[コラム]ものづくりの視点

vol.104財務省業種、大企業性業種・・・とは、
産業の分類
山岸國耿

 最近の報道によりますと、電機関係の大手企業をはじめとする「外需型産業」では、円高等によって業績が振るわず赤字の企業が出てきているとのことです。
 このコラムでも、この「外需型産業」や「内需型産業」などの言葉を使って、円高や県内産業の動向をみてきました。
 そこで今回、産業の実状をより深く理解するために、いろいろな分類法を取上げてみました。

 一般的に、産業の分類には農業、商業、機械工業、電気工業などがよく使われています。又大企業、中小企業などの規模を示す分類法もあります。

 加えて、少し専門的になりますが、例えば「財務省業種」、「経済産業省業種」、「農林水産省業種」・・・等があり、官庁によってその所管する業種が決まっています。
 たばこ、塩、銀行、酒店などは財務省業種です。以前「大蔵省(財務省)業種には倒産が無い。」、「酒店開業の免許は取るのが難しい。」など、他業種からは、「規制が強く過保護だ。」と言われたこともありました。
 現在も省庁によって、それぞれ違いがあり独特の行政指導を行っています。

 「大企業性業種」、「中小企業性業種」との言葉もあります。例えば、県内にある自動車や電機などの3次、4次の下請け企業は、規模的には中小企業であっても、親企業と同様に円高や好・不況の波を直接被ることとなり、大企業性業種といわれています。
 一方、メッキ、塗装などは、地域の多様な企業から仕事を受注しています。そして大部分が中小企業です。このような業態を中小企業性業種と呼んでいます。
 県内産業の成長発展には、その主力となる大企業性業種も多数必要ですが、産業の厚みを増すためには、中小企業性業種も偏ることなく必要です。

 又、県外などから誘致した企業のことを「外部誘致型企業」と呼び、県内で生まれて大きくなってきた企業のことを「地域内発型企業」と呼んでいます。
 県内の産業構造を考えた時、地域内発型企業が多数立地しかつ大きく成長することが期待されます。一方外部誘致型企業は、東京などの本社の意向によって比較的簡単に撤退することもあり、デメリットもありますが、県内産業の成長には大きな力となり欠かすことが出来ません。

 製品でみると「生産財業種」、「消費財業種」との分類法もあります。例えば、物を作る機械である工作機械などは、生産財と言いますし、スーパ-などで消費者に直接販売されている食品や衣服・日用品などは、消費財と呼んでいます。

 なお、地域によってこれらの構成には大きな違いがあります。その内容を分析することによって、地域産業をより立体的に把握でき今後の動向を深く洞察することが出来ます。
 ちなみに長野県内の状況を他県と比較してみると、相対的に外需型業種が多く、経済産業省業種、大企業性業種、地域内発型企業、そして生産財業種が多い・・・という特色があります。

 雇用等を通じ、県民生活に大きな影響を与える県内産業の成長発展には、バランスのとれた構成が必要と言えますし、身近な企業をみるうえで、このような視点も参考にされたらいかがでしょうか。

【掲載日:2012年2月20日】

山岸國耿


昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。
長野県工業試験場長を最後に定年退職。その後財団法人長野県テクノ財団に勤務、専務理事を平成22年3月末に退任、平成22年5月に公益財団法人 HIOKI奨学・緑化基金の監事に就任。
平成22年7月に国の地域活性化伝道師に就任。