[コラム]ものづくりの視点

vol.116人間の能力こそが、競争力を決める。
山岸國耿

 東京大学の神野名誉教授が「二兎を得る経済学」との著書を出されています。スウエーデンの事例を研究し、「財政再建」と「景気回復」の二兎を追い、双方に成功した状況を研究されています。
 その要因として、スウェーデンでは、人口が900万人弱にもかかわらず、30万に及ぶ学習サークルが活動しており、学習サークルへの参加者数は成人の4人に一人乃至2人に一人とも言われています。
 「市場経済を活性化するには、何よりも国民の人的能力を高めることが最大の近道だ。人間の能力こそ、競争力を決める。公的学校教育は無論のこと、特に社会人の再教育に力点を置いている。」・・・とのことで、スウエーデンでは、「国民総学習社会、学びの社会を目指している。」ともいえましょう。

 先日経済講演会で、ある大企業の社長の話を聞きました。この会社は高い利益率を長年続けており、大変注目されています。会場から「高い収益を続けている一番の要因は何か。」との問いに、「全従業員への継続的な教育だ。」とのことでした。
 会社経営の根幹に従業員教育を据えて取り組むことが、実は長く、高い収益につながっていることを強調されていました。

 よく、「ものづくりはひとづくり」と言います。
 私自身、若い頃、県内の中小企業を巡回し、経営や技術の相談にのってきましたが、従業員教育の重要性を強く感じていました。その経験から、今回、この二つの話に大いに納得し、共感いたしました。教育こそが、目標達成への近道だ。・・・と思うのです。
 このことは、企業の有り方をはじめ、国の今後の方向等各般にわたり見習う点が極めて多いのではないでしょうか。

【掲載日:2013年2月 1日】

山岸國耿


昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。
長野県工業試験場長を最後に定年退職。その後財団法人長野県テクノ財団に勤務、専務理事を平成22年3月末に退任、平成22年5月に公益財団法人 HIOKI奨学・緑化基金の監事に就任。
平成22年7月に国の地域活性化伝道師に就任。