[サイプラススペシャル]73 人に喜ばれる仕事をしよう お客様の財産・資産を作る

長野県上田市

コロナ技建

「『コロナ住宅』というブランドだけでは、コロナ技建は理解していただけないと思いますよ。」電話の向こうから松澤克人常務の言葉が届いた。「総合建設業、コロナ技建をみてください」。早速、上田市本郷の本社を訪ねた。

「いい家」をつくりたい

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コロナ技建は、1971年、有限会社日工技建としてスタートした。現社長松澤庄次氏が創業、今年40年を迎えた。当初は大手建設メーカーの住宅建設の管理を業務としていたが、自分が納得する方法で地域の風土や気候にあった、お客様に喜んでいただける住宅を提供しようと、翌1972年には鉄骨を使った独自工法を開発し、自社ブランド「コロナ住宅」を立ち上げた。スタート時の人に喜ばれる仕事をしたいという思いは今も変わらず、これを「社是」として掲げる。


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「住宅は建てて終わりではなく、完成したときが、お客様とのおつきあいの始まりです。」松澤常務は語る。家を建てて何年か経つと、「子供が大きくなった」「周囲に大きな建物ができた」など様々の理由で、あそこを直したい、ここをもっと便利にしたいなど、要望がうまれる。そのときに、施工した会社がなくなっていては困る。住宅建築を受注することは、その時々のお客様のニーズを受け入れて、快適な住環境を提供し続けること。施工時だけではなく、いつまでもお客様の暮らしをサポートしていくのが、建築会社の役割と考えている。「建設業・建築業は、サービス業でもあるのです。」という言葉にも頷ける。

コロナ技建は、コロナ住宅㈱・日工開発㈱とともに、コロナグループの1員である。グループが一つとなって、土地の分譲や斡旋から始まり、一般住宅の設計施工販売、工場や店舗などの特殊建設を手がけている。しかし、それだけではない。自社で鉄工場・木工場を持ち、建築用資材の製造はすべてここで行う。また、製造された建材や独自工法を他社にも販売する。つまりメーカーでもある。これが、総合建設業と称する理由だ。

コロナ技建が手がける住宅の8割は鉄骨、残りの2割が木造であるが、目指すのは、どちらも施主のニーズに応えた高品質で、安心・安全に暮らせる住宅だ。実際、20年前、30年前コロナで作ったといって、施工を頼まれるケースがあるという。信頼を大切に地元の住宅メーカーとしてとことんまでお付き合いする、その覚悟が、「コロナ住宅」のブランドを作り、育ててきた。
しかし、「覚悟」だけでは、家は建たない。

工法とは困りごとを解決する力

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本社から車で5分ほど離れたところに鉄骨加工工場がある。小学校の体育館ほどの広さだ。入り口に近いところには、長い鉄材が積まれ、天井からは大きなクレーンが下がる。床には運搬用の鉄のレールが敷いてある。鉄骨を切断し、それらに穴を開けるNCビームワーカーが稼動し、鉄骨の加工作業が行われていた。規則正しい金属音が工場内に響く。その先では溶接作業の火花も見える。さらに奥に進むと塗装用のスペースも広がっている。
このとき工場で働いていたのは5名程。しかも、松澤常務は「彼らは一人一人が多能工です。」と紹介した。建材の加工をしている社員は、資材の運搬もする。建築現場にでて、鉄骨の組み立て作業をすることもあるという。誰でも現場にでて、何でもやる、その姿勢が進行形で多能工を育て、技術力を蓄積していく。

松澤常務は「工法とは現場の困りごとを解決する力」と語る。「家を作るには設計図は必要です。でも設計図は完成図、現場の困りごとの解決方法は書かれていません。」コロナ技建の社内に、「技術開発部」はない。あるのは「現場」、現場の問題解決方法が、積み重なって独自工法を開発し、50を超える特許技術になったのだ。
corona-giken10.jpg その一つがアンカー(=建物の基礎)の技術だ。
建物の基礎工事はまず土の上に直接「捨てコン」とよばれるコンクリートを流し、捨てコンの上にコンクリートの基礎部分となる台をのせる。そこに、先端に鉄板のついた鉄柱をおき、基礎と鉄板をボルト(=アンカーボルト)で固定する。しかし、土の上に流し込む捨てコンは必ずしも水平でない。そうすると捨てコンの上のコンクリートの基礎も鉄板も水平にならず、ボルトは曲ったり、斜めになり、結果としてアンカーボルトの本来の力が発揮されないケースも出てしまう。この問題は、現場の「困りごと」ではあったが、アンカーボルトの作業は、基礎工事を担当する会社の責任か、鉄骨業者の責任か、あいまいな領域で、解決に至っていなかった。
コロナ技建はここに着目した。施工現場と鉄骨加工工場で、試行錯誤を繰り返し、ついに生まれたのが「アンカーロック」だ。「アンカーボルトを本来打つべきところに正しく打つことができる装置と技術」と解説されている。鉄筋を組み合わせたこの装置そのものは非常にシンプルだ。工法として確立するまでの道のりを支えたものは「いい家」を作りたいという熱い思いであったに違いない。
この装置と技術は、更に改良を重ね、現在関連特許は13以上にも増えている。用途も自社施工の住宅のみに限らず、ビルなどの大型建築物にも広がり、部材を上場の建材メーカーにOEM供給したり、大手ゼネコンからも直接に引き合いが来ている。

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技術だけが提案ではない

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住宅建設において「高気密高断熱は当たり前」というが、四季がはっきりしている信州で、いかに建設コストや維持コストを抑えるのか、気になるところだ。また、省エネ・環境・エコロジーというキーワードもクリアするべきテーマ。
いま、コロナ技建が力を入れているのは、「断熱住宅」だ。松澤常務によると、「断熱とはいかにして温度を一定に保つか」ということ、つまり年間を通して温度変化ができるだけ少ない家である。提案の一つは、自然エネルギー、ことに年間を通して安定している地中の温度を住宅の室温調整に利用すること、ここにもコロナ技建は独自工法を持つ。また、断熱材についても研究を進めており、一般的に流通している断熱材を使いコストは抑え、基礎と壁の断熱ラインを一致させる技術、天井に隙間なく断熱材を固定する技術、骨組みの内側と外側に二重に断熱材を貼り付ける技術を使って、断熱気密効果を従来よりも高くすることを提案している。

住まいの提案はライフスタイルの提案とも言える。どんな場所に住むのか、どんな過ごし方をするのか、「いい家」は作り手と住む人とのコミュニケーションの中から生まれる。いかに自由設計といっても、基礎工事や骨組みは信頼できる専門家に任せたい。 「私たちの仕事は、お客様の財産資産を作る仕事です。30年40年たって資産価値が下がったら申し訳ないではありませんか。」
コロナ技建の住宅づくりの心が伝わる言葉だ。

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【取材日:2010年4月23日】

企業データ

コロナ技建株式会社
長野県上田市本郷766-1 TEL:0268-38-3318
http://www.corona-giken.co.jp/