[コラム]ものづくりの視点

vol.45「全国イノベーション推進機関ネットワーク」 
  -トップを目指して、共同と競争を
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

 前号に引き続き、イノベーションに係る話題で恐縮です。
 先日「全国イノベーション推進機関ネットワーク」の運営委員会が開催されました。このネットワークは以前にも申し上げましたが、長野県テクノ財団と同様に、企業が行う産学官連携などによる共同研究開発等を支援している機関の集まりで、全国70機関が会員となり組織されている団体です。今回は、その内の十数会員で構成されたこのネットワークの事業企画をする運営委員会での話です。

 その席上、テーマによっては、全国の会員が一堂に会したのでは人数が多すぎるので、関東、中部のようにブロック単位にグループを作り、そこで会員が日ごろ抱える運営上の課題や活動内容等についての情報交換や相互交流をしよう・・・、コーディネート活動などの共通するテーマを研究しよう・・・との提案があり、各運営委員からは賛否両論、様々な意見が出されました。

 最近 国等で頻繁に使われている言葉に、「オープンイノベーション」があります。多数の大学や企業等がお互いに知恵やノウハウを出し合い、"共同"して技術革新や新産業を生み出そうとする考え方です。この反対語として他社と共同せずに自社内のみで、技術革新や新事業等を成し遂げようとすることを「クローズドイノベーション」と呼んでいます。

 私は、この運営委員会での提案に、オープンイノベーションと類似のことが言えると思いました。当財団を例にしますと、日ごろ他機関とは、一部を除き交流の機会はありませんので、いわば他流試合をせずに独自に事業を企画し実施しているのが現状です。今回提案された他の会員との相互交流や共同研究活動は、自身の機関の弱点に気付き他の会員の良い点を学ぶことができますし、共通のテーマで協力することができます。更に発展させ、新産業の創出を会員等が協力して支援することもできましょう。お互いに大きな成果が期待できるものと思います。

 更に、このような"共同"に加えてこれからは、これら会員同士もグループも大いに競い合い、それぞれが全国トップの事業実績を目指す"競争"につながっていって欲しいものだと考えます。
 この運営委員会の席上、この「共同と競争」は、ちょっと会議の雰囲気からして"飛びすぎているかな"と感じましたが、期待を込めてその旨を発言いたしました。

【掲載日:2010年2月 5日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。 http://www.tech.or.jp/

vol.44イノベーションとイノベーションブロック
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

組織の罠

 最近「イノベーション」という言葉が、国の各種施策の文章の中に、低炭素社会、クラスター、コンソーシアム等と並んで数多く使われています。いわば"はやり言葉"となっていますが、このイノベーションとは、"革新"とか、"新事業、新産業"との意味で使用されています。具体的には、個々の会社が、環境の変化に対応して技術革新や新しいビジネスモデルを発想し、新事業を興し次の成長の波に乗ることがイノベーションの"真の意味"といえましょうか。

 長野県テクノ財団では、各種の研究会を開催しています。その中で会員から時おり悩みの一つとして、新しい提案をしても、自社の社内で正当に評価されないことや理解が進まないことなど"外"よりもむしろ"内"に、新事業化が進まない要因がある・・・等が出されます。
 私は若い頃、県内の企業の現場を訪問しいろいろな相談に乗っていました。その際よく出る話題が、原因は内にある・・・ということでした。

 このことは、その会社の風土や文化が、"横並び思考、指示待ち姿勢、年功序列、怒れない上司、少数意見排除、前例慣例主義、減点・完全主義、問題先送り"等、イノベーションを阻害する組織になってしまっていることによる場合が多いのです。これらのことを、イノベーションブロック(革新阻害要因)とよび、企業が成長できない要因となってしまう"組織の罠"とも言われています。

 競合企業との厳しい競争に打ち勝ち、新事業を成長軌道に乗せるというイノベーションを興していくためには、会社の総合力を結集した全社的な取り組みが求められています。その際、会社の組織を"能力・独創重視、若手登用、だら幹の追放、加点主義、組織の分割・合併"等により、新しい"戦う組織・風土"に創りかえることが、最も重要とされています。そうでないとせっかく技術開発しても新商品や新事業に育たず 宝の持ち腐れとなり、イノベーションとは程遠い結果となることが多いのです。即ちイノベーションブロックを徹底して克服することが、イノベーション成功の一つの鍵といえましょう。(「新分野進出の実際」で詳述、昭和61年長野県中小企業総合指導所発行)

 当財団では、経営革新リーダ養成講座や次世代リーダ養成塾等を開催し、イノベーションを根底から支える企業の本当の力を醸成したいと考えています。

【掲載日:2010年1月13日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。 http://www.tech.or.jp/

vol.43人(ひと)が人(ひと)を呼ぶ・・・
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

更に参加者の倍増を

 長野県テクノ財団には、歯科医療技術応用研究会、テラヘルツ・電磁波応用研究会、家庭用燃料電池研究会、航空宇宙産業研究プロジェクト、超音波振動援用加工研究会、形状記憶合金応用研究会、信州オプト研究会、地産地消型エネルギー研究会、マシナブルセラミックス材料技術研究会、企業自立化研究会、ディスクトップファクトリ研究会、カーボンマイクロコイル活用研究会、食物アレルギー低減化研究会、省エネ型クリーン燃焼機器開発研究会・・・など、組織は会員制で会費を頂き、年間 数回から十数回開催している研究会が約60あります。その内技術開発を専門とする研究会が50あります。
 又、これら以外にも人材育成をねらいとした各種講演会、研修会、交流会等も多数実施しており、開催回数は、全部で年間 延べ850回に達しています。
 平成20年度の参加者数は、全部で 延べ2万3千名余でした。5年前には、1万2千名余の参加者でしたので、倍増しています。

 以前も書きましたがこれら研究会には、一つの会社から例えば、社長さんは経営戦略再構築研究会へ、その後継者は、次世代リーダ養成塾へ、経理部長さんは、経済金融情勢研究フォーラムへ、営業部長さんは、営業担当幹部交流フォーラムへ、技術部長さんは幹部技術者交流フォーラムへ、そして各開発担当者は、各種のハイテク研究会へと、全社あげてご参加いただいている会社が多数あります。
 東信地区のある会社では、著名な講師の研修会などの時には、いつも20人余の社員が参加されます。
 又、中信地区のある会社の社長さんなどは、いくつもの研究会に所属しかつその幹事などされておられるため、行事が続く時など、毎日のように当財団の地域センターにお見えになり「会社に勤めているのか、財団に勤めているのかわからない、・・・」と冗談を言っておられました。

 私は、今までこの財団への勤務が数回ありました。そのたびに感ずることは、時宜に適した研究会、研修会等を数多く開催すればするほど参加者が増加してくる・・・ということです。よく景気が悪くなると参加者が減少するといいますが、私はむしろ、沢山の方々に集まって頂ければ頂くほど、更に多くの方々が集まってくる・・と強く実感しています。
 即ち、大変ありがたいことで、"人が人を呼ぶ???"とでもいいましょうか、

 当財団の職員数は、約50名ですが、職員からは、自ら考えた新企画の研究会等が実施できかつ人脈が広がることなどから、この仕事が面白くて"はまってしまう・・"との声が聞こえてきます。
 今後も、企業の皆様方のご期待に応えて、時宜に適した研究会や研修会などを多数開催し、結果として参加者数を更に倍増できれば・・と願っています。

【掲載日:2009年12月25日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。 http://www.tech.or.jp/