[コラム]ものづくりの視点

vol.6ものづくりの喜び
LLCプロセスフォーカス代表
森本 五百樹

ものづくりの楽しさはお料理の楽しみ

 始めまして、LLCプロセスフォーカスの森本です。

 経営・管理・製造のプロセスを研究改善することを通して、皆様方のお役に立ちたいと念じています。 このたび縁がありまして、本コラムに登場することになりました。これまで長い間製造に携わってきた経験を生かして、モノ作りの楽しさ、面白さを若い方々にご紹介していきたいと思います。

「難しいことも、平易に」を心がけて書いてみますので、 よろしくお願いします。

  「ものづくり」というと、なにか工業製品をつくるような硬いイメージになります。しかし、その本質は、毎日お母さんがおつくりになっている夕飯のお料理と同じなんです。毎日のことですから、作るのが嫌になる日もあります。しかし、楽しくてうれしいことのほうが多いのではないでしょうか。 

 まず、何を作ろうかと考える楽しさ。それに合わせて冷蔵庫の中をのぞいたり、スーパーへ買い物に行く。これも楽しい。そしてもちろん作ること自体が面白い。  でも一番うれしいのは、作った料理を食べてくれた子供がお母さん、おいしいね」と言ってくれたときでしょう。

  製品のものづくりも、まったく同じです。それまで、コストだとか品質だとか、いろいろうるさかったお客様から、

「いい製品ができたね。お客様にも喜ばれたよ。」

「いつも安心して使える。これからも頼みますよ。」

などと言われたら、重ねてきた苦労も吹っ飛んでしまいます。

 そしてここまでの信頼感がお互いにできたら、儲かるか儲からないか、ということなど、考える必要はなくなるでしょう。製品の違いを際立たせるにはどうするか、とか、何が売りか、特徴は何か、こんなことも考える必要がなくなります。

お客さんに喜んでもらう。ものづくりの極限は、この一点につきます。

 

【掲載日:2008年10月 1日】

森本 五百樹

LLCプロセスフォーカス代表
長野市出身 1946年生まれ ㈱東芝、GE東芝タービンコンポーネンツ、北芝電機勤務を経て 2007年 LLCプロセスフォーカス設立し、プロセスアナリシスとビジネスアナリシスをツールに経営改善をコンサルテイング並びにIT支援を行なっている。

vol.05小さなものは、小さな機械で造ろう
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

ものづくりは、“省エネ、省資源、省スペース”のDTFで

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DTF国際フォーラムIn諏訪(DTF2008)及び展示商談会」が、DTF研究会と当財団の諏訪テクノレイクサイド地域センターが主催し、8月25、26の両日、諏訪市と岡谷市で開催されました。

"DTF"とは?・・、あまり聞きなれない言葉ですが、「デスクトップファクトリー」の略称で、「卓上に置ける工場、機械」とでも言えましょうか、一般に旋盤、フライス盤と言えば、かなり大きなものですが、これは、卓上に置ける程度の極小さなサイズの旋盤やプレス等の工作機械のことを言い表しています。
ただし、この"DTF"は、日本電産サンキョー(株)の登録商標となっており、許可なくこれを使うことはできません。

さて、私共の身の回りにあるパソコンや携帯電話等は、近年ますます高機能でサイズが小さくなってきています。それらを構成する部品は当然ながら更に小さくなってきています。
また最近は炭酸ガスの排出量の少ない環境にやさしい省資源、省エネルギーな製品が求められ、加えて昨年からは石油や鉄鋼など各種の原材料が高騰し、これまで以上に"省エネ、省資源"な製品が要求されてきています。

このような、小さな部品を作るのには、大規模な工場は必要のない場合が多く、電気やガスをあまり使わず、工場のスペースも小さくて済む「DTF(マイクロファクトリーとも言われています)」等の考え方が世界的に広まり、研究が進んできています。

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皆さまもご存じのとおり、この研究会がある諏訪地域は、戦前から時計やカメラなどを中心とした精密工業が盛んでした。現在も切削、プレス、金型などの企業が約2,000社と、国内でも有数の集積地域となっています。このような背景の中で、2000年にこの「DTF研究会」が当時の(株)三協精機製作所のご支援を得て諏訪テクノレイクサイド地域センターが、参加を呼びかけ発足したもので、当地域企業のこれからの方向の一つと言えましょう。

以来、約30社ある会員各社が、このような卓上機械を開発し、すでに数億円販売するとともに、ヨーロッパの有力な集積地域である、フィンランドやスイスに視察団を派遣し研究し、特に精密工業のメッカであるスイスとは、連携を密にして交流を深めています。

今回の国際フォーラムの初日は、この「DTF・マイクロマシン技術の世界的潮流」をテーマに、スイス、韓国等から招聘した講師から基調講演をいただくとともに、パネルデスカッションでさらに深く研究しました。次の日は、スイスの有力なDTF企業4社と当会員企業の出展とプレゼンテーション、商談会等を実施しました。
両日合わせて、約300名の参加を得て熱心な質疑と商談が行われ、その場で数件の販売交渉も始まるなど、参加企業の皆様をはじめ、DTF研究会の会長さんや会員の皆様のこれに掛ける大変大きな熱意を感じたところであります。

また、このフォーラムの開催に当たっては、ジェトロの地域間交流支援事業に採択され資金的なご支援をいただくと共に、経済産業省関東経済産業局の「産業クラスター計画」の一環としても取り上げていただきました。地元岡谷市からも多大なご支援をいただき開催に至ったものであります。

なお当財団には、このような明確な研究開発テーマをもった会員制をとる技術開発型の研究会が40数個あります。それぞれ大学等の持つ高度な技術を"種"に、市場に出して売れる製品の開発を目指しています。
このDTF研究会もその一つで、卓上型の多機能加工機や微細穴加工装置などすでに市場に売れているものも多数あり、今後が大変期待されています。

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【掲載日:2008年9月 8日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。
http://www.tech.or.jp/

vol.04テクノハイランドは、産業界あげての運動だった
財団法人長野県テクノ財団 専務理事
山岸 國耿

テクノハイランド構想 草創のころ

先日、県内企業の長老とお話をする機会がありました。そのとき「テクノハイランド(高度技術都市圏)構想」草創の昭和62年頃の話題が出て、「テクノハイランドは、長野県の産業を高度化しようという願いをこめた産業界あげての運動だった、みんな一生懸命にやった」とのお話がありました。私自身は当時、数年間この事業にたずさわりましたが、「願いをこめた運動だった」のお言葉に心を打たれ、その頃を思い起こしました。

このサイプラスのコラムVOL.01に記載しましたとおり、現在の財団法人長野県テクノ財団の前身は、財団法人長野県テクノハイランド開発機構(昭和61年11月設立)と財団法人浅間テクノポリス開発機構(昭和60年11月設立、テクノポリス法の承認 昭和62年12月)です。この両財団は長野県が昭和59年3月に提唱した「テクノハイランド構想」に基づき、研究開発や人材育成を狙いとして、産業界などからの出捐金を基に設立されたものでした。

当時国では、テクノポリス法(高度技術工業集積地域開発促進法)が制定され、「地方都市圏において高度技術に立脚した工業開発をすすめ、産・学・住が一体となって地域の自然・文化と調和した魅力ある町づくりを進めよう」としておりました。長野県の「テクノハイランド構想」は、この法律の考え方を基礎に取り入れ、長野県らしさを加えて産業界に提唱したものです。

この県の構想はちょうど時宜に適したものとなり、県内企業の皆様方に大変大きな反響を呼び、前述の長老のお言葉どおり「産業界あげての運動」の状況にまで盛り上がりました。以来、大学や市町村等のご協力と、長野県経営者協会の全面的なご支援の下、各地域の代表的な企業の社長さん方が支部長になられ、毎月のように開催される「テクノハイランド構想」実現のための会議や各支部での説明会等に毎回熱心にご出席いただき構想を練り上げました。その結果、財団の設立とともに基金の出捐金集めなどにも、大変なご尽力を賜り現在の58億円の基金へとつながりました。

設立当初の基金集めには、私も少なからず関わり、県内の企業などを訪問し説明して回りました。中でも思い起こされますのは、この財団の中心的事業は工業振興ですが、町づくりの視点から、直接的メリットの薄い商店や旅館等からも基金へ出捐して頂いたことです。

当財団の活動の基となっている基金は、このような方々の熱い願いのこもった尊いご支援によって造成され、現在があるのだということを肝に銘じ、設立の趣旨に沿った活動に邁進しなければ...と思う次第であります。

【掲載日:2008年8月18日】

山岸 國耿

財団法人長野県テクノ財団 専務理事
昭和19年上田市生まれ。38年間長野県職員として長野県商工部関係機関に勤務。長野県工業試験場長を最後に定年退職。当財団浅間テクノポリス地域センター事務局長を経て、現職に就任。
http://www.tech.or.jp/