[コラム]ものづくりの視点

vol.37連関型産業構造と単一型産業構造
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

基盤技術を広く、深く深耕する

 長野県の製造業は、多数の企業が精密部品、電気部品、自動車部品などの多様な部品を生産しています。これらの部品は、鋳物、切削、プレス、金型、めっきなどの技術で加工していますが、これらの技術のことを基盤技術と呼んでいます。

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 県によっては、めっき企業が立地していない、金型企業が無いなど、これらの基盤技術に偏りがあるケースがあり、一つの地域で部品加工が完成しない場合があります。
 又、例えば、夕張の炭鉱、釜石の鉄、石川の織物のように、産地と呼ばれ特定の業種に特化した地域がありますが、長野県は、特定の業種に特化しておらず、これら基盤技術を持つ企業が満遍なく立地しているのが大きな特色です。

 このように、基盤技術が満遍なく立地し連携して部品等を生産できる地域の産業構造のことを"連関型産業構造(リンケージインダストリー)"といい、特定の産業に特化している地域のことを"単一型産業構造(モノインダストリー)"と呼んでいます。
 本県は、このように多様な基盤技術が多数集積しているため、特定の業種の衰退に地域経済が連動することなく、時計から半導体へ、計測器からセンサー部品へなどと次代の成長産業につぎつぎと移行することができ、大きな利点となっています。

 但し、本県は基盤技術の大集積地である東京の大田区や、東大坂等に比べて技術の幅と深さにおいて劣位な分野もあり、一層の集積と高度化が求められています。

 長野県テクノ財団では、県内企業の技術開発を進めるため、国から各種の助成資金を積極的に導入するよう努力していますが、今年は、これら基盤技術の向上を図るための国の助成事業「戦略的基盤技術高度化支援事業」を5件と、近年に無く多数採択され導入いたしました。
 例えば、航空機用エンジンに用いる極めて薄くしかも大きな直径を有する円筒形の部品は、従来技能者が、手作りの職人芸で作っていましたが、今回この資金を活用し、完全に自動化できる設備を開発します。完成しますと数十億円規模の市場が期待されています。

 このように当財団では、これら連関型産業構造に狙いを定め、更に深化させるための事業を積極的に実施していきたいと考えています。

【掲載日:2009年9月28日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。
http://www.tech.or.jp/