野県塩尻市木曽平沢1817-1 TEL 0264(34)2245
https://www.maruyoshi-kosaka.jp