[コラム]ものづくりの視点

vol.8競争的開発資金の導入で、研究開発を!
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

競争的開発資金の導入で、研究開発を!・・・・長野県テクノ財団からの提案

  s-081007-1 IMG_0584.jpg                               9月29日に長野市で当財団が主催し、「知的クラスター・産業クラスター合同成果発表会2008」を開催しました。両クラスターとも当財団の主力の事業です。当日は、信州大学の遠藤先生や谷口先生等から「知的クラスター」における開発状況や、商品化の状況などの世界最先端の発表がありました。参加者も、県内企業の技術者はもとより、県外の大手企業からも多数参加いただき150名余と大変盛大な発表会となりました。今回は、この両クラスターが、国から「競争的開発資金」の助成を頂き研究開発等進めていますので、この「競争的開発資金」について紹介します。

  「クラスター」とは、聞きなれない言葉ですが、「ぶどうの房」をイメージし、転じて「群や集団」を意味する言葉として用いられています。具体的には、大学等と企業が参加して共同して技術開発をすすめ、その地域の産業の発展を図ろうとするとき、その成長の核(グロスボール)となる例えば自動車部品産業、とか超精密部品産業などがブドウの房のようにいくつもある・・・、ひとつの地域に房を多数作り出す・・・・、このようなイメージを言い表しています。

  まず「知的クラスター」ですが、文部科学省から助成を頂き、世界最先端の「ナノカーボン」や、「有機ナノマテリアル」などをテーマに県内外の企業が60数社参加して、信州大学等の先生方を中心に研究開発が進められています。特にカーボンナノチューブと呼ばれる分野では、世界の最先端を走っており、大変注目されています。

  次に「産業クラスター」は、経済産業省から全国で19箇所のうちの一つに指定を受け、助成金を頂きつつ、大学や企業が産学連携し、地域産業をネットワークで高度化しようとするもので、産学連携交流や販売促進等の事業を行っています。

s-081007-2 IMG_0578.jpg  国等では、諸外国との競争に打ち勝ち産業構造の高度化を図るため、企業と大学で共同して行う研究開発に対して、資金を助成しています。これらの助成制度は、まず、国が企業や大学等のグループから開発テーマを募ります。そして、その資金の募集の趣旨に照らして、提案された中から、優先順位をつけ、選定し助成をします。また、これら研究開発の評価を開発期間の中間や、最後に厳格に行い、結果を公表しています。この「知的クラスター」については、昨年、文部科学省に全国から9件提案され、6件採択されましたが、その中の一つに入り開発期間5年間にわたり年間7億円余の資金助成を受けることとなっています、しかし、来年はこの5年間の折り返し時期になりますので、中間評価を受け順位をつけられ、その後の後半の助成金は、この順位が低い場合は、減額、上位の場合は、増額になるものと予想されます。従いまして、現在必死で開発に取り組んでいるところです。

  これらの取り組みの中で、当財団は企業や大学等との間に入り、その事業の仲人役(コーデイネータ)を務めています。まず、県内企業に役立ち提案に値する研究開発テーマを選定し、企業や大学に参加を呼びかけ、最適で最強な開発グループを組織します。次に提案書の作成を支援したり、採択された後は、「管理法人」として、開発グループの管理運営、事務処理等を行うなど深く関わりつつ、成果の上がるよう最大限の努力をしています。

 当財団はこのような、「競争的開発資金」を現在各種合わせて6件、国から受け、これら資金の「管理法人」となっています。それぞれ、厳しい競争に打ち勝ち採択されましたが、更に開発中も中間評価や最終評価に向け、激しい開発競争にさらされながら、全力で頑張っている状況にあります。

  一方企業にとっては、技術開発力の向上や新製品の開発などが生きのこっていく最大の武器となりますが、研究開発には、リスクがつきものです。開発したものすべてが成功するとは限りません。何割かは、失敗したり、埋もれてしまいます。したがって国などは、新規性や、商品化の見込みなど多角的見地から審査し、産業構造の高度化や、国民福祉の増大に役立つテーマには「競争的開発資金」として資金面から積極的に応援しているのです。これは一面企業のリスク負担を公的資金で軽減して、その開発を応援しているともいえます。

s-s-081007-3 IMG_0612.jpg  企業の皆様には、ぜひこのような「競争的開発資金」を活用していただきたいと思います。

 当財団も、県内企業への導入を今まで以上に積極的に進めたいと考えています。

【掲載日:2008年10月 8日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。 http://www.tech.or.jp/