[コラム]ものづくりの視点

vol.85「革新力(イノベーション)」を生みだす産学官連携を
(財)長野県テクノ財団理事長
市川浩一郎

ichikawa_ph.jpg  この度の大地震により被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。未曾有の大惨事、日本中が深く傷ついた悲しみの春に、技術革新をサポートする財団の理事長を仰せつかりました。大きなダメージを受けた「日本のものづくり」が、地域経済の再生に向けて力強い「革新力」を生み出せるか、産学官連携の真価が問われる時でもあると思っております。道のりは決して平坦ではありませんが、垣根を取り払い人知を結集して取り組んで参る所存です。

 さて、「技術で勝っても事業で負ける。その結果としてシェアの減少...」これは、日本の今日的課題のひとつを表現したフレーズです。其処には、新興国との消耗戦やグローバル化の前で立ち往生する国内製造業の姿が垣間見えます。
 我が国の戦後復興の背景には卓越した「人的資本」の結束があったと言われています。であればこそ私は、もう一度、産・学・官という言葉や垣根を越えて、「ものづくり」に関わる者たちに結集してほしいのです。
 そして、総花的な薄マキ施策ではなく、企業が直面する課題や技術革新の動向を的確に掴んだ上で、中長期的ビジョンを持って事業を企画、展開しなければなりません。

 テクノ財団の2011年(平成23年度)事業は、「技術で勝って、事業でも勝つビジネスモデルの構築」を施策展開の視点に掲げました。
 従来の産学官連携に金融分野のサポートも加え、グリーン、ライフといった国際競争力のある分野を視野に入れた研究開発と知財戦略、グローバル人材の獲得など、県内企業の「革新力」と産業創出の促進につながる事業を厳選して実施いたします。
 また、最終年度を迎える「地域イノベーション戦略支援プログラム」は、ナノテク・材料活用支援センターとともに、目標である「事業化」と「クラスター形成」に資する研究開発に重点化して参ります。
 更に、コーディネートオフィスにおいては、研究開発型集団の編成と提案公募型研究開発の導入促進、県内産学官連携コーディネーターの資質向上事業などを充実するとともに、海外展開支援チームにおいては、先端技術分野の製品・部品・システム等の海外販路開拓を支援する事業を充実し、県内企業のグローバル化に寄与したいと考えております。

 一方、当財団は、1985年(昭和60年)に発足した浅間テクノポリスと長野県テクノハイランド開発機構、そして2001年(平成13年)に再編したテクノ財団に続く、第三のステップとして、来春から「公益財団法人」に移行する予定です。
 これまで蓄積してきた技術や知財、そして産学官金の信頼関係を大切にしつつ、公的な専門組織として地域社会に貢献して参る所存ですので、引き続き関係各位のご支援とご協力をお願い申し上げます。

【掲載日:2011年4月20日】

市川浩一郎

(財)長野県テクノ財団理事長
長野県生まれ。不二越機械工業株式会社代表取締役社長。
2005年4月(財)長野県テクノ財団副理事長に就任、2011年4月から理事長。