[コラム]ものづくりの視点

vol.115浮利、巨利、大利を求めず・・・
山岸國耿

 先般来、新聞紙上で厚生年金基金等の資金運用に失敗したAIJ投資顧問会社の記事が報道されています。利益が上がっていないファンドを高い利回りで運用できているなどと虚偽の実績を示して、お客である基金の資金を集めていた疑いがもたれています。ある委託した基金の担当者は、「低金利時代で運用益が上がらず困っていたところへ、7%以上の高い利回りが出る・・・とのうまい話があり飛びついた。」と悔やんでいました。

 私は若い頃、県内の企業を巡回し、経営や技術の相談にのっていました。
 ある南信の中小企業を訪問した時、社長から次のような話がありました。
 「今まで取引したことのない企業から仕事が入ってきた。利幅が今までの仕事より格段に良いので受注した。そのために銀行から金を借りて数千万円する専用機械を導入した。ところが2年程で仕事が全く無くなり借金と使わない機械だけが残った。うまい話には気を付けなければ・・・。」と、がっくり肩を落としていました。下請け企業を巡回訪問していると、このような話をよく耳にしたものです。
 又、企業の財務分析や売上高予測などもしました。当時は、高度経済成長期にありインフレで、企業の売上高に対する利益が7~8%以上になることもしばしばありました。

 しかし、現在は全く環境が様変わりし、デフレ状況にあります。銀行等の預金金利は無いようなものですし、株式等で運用しても利回りは数%以下と言われています。
 先日の日経新聞によりますと、「国内主要企業年金の運用利回りは、年率プラス1%程度」とのことです。
 製造業でも、かなりの努力をしても、利益は数%ではないでしょうか。赤字の企業も多く見受けられます。

 このように、現在の経済環境下では、一時的に高い利益を出しても、それを継続して毎年出し続けていくことは極めて困難な状況と言えましょう。

 新聞紙上には時々このような事件がのりますが、「浮利、巨利、大利を求めず。・・・」との言葉があります。経済生活をしている我々自身も充分注意し、かみしめたいものです。

【掲載日:2012年11月21日】

山岸國耿


昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。
長野県工業試験場長を最後に定年退職。その後財団法人長野県テクノ財団に勤務、専務理事を平成22年3月末に退任、平成22年5月に公益財団法人 HIOKI奨学・緑化基金の監事に就任。
平成22年7月に国の地域活性化伝道師に就任。