編集部より

ナンバー1を3つ持て

多摩川精機

「県内に本社があるものづくり企業を、優秀な企業を、知らなさすぎる」

これが、萩本会長との出会いでした。お誘いを受け、飯田市の本社をお訪ねしました。

天竜川を挟んだ対岸には創業者の生まれ故郷の泰阜村が臨めるという丘の中腹、懐かしさを覚える平屋作りの建物群が、本社第一工場です。国際宇宙ステーションの実験棟である「きぼう」にも使われているという多摩川の技術が生まれた工場は、創業時のままのガラスがはいった木製の窓枠、スリッパの下の廊下も木製、なだらかな斜面に沿って続く建物から建物への渡り廊下は黒光りしています。「常に挑戦しつづける多摩川精機」というキャッチフレーズを静かに受け止め、磨かれた構内です。

萩本会長は薄いブルーの作業着で、案内してくださいました。「ここはちょっと見せられません」という一角を示されながら、また、従業員の方と手を上げて挨拶されながら、その足の速いこと。多摩川精機への愛情はストレート。そして、最後は歴史館。丁寧に説明していただきました。多摩川のオンリーワンの技術が並びます。数々の製品は「ナンバーワンを3つ持て」という鼎の理論の証。忘れられない人々の足跡が、そして、今があります。「自分の目で見なければだめ」。本当にここに来て、この地に多摩川精機があることを見せていただきました。

「奢る者久しからず、だから、宣伝はしないよ」会長はおっしゃいます。

「ものづくりは部下にノウハウを伝えることが大切」。伝えることは難しいですね。

でも、それも挑戦。「奢り」ではなく「誇り」が人を育てている多摩川精機です。

(2008年8月 6日)