[コラム]ものづくりの視点

vol.33市民の視線(思い)を大切に・・・
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

永く活発な活動を進めていくためには?

 昨年、ある町の町長さんとお話をする機会がありました。曰く「長野県テクノ財団は、町民に、あまり知られていない、わかりづらい・・・」とのお話がありました。又同様な趣旨のお話が、東信の機械メーカの社長さんからも、ありました。

 当財団は、一部には子供工作教室や、ロボコン、天竜川水系環境ピクニックなど広く一般の方々に参加を頂く事業もありますが、主には製造業の技術開発力等の向上によって、県内産業の高度化に寄与しようと、企業が産学官連携で行う共同研究開発への支援や国からの各種補助金の導入支援、技術開発研究会の開催などを実施しています。
   しかしながら、事業の直接的な対象が企業の技術者等のためか、一般の方々に知られていないのが実状です。

 先日、京都市で国が主催する産学官連携推進会議が開催されました。当財団のような地域のイノベーション(技術革新)を担おうとする機関が、全国から多数参加いたしました。その席上東京大学の松島克守先生から、その活動は、「地域の市民の視線(思い)を大切に・・、イノベーションを進めるためには、市民の理解と支持が大変重要だ・・・」との趣旨のお話がありました。

 これは、私も日ごろ考えていたことでした。当財団も、ゴーイングコンサーン(永続企業体)として、この地域社会で一定の地位を得、永く活発な活動を進めていくためには、ただ単に県内の技術者等からの期待に応えるのみでなく、日ごろの活動を通じて、主婦や学生など一般市民に知られ、認められ、そして広範囲な支援を頂くことが大変重要だと感じています。
 今後、当財団の事業内容や成果を広く地域に広報するとともに、各種の事業もこれらを念頭に置きつつ、更に努力・工夫していく必要があると考えています。

【掲載日:2009年7月 6日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。
http://www.tech.or.jp/

vol.32霧が晴れれば、景色は全く違っている・・・・
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

「ものづくりNAGANO応援懇話会」から・・・

 先日、「ものづくりNAGANO応援懇話会」が、信州大学の遠藤守信教授にご出席いただき開催されました。この懇話会は、信越放送㈱が主催して「長野県の基幹産業である製造業、とりわけ世界的な技術を持つ力のある企業が多数ある県内の"ものづくり"の現状を、内外に広く情報発信していく・・」等の趣旨で昨年設立され、今回はその一環として開催されたものです。
 日本銀行松本支店の柳原支店長さんをはじめ、県内多数の有力企業の皆様が参加されました。

 まず、遠藤先生の講演があり、成長の鈍化低迷している国内製造業の現状とこれを打開する手段として、科学技術が、歴史的にみて経済社会発展の原動力になっている状況が紹介されました。先生が発明された新素材のカーボンナノチュ-ブは、航空宇宙からリチュウム電池などの身近な生活用品に至るまで大きな市場になることが予想され、その原動力の一つになるとみられています。
 大変夢のある元気になるお話を頂きました。

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090602colum-03.jpg その後、遠藤先生を囲み懇談会が開催され、出席された企業の方々からいろいろなお話がありました。その中で、「現在の大変厳しい経済環境下、いつ景気回復するのか予測できない現状の中で・・・トンネルの向こうには、新しい世界が開けている・・・、霧が晴れれば、景色は全く違っている・・・など、景気が回復した暁には、世の中に新しい技術や事業が多数立上るため、従来の事業のままでの企業経営では生き残りが難しい、新しい経済環境となっているだろう・・・。」
 従って、「今、次の一手を考えなければ・・・」との切実なご意見が、何人かの出席者からありました。

 私も全く同感です。企業は、現在のような霧のかかったいつ晴れるかわからない時にこそ、自社の強みと弱みを市場と技術の両面から分析し、"的"を新しい事業や次代の技術に絞る、その開発に予算と人を集中させて助走し始め、景気が回復したら一気に走る、他社を抜き去る・・それが、現在の企業戦略の一つではないかと考えます。

 長野県テクノ財団は、今こそが、全力でこれらを支援する時期ととらえ、次の新技術や新事業の"種"を広く紹介し、ヒントとなる素材を提供していきたいと考えています。
 現在、次代に狙いを定めた開発資金の導入支援や約50テーマの技術開発研究会を開催していますが、更に充実させて期待に応えていきたいと思います。

【掲載日:2009年6月 2日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。
http://www.tech.or.jp/

vol.31魂が揺さぶられる思いがした・・、人生観が変わった・・・・
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

長野県テクノ財団が主催する研修会のアンケートから

 当財団では、会員制で組織された技術開発研究会やその都度参加者を募集する研修会など年間 延べ約800回開催しています。これらの終了後その成果を以後の事業企画にいかしていくため、様々な方法で評価・検証しています。
 例えば、研究会等の終了後 "参加者から技術相談があったか、大学の先生や他の先進企業の技術者等に紹介したか、共同研究等に結び付いたか・・・"などです。

 又、終了時には、参加者アンケートも実施しています。
 例えば「これから開催してほしい研究会等のテーマは何か」の問いに、"マーケティング、車載部品の技術動向、燃料電池・・・・"などの回答が有り、「今後の研究会等への要望は何か」の問いには、"時間が足りなかった、難しかった、成功談より失敗談を、・・・"など数多くのご意見が寄せられています。

 「研究会等へ参加した満足度や感想」などについても聞いていますが、"充分満足した、物足りなかった、若干不満だった・・"などもあり内容は様々です。
 その中で、当財団の浅間テクノポリス地域センターで開催した「経営革新リーダ養成塾――"顧客から選ばれる"経営の仕組みを創る―」では、単に経営手法の研修に止まらず、・・人が企業の中で生き生きと働くにはどうしたらよいか・・とか、企業の中で人はどうあるべきなのか・・など、具体的事例を示しながら問いかけられ、参加者の深い根幹のところで共感する研修会でした。
 参加された社長さん等からのアンケートでは、"先生のお話をお聞きし、魂が揺さぶられる思いがした(東信地域の電気関連会社の社長さん)、人生観が変わった(南信地域の会社の専務さん)、会社経営の考え方をまったく変えようと思う(北信地域の社長さん)・・・"などの回答が多くありました。
 私は、今まで700回ぐらいこのような研究会等を担当し企画・運営してきましたが、このような評価を受けたことは初めての経験でした。経験、識見ともに豊かな社長さん等からこのような評価を頂きましたことは、企画した者として、驚きでありかつ感動的でさえもありました。

 今後の研究会等においても高い満足度を得て頂けるよう、アンケートの結果を一つ一つ丁寧に分析しつつ、次回の企画に生かし、企業の皆様のご要望により即した事業を開催していきたいと考えています。

【掲載日:2009年5月25日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事

昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。

http://www.tech.or.jp/