[コラム]ものづくりの視点

vol.65技術等高線、産業等高線・・??
山岸國耿

 私は若い頃、中小企業総合指導所という企業への相談や診断をする機関に勤務していました。ここでは、県内企業の現場に毎週のように巡回訪問し、経営や技術の相談にのりました。今のような電子計算機などが無い時代でしたので、計算尺で売上高対利益率などを算出したり、過去の売上高の推移を紙のグラフに落としたり、会社の課題等をヒヤリングしたりいたしました。

 そのような時、地域ごとに、企業の技術レベルを地図に落としてみると"(技術)等高線"が描けるのではないか・・・???、また産業構造 特に下請け構造をみても、頂点となる企業があって、その一次下請け、二次下請け・・などを地図に落としてみると、"(産業)等高線"が描けるのではないかな・・???などの印象を持ちました。

 例えば、長野地区では、当時、富士通 長野工場や須坂工場を頂点に数多くの企業が大きな裾野を構成し、等高線で描くと"富士山型"の一大産地を形成していました。 一方、上田地区では、日置電機、シナノケンシ、日精樹脂工業などの自動車や電機、計器などの数多くの有力な企業が群立し、"八ヶ岳型"の特色ある技術と協力企業群を構成していました。

 現在でも地域経済を考える時、それぞれの頂点となる企業を更に引き上げることが裾野を広く大きくしますし、新たにこのような山を積極的に形成していくことが、大変重要だと思います。

 これらの頂点企業をみますと、いわゆる東京等に本社があり、長野県にはその生産機能を主力とする工場を置くいわば"外部誘致型企業"か、県内に本社を置き製品の開発から生産、販売までの一貫した機能をもち、有力な企業に成長した"地域内発型企業"の二つに概ね大別されます。

 外部誘致型の場合は、地域に大きな雇用を生み出し地域企業の技術力の向上に貢献しますが、本社の意向により容易に工場が撤退することがあり、雇用等に深刻な影響を与えることもあります。地域内発型は、地元との結びつきが強く住民との一体感がありますが、高度な人材の確保や世界的規模での産業の発展や技術の進歩などに、遅れを取ることもあります。

 このようにそれぞれ一長一短ありますが、どちらの企業群も又どちらの型の企業も大変重要で、地域には偏ることなく混在して協調し競争していくことが、地域経済を更に強く成長させていくものと考えています。

 その為には、時代の変遷にあわせ非効率な企業の退出を促しつつ、新たな成長分野にリスクをとって果敢に挑戦する企業家が、我が長野県に続々と生まれることが期待されましょう。

【掲載日:2010年11月12日】

山岸國耿


昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。その後財団法人長野県テクノ財団に勤務、専務理事を平成22年3月末に退任、平成22年7月に国の地域活性化伝道師に就任