編集部より

安曇野で生まれた「VAIO」

ソニーイーエムシーエス 長野テック 

Sai+のサイトオープン日に伺いました。広々とした構内は、しかし、決して威圧的ではなく、周囲の水や緑にしっくりとけこみ、入り口でサインを終えて歩き出すと建物の「SONY」のロゴが自然に目に入ってきました。あの「VAIO」が生まれた工場です。もちろんロビーには「VAIO」のディスプレイ、県外からいらっしゃった雰囲気のお客様も何組かお見えでした。少し緊張しました。

「ここには300名規模の設計センターがあります。」ソニーイーエムシーエス株式会社長野テック人事総務部統括部長の今井さんのお話はここからスタートしました。単一の部品メーカーではなく、「開発」という最上流から始まる「ものづくり」が、この長野テックの魅力です。

「開発からエンドユーザーまでカバーしている、そこを未来の技術者、学生さんにもっと知って欲しいなあ」

「設計・開発から販売まで広く手がけることができることのメリットは、非常に大きい」

VAIOは49カ国で使われています。

ソニーイーエムシーエス株式会社は、全国に10のテック(事業所)と2つのサービスセンターがあります。各テックの前身は、さまざまですが、現在はソニーエレクトロニクス商品の設計から、生産、アフターサービスまで統合な事業展開を行っています。中でも、この長野テックは、ITビジネスを推進する中核拠点、確かに全社員の半分近くを設計センターに配置するという技術戦略や、また、中国をはじめ海外へ毎月50~60名(社員の1割近く!)も出張する方がいるというお話から、この安曇野からの発信されるものと質の量は半端ではないと理解できます。

イーエムシーエスのグループ内で、東京本社までの移動時間が最もかかるのは長野テックなのだそうです。今井部長は、車で上田に出て新幹線を利用するとか。本社へ、海外へ、人とモノの移動距離、「デリバリー」は、製造業にはとりわけ大きなテーマ。でも、時間距離のデメリットを補っても余りある魅力が、ここ安曇野にはあります。「世界のVAIO」の、その先につながる今が伝わってきます。

(2008年8月18日)

フィールドは、さらに多彩に

タカノ

スノーマンとイス、長い間、それがタカノのイメージでした。

東京行きの新幹線の中で一枚のポスターに目がとまりました。福祉介護器具とタカノのロゴマーク、一歩踏み出しているタカノを知りました。

宮田村の田園風景にとけこむように、タカノ株式会社があります。バネの製造から始まったタカノのものつくりは、バネからバネを使ったイスの製作へ、イスから家具作りへ、家具は介護福祉用品の開発に、介護福祉からさらに健康食品事業へとつながっています。加えて、液晶ディスプレイ検査装置の新規事業もあります。バネからの多様な展開、すべてが一部上場企業「タカノ」の技術です。

手の中に、ソバの実があります。名前は「高嶺ルビー」日本で初めて赤い花を咲かせる品種です。この種もタカノのものづくりのフィールドの一つ。10数年をかけた信大農学部との共同研究の成果です。

赤ソバの花は景観植物、新しい観光拠点への期待が高まります。宮田村だけではありません。箕輪町、中川村、清内路村にも、広がりをみせているとか。ソバ畑には、日本ミツバチが放されてタカノの次の製品、「高嶺ルビーはちみつ」が生まれました。

「伊那谷を赤いソバの花でうめ尽くしたい」そんな思いを長い時間をかけて育てる、タカノの姿勢です。

バネから蜂蜜まで、タカノのものづくりのフィールドは色彩豊かです。

(2008年8月 6日)

知らないから出来る

島新精工 

「これ、僕がデザインしたんです」。ケータイをポケットから出してくださいました。

「これは塗装技術なんです」。製造過程は想像もつきませんが、光沢のある濃いブルー、角度によって微妙なグラデ-ションが浮かび上がり、シャープな透明感のある色合いのケータイです。表面は5層に塗装されているとか。色の深みが生きる「技術」です。

仕事を始めて10年、知らないから出来たと島新精工の二村常務のお話です。塗装の専門家には、思いもつかない発想で、業界初の製品を作り上げました。

同じ塗装用機械を使っている会社はいくつもあるのに、島新さんだけがなぜ薄くきれいに早く塗装できるのか、とよく聞かれるそうです。要は、塗装用機械の使い方、もちろんコンピューター制御ですが、常務の開発です。非常に薄い塗りは、塗料の使用量も少なく、コストを抑え、無駄も少なく、環境にもやさしい。ご苦労は笑顔の向こう側です。

こんなに身近に「塗装」技術があることに驚きました。塗装の技術とデザイン、センスが加わり大きな付加価値を生み出す、「ものづくり」の真髄です。デザインを支える技術の力、「塗装」のイメージが変わりました。

毎年6月には、東京ビックサイトで全国ものづくりの展示会が開催されます。今年も単独で出展し、国内だけではなく、海外からのオファも重なったとか。海を越える「塗装」の技術です。

(2008年8月 6日)

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