[コラム]ものづくりの視点

vol.95固有企業と総有企業
山岸國耿

リスクを取る

 先日のテレビで、韓国大手企業の社長の話として、日本経済低迷の原因について「現在の日本には、技術力がある。金もある、人材もいる、無いものはただ一つアニマルスピリットだ。」との話がありました。アニマルスピリットとはあまり聞きなれない言葉ですが、「動物のように、物事に挑戦する気概」とでも言いましょうか。

 又先日、ある県内企業の社長と話をする機会がありました。社長曰く、「息子に事業を譲りたいが、性格が丸くてもう一つハングリー精神が無い。」とのこと。この社長はいわゆる2世ですが、正にアニマルスピリットで、次々と新しい事業分野に挑戦されて企業を大きく伸ばされました。3世となる息子さんについて、歯痒さを感じておられる様子がひしひしと伝わってきました。
 県内企業の経営者から、このような後継者についての悩みをよくお聞きします。
 「経営とはリスクへの挑戦」でもありますので、ハングリーでアニマルスピリットが大変重要です。

 一方県内企業をみますと、経営者が実質的に創業家の出身である場合が多くみられます。これらの企業のことを「固有企業」と呼んでいます。又株主が広く分散していて、実質的に創業家が経営していない企業のことを「総有企業」と言います。

 一般的に、創業者の場合は「カリスマ性に富み、ワンマンで、即断即決、勘、運、決断力、命令と服従」型が多いと言われ、経営後継者の場合は「協調性に富み、バランス重視、守成、熟慮慎重、議論や調査重視、説得と協力」型が多いと言われています。

 特に県内企業の場合、固有企業が多く、戦後創業した企業が、3世の経営後継者を迎える時代となっています。
 これらの経営後継者が協調型となることが多々あり、その特質を的確に生かした経営が求められていると言えましょう。

 企業自体も成長する企業、戦う企業を目指し、以前にも述べましたが、企業の組織体制や企業文化を、「横並び思考でなく独創を重視したり、中途採用や若手抜擢、減点主義でなく加点主義」などで、常に戦う風土の醸成に努めることが肝要です。

 経営者には、このような組織強化と不断にリスクに挑戦する攻撃姿勢(チャレンジポジション)が求められましょう。

【掲載日:2011年9月26日】

山岸國耿


昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。
長野県工業試験場長を最後に定年退職。その後財団法人長野県テクノ財団に勤務、専務理事を平成22年3月末に退任、平成22年5月に公益財団法人 HIOKI奨学・緑化基金の監事に就任。
平成22年7月に国の地域活性化伝道師に就任。