[コラム]ものづくりの視点

vol.83「カイゼン」の考案はノーベル賞3個分に相当・・・???
山岸國耿

 しばらくぶりに「カイゼン」のお話をお聞きしました。先日NHKで「洋菓子店」でのカイゼンへの取り組みが放送されました。経営コンサルタントの山田さんが出演され、洋菓子店でのカイゼンの様子や、800人の聴衆を前にした講演風景、そして病院の看護師さん達が、カイゼンに取組み残業を3割も減少させた様子などが放送されました。

 「カイゼン」は、トヨタの大野耐一さんらが体系化した生産方式で、一名「トヨタ生産方式」とも言われています。一つ一つの作業動作を見直して「乾いたぞーきんを更に絞る」というように徹底してムダを排除し、極力在庫を持たない、必要なものを必要な数だけ必要な時間に生産する・・・、など画期的な生産方式と言われています。

 県内においても、数多くの企業に導入され成果を上げています。特に自動車の部品を製造している企業においては、顕著な成果を上げています。例えば、南信地区のある自動車部品メーカでは、大型プレス機の段取り替で、プレス機に装着する大型治具の装着時間を数十%短縮した。同じく南信地区の電機部品工場では、工場の製造ラインの面積を在庫や仕掛品を整理することによって半減させた。北信地区の機械メーカでは、一人の従業員が複数の加工機械を運転し一個づつ製品を流すことによって、大幅なコスト削減につなげた。・・・など数多くの成功事例があります。

 「カイゼン」は、自動車産業をはじめとして製造業全体に広がり、更に行政機関や、金融、サービス業などあらゆる業種に普及してきています。このことは、カタカナで「カイゼン」と言われ海外にも普及し、「Lean Production」、「Supply Chain Management」などと同じように、世界的な言葉となっています。

 しかし、効率を追求するあまり「従業員や下請け企業いじめだ」との指摘もあります。一方、この方式のことをある人は、「ノーベル賞3個分に相当する・・???」との意見もあります。

 この放送では、アナウンサーが番組のまとめで「カイゼンは、その成果もさることながら、従業員全員の意識改革が進み、組織が活性化され一体感が進むことに大きな意義がある。」との趣旨の発言があり、私も同じ思いをいたしました。

【掲載日:2011年4月15日】

山岸國耿


昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。その後財団法人長野県テクノ財団に勤務、専務理事を平成22年3月末に退任、平成22年7月に国の地域活性化伝道師に就任。