[コラム]ものづくりの視点

vol.05小さなものは、小さな機械で造ろう
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

ものづくりは、“省エネ、省資源、省スペース”のDTFで

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DTF国際フォーラムIn諏訪(DTF2008)及び展示商談会」が、DTF研究会と当財団の諏訪テクノレイクサイド地域センターが主催し、8月25、26の両日、諏訪市と岡谷市で開催されました。

"DTF"とは?・・、あまり聞きなれない言葉ですが、「デスクトップファクトリー」の略称で、「卓上に置ける工場、機械」とでも言えましょうか、一般に旋盤、フライス盤と言えば、かなり大きなものですが、これは、卓上に置ける程度の極小さなサイズの旋盤やプレス等の工作機械のことを言い表しています。
ただし、この"DTF"は、日本電産サンキョー(株)の登録商標となっており、許可なくこれを使うことはできません。

さて、私共の身の回りにあるパソコンや携帯電話等は、近年ますます高機能でサイズが小さくなってきています。それらを構成する部品は当然ながら更に小さくなってきています。
また最近は炭酸ガスの排出量の少ない環境にやさしい省資源、省エネルギーな製品が求められ、加えて昨年からは石油や鉄鋼など各種の原材料が高騰し、これまで以上に"省エネ、省資源"な製品が要求されてきています。

このような、小さな部品を作るのには、大規模な工場は必要のない場合が多く、電気やガスをあまり使わず、工場のスペースも小さくて済む「DTF(マイクロファクトリーとも言われています)」等の考え方が世界的に広まり、研究が進んできています。

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皆さまもご存じのとおり、この研究会がある諏訪地域は、戦前から時計やカメラなどを中心とした精密工業が盛んでした。現在も切削、プレス、金型などの企業が約2,000社と、国内でも有数の集積地域となっています。このような背景の中で、2000年にこの「DTF研究会」が当時の(株)三協精機製作所のご支援を得て諏訪テクノレイクサイド地域センターが、参加を呼びかけ発足したもので、当地域企業のこれからの方向の一つと言えましょう。

以来、約30社ある会員各社が、このような卓上機械を開発し、すでに数億円販売するとともに、ヨーロッパの有力な集積地域である、フィンランドやスイスに視察団を派遣し研究し、特に精密工業のメッカであるスイスとは、連携を密にして交流を深めています。

今回の国際フォーラムの初日は、この「DTF・マイクロマシン技術の世界的潮流」をテーマに、スイス、韓国等から招聘した講師から基調講演をいただくとともに、パネルデスカッションでさらに深く研究しました。次の日は、スイスの有力なDTF企業4社と当会員企業の出展とプレゼンテーション、商談会等を実施しました。
両日合わせて、約300名の参加を得て熱心な質疑と商談が行われ、その場で数件の販売交渉も始まるなど、参加企業の皆様をはじめ、DTF研究会の会長さんや会員の皆様のこれに掛ける大変大きな熱意を感じたところであります。

また、このフォーラムの開催に当たっては、ジェトロの地域間交流支援事業に採択され資金的なご支援をいただくと共に、経済産業省関東経済産業局の「産業クラスター計画」の一環としても取り上げていただきました。地元岡谷市からも多大なご支援をいただき開催に至ったものであります。

なお当財団には、このような明確な研究開発テーマをもった会員制をとる技術開発型の研究会が40数個あります。それぞれ大学等の持つ高度な技術を"種"に、市場に出して売れる製品の開発を目指しています。
このDTF研究会もその一つで、卓上型の多機能加工機や微細穴加工装置などすでに市場に売れているものも多数あり、今後が大変期待されています。

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【掲載日:2008年9月 8日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。
http://www.tech.or.jp/