[コラム]ものづくりの視点

vol.88内向きで、変わりたくない日本(にっぽん)
山岸國耿

先日、東京電力の清水社長が、退任の記者会見をされた。その席上記者からの、「東京電力が変えるべき企業文化は何か・・・」との質問に対し、「(社外の意見に耳を傾けず、)『内向き』の社内論理でいってしまうところがある。」との趣旨のことを述べておられました。このことは、先般の経営危機に直面した日本航空の時も、バブル崩壊時の金融機関にも一面共通するものを感じました。

自動車や電機など世界市場を相手に戦っている外需型企業は、一歩誤ると世界の市場から強制退場を迫られる、日々厳しい経営をしています。
それに比較し、内需型企業や規制に守られている独占的な企業などは、ともすると消費者の目線や変化する企業環境等に敏感に反応することなく、「内向き」な経営になりがちです。 企業経営は、「変化への対応」とよく言われますが、リスクを取って課題を解決し、新しい事業等に挑戦する積極的果敢な行動を常に求められているといえましょう。

一方、先日の日本経済新聞によりますと、ワシントンで「日本の未来」をテーマとする公聴会が開催されました。そこでの話題は、「東日本大震災後、日本が内向きにならないか」と心配する声だった。・・とのことです。

例えば、目覚ましい成長をつづける韓国では、徹底した英語教育や病院カルテの電子化などにみられるように、改革へのスピードが日本より格段に速いと聞きます。
それに比較し、日本の若者は、海外勤務を敬遠するなど、益々「内向き」になってきているとも言われていますし、「日本の常識は、世界の非常識」とも、「パラタゴス化が進む日本」とも言われています。

日本は、経済のみならず社会や政治などのいろいろな面で、仲間同士の「村(むら)」社会の「内向き」な議論に終始し前に進めず、直面する課題解決に多くの時間を費やしているのではないでしょうか。

以前にも述べましたが、「内向きで、変わりたくない日本(にっぽん)」と言われないように、この大震災を好機ととらえて、新しいことに素早く挑戦し「時代の変化を先取りする、雄々しき日本」に変わりたいものです。

【掲載日:2011年6月10日】

山岸國耿


昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。
長野県工業試験場長を最後に定年退職。その後財団法人長野県テクノ財団に勤務、専務理事を平成22年3月末に退任、
平成22年5月に公益財団法人 HIOKI奨学・緑化基金の監事に就任。平成22年7月に国 の地域活性化伝道師に就任。