[コラム]ものづくりの視点

vol.24活発に活動を続ける自走型研究会
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

木の文化と環境フォーラム

    先日、新幹線の中で、ある東信地区の社長さんに何年かぶりにお会いしました。曰く「これから南信のある会社の工場の新築祝いに出かけるところです。昔結成していただいた研究会の会員として今でもお付き合いが続き、会社同士親類づきあいしています・・・」とのこと。
 数十年前に私が担当し、県内の若手の社長さん方十数人に呼びかけ新しい経営のあり方などを勉強する研究会を立ち上げましたが、その仲間が現在も勉強会を開催し、会社同士も親類付き合いをしているとのことでした。本当にびっくりしてしまいました。

 長野県テクノ財団には、「善バレ コラボネット」や、「歯科医療技術応用研究会」「ゼロエミッション推進研究会」「DTF研究会」等名称は研究会であったり、ネットであったりといろいろですが、それぞれの狙いや設立目的を持つ会員制のこれら研究会が現在50数個あり、共同研究開発や人的交流、各種経営手法の研修などの活動をしています。財団では、毎年多くの研究会を新たに組織し、事務局を財団に置き企画運営を会員と相談しながら進めています。
 これらは、数年しますと、初期の目的を達成し、解散するものが出てきますが、中には、会員の希望によって財団への依存度を少なくし、会の企画運営や費用負担を会員が自主的に行うこととし、継続していく会も出てきます。
 私共はこれを、自走型研究会と呼び、原則的に以後若干のお手伝いは致しますが、徐々に完全に自走していただくこととしております。

 財団に事務局を置きますと、いろいろな制約があり自由な活動ができない場合もあります。研究内容や会員同士の付き合いの熟度によっては、会員の希望により自走していただくことが、それぞれの会の円滑な運営に繋がることが多いのです。財団としても、少ない予算と人員の中で時宜に合った新たな研究会を立ち上げて行く必要があり、同じ研究会を長年にわたり立ち上げた時と同じようには支援できないという事情もあります。

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 私が以前担当して立ち上げたもので、「木の文化と環境フォーラム」や「アルプス女性企業家会議」など多数の研究会が現在も自走の形で、活発に活動されています。これらの状況が昨年記事として新聞に掲載された時は、本当に懐かしく嬉しく思いました。

 今後もこのような自走型の研究会が数多く生れ、学習や研究活動を継続されますことは、将来 県内産業の振興にとって大きな力になるものと確信しています。

 

【掲載日:2009年1月26日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。
http://www.tech.or.jp/

vol.23創っても売れない・・・・
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

長野県テクノ財団は、「売れる製品づくり」を支援しています

 先日、当財団と同じような、企業を支援するための研究開発や人材育成事業を専門に実施している機関の全国会議がありました。その席上、「技術開発をするがその技術を基にして創った新製品が売れない、ましてや事業化できない」という悩みが、多数の参加者からありました。又、当財団には企業の皆様からの意見や提案を頂く運営委員会や企画委員会がありますが、その席でも決まって出るのが、「営業力を強化するための事業をしてほしい・・・」との提案です。

 中小企業の現場の人たちの間でよく言われている言葉に「1:10:100」があります。これは、新製品の"源"となる新技術の開発を成功させるために、企業がこの開発にかける総合的な力を"1"とすれば、それを新製品として売れる状態にする即ち製品化するには、その"10"倍の力が必要だ、更に、開発した新製品が売れて、人件費を支払い、設備投資をし、適正な利潤が上がり、持続的に商売ができること、すなわちこれを事業化といいますがこの事業化に成功するには"100"倍の力が必要だ、という言葉です。
 又「1に売り先、2に人材、3、4、が無くて5に技術」ともいわれています。企業経営にとって、「まず"1"番は売り先があることだ、次に大切なことは人材だ、力のある従業員が居ることだ、"3"、"4"、は無くて、技術は"5"番目だ・・・」というのです。それだけ売り先が大切だといっているのです。
 これらの言葉は、正確に分析し厳密に検証したものではありませんし、違う見解を持っておられる方もいらっしゃいますが、売ることの困難さを言い表した、中小企業の現場で経験的に言い交わされている言葉の一つです。

 技術者自身は、必ず売れる・・・と信じて開発に心血を注いで打ち込みますが、「技術開発には成功したが、それを基にして創った新製品が売れない、商売にならない、開発した投資が無駄になった、お蔵入りになってしまった・・・・」このような事例が大変多いのです。
 世の中には商品があふれています。売れる商品が沢山あります。消費者や、時代が求める製品を作れば必ず売れることも現実です。

 当財団の浅間テクノポリス地域センターでは、各企業の営業部門のトップクラスの方々に会員になっていただき、広告宣伝や販売組織、販売促進方法、消費者動向の変化など他人に言えない営業現場の"コツ"や"ノウハウ"など、お互いの経験を語り合って交流する「営業幹部交流フォーラム」を開催しています。
 他にも「販路開拓アドバイス事業」や「製品企画マーケティング塾」など、営業力強化のための事業を数多く実施しています。
 今後、新製品の開発から事業化までトータルで支援したり、製品の特色に合わせたきめ細かな営業力強化の事業を実施していきたいと考えています。

【掲載日:2009年1月 5日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。
http://www.tech.or.jp/

vol.22サイクロイドって
LLCプロセスフォーカス代表
森本 五百樹

携帯電話のユニークな機構

 携帯電話の進化には、目を見張りますね。携帯にカメラが搭載され、Webも可能になったのは、つい最近かと思っていたら、すでにワンセグと称して、テレビまで見ることができるような時代になりました。またGPS機能も当たり前のようです。

 携帯ショップで、このワンセグ対応の携帯を見ていたら、液晶画面を縦から横にできる、とてもユニークな機構になっている機種があるのに、またびっくりしました。と言っても、数年前からあるのだそうですが、はじめて手に取って試してみると、なかなか面白い、そしてどういう仕掛けなのか不思議にも思います。カタログでは、この機構のことを、特にうたってはいないのですが、「サイクロイド機構」というのだそうです(*)。

 ものづくりというものは、いろいろな要素から成り立っています。たとえば、部品の「かたち」を作るという加工の分野、そうして出来上がった部品を組み合わせて「動きや機能」をつくりだす分野、などなどです。
 携帯に組み込まれた「サイクロイド機構」は、動きを作りだしたユニークなメカニズムと言えるでしょう。ハイテク電子技術のなかに、からくり人形のような仕掛けを組み込んだところが、また憎い気がします。何か動かしていて楽しい、そんな気にさせてくれます。

 サイクロイドというのは、ご承知のように、「円が直線上を、滑らないで転がるとき、その円周上の1点が描く軌跡」です。このワンセグ対応携帯のメカニズムは、その回転中心が円弧を描くことによって、画面の矩形の角が一定直線上を移動できるしくみになっています。したがって、サイクロイド曲線をなしているとは言えないわけで、「サイクロイド機構」(*)と造語したのだと思います。
 受験生の方はくれぐれも間違わないでください。

【掲載日:2008年12月15日】

森本 五百樹

LLCプロセスフォーカス代表
長野市出身 1946年生まれ ㈱東芝、GE東芝タービンコンポーネンツ、北芝電機勤務を経て 2007年 LLCプロセスフォーカス設立し、プロセスアナリシスとビジネスアナリシスをツールに経営改善をコンサルテイング並びにIT支援を行なっている。