長野県茅野市
プライムシステムズ
注目の高密度集積回路FPGA
社員3人だからできるスピード経営
アジア最大規模のIT・デジタル関連の見本市「CEATEC JAPAN(シーテックジャパン)2010」が、今月5日から9日までの5日間、千葉市の幕張メッセで開催された。
3Dテレビや、新型ケータイ、近未来を思わせるバーチャル技術など大手メーカーの華やかな展示が人気の中、従業員わずか3人の会社が出展していた。茅野市のプライムシステムズだ。
注目の高密度集積回路FPGAとは? ベンチャー成功の秘訣は?シーテックの「信州企業」と合わせてご紹介する。
11回目となる今回のシーテック。幕張メッセの会場には、16カ国・地域から昨年を上回る616社が参加。5日間の来場者は前回の約15万人を大きく上回る約18万人。会場内はいたるところ人また人の熱気に包まれ、不景気がウソのような活況ぶりだ。
今年のテーマは、「Digital Harmony - もっと快適に、もっとエコに」。
注目を集めていたのは、三次元(3D)対応のテレビや新型携帯電話のブースで、シーテックの開催に合わせて発表されたばかりのスマートフォンやタブレット型端末の展示には、多くの来場者が列をなしていたつくっていた。
「現在」手にできる最先端の製品から、「未来」に向けて育まれている技術まで、さまざまな展示があったシーテックの会場には、多くの長野県関連企業の姿も見受けられた。
佐久市にも工場があるTDKのブースは、有機ELディスプレイを展示。0.3ミリ以下の薄型化を実現し、「薄い」「軽い」「割れない」さらに「曲がる」スゴイ技術だ。
コンパニオンが手にするのは、携帯電話に装備した有機EL。後ろが透ける「シースルー」タイプだ。
日本でも販売開始となり話題となったiPhone操作によるリモコンヘリ「AR.Drone」。心臓部には箕輪町や富士見町に事務所があるエプソントヨコムのジャイロセンサーが採用されている。
空中で安定した姿勢を制御するのに「長野県のものづくり」が重要な役割を担う。
安曇野市にも工場を構える村田製作所。大人気の自転車型ロボット「ムラタセイサク君」、一輪車型ロボット「ムラタセイコちゃん」。
2010年モデルの「ムラタセイサク君」のコンセプトはエコ。走行が終わると、会場からは拍手が起こった。
ルビコン(伊那市)は、「"創る""省く""蓄える"ルビコンからのエコ提案」をテーマに、主力のアルミ電解コンデンサを中心に展示。
特にLEDテレビ、LED照明、次世代自動車、新エネルギー分野に注力している。
抵抗器のKOA(箕輪町)のブースで人気だったのは「風を感じるセンサー」。うちわであおぐと、風の流れに添ってLEDが光る。
「創エネ、蓄エネ、省エネ」分野で最適な制御を実現する。抵抗器やセンサーなどを扱う会社ならではの展示だ。
自治体として、長野県や長野市もブースも出展していた。
「社長、いい土地見つけました」のタイトルどおり、企業誘致に熱が入る。
世界の技術をリードする多くの企業に混ざり、従業員わずか3人のベンチャー企業も出展していた。茅野市のプライムシステムズだ。手掛けるのは高密度集積回路LSIの一種「FPGA」。
FPGAの最大の特徴は、自由に回路が書き換えられること。通常、ICやLSIは高度な技術を織り込み大量生産を行うため、一度作ると回路の変更ができない。一方、FPGAは、独自に回路の変更が可能だ。
内田正典社長も、「FPGAなら、新製品開発のスピードが上がり、コストダウンになる」と、自信を示す。実際に、プライムシステムズのFPGAは大学での実験・研究に活用されるほか、大手電機メーカーからの注文もある。
「つい先日も、ヨーロッパのケータイメーカーから、メールで注文が来ました」と、内田社長。しかし、従業員は3人。いったい、どうやって開発をしているのだろうか?
「メールとインターネットなどの通信環境と、パソコンがあれば、どこでも仕事ができます。」本社は茅野市にある内田社長宅。他の2人の社員は、それぞれ原村と千葉県の自宅の一室が仕事場だ。全員が顔を合わせることは少なく、電話やメールのやり取りが基本という。
設計と基板に載せる部品の手配までがプライムシステムズの主たる業務。製造は基板メーカーに外注する。
「広告費は、ほとんどかけない。ホームページを見て問い合わせがくる」と内田社長は言うが、社員3人の企業が、なぜ世界的な企業からも取り引きすることができるのだろうか?
「仕事を発注してくるのは、ほとんどが企業の開発部門の方です。大きな企業になればなるほど、自社で開発するには決裁など時間と手間がかかってしまう。担当者は、こういう機能がほしいというのが明確になっているので、インターネットで調べて私たちに注文してくれるのだと思います。」
「営業マンが言葉で説明しなくても、仕様を見て発注するのが技術者。」12年前まで、自らも都内の半導体メーカーで働いていた内田社長ならではの感覚だ。
「開発のスピード、変化の激しい業界なので、スピードが第一。」
集積回路の進化は、まさに日進月歩。何が重要か?の質問に、内田社長は「スピード」と答えた。
さらに内田社長は続ける。「お客さんのニーズをつかむことができるか、さらにお客さんのサポートを抜け目なくやっていく、これが大事なことです。」
開発にもサポートでも重要になるのが、スピード。プライムシステムズは、3人という少人数のメリットをフルに活かして、スピーディーな対応をビジネスの根幹に据えている。
使い勝手を良くした「USB対応」の製品や、幅広い活用が期待できる「マイコン搭載型」など、シーテックでは新製品も発表したプライムシステムズ。
これからも小回りを生かしたスピーディーな開発で、世界のものづくりを支えていく。
有限会社プライムシステムズ
長野県茅野市泉野5931-35 TEL:0120-963-593
http://www.prime-sys.co.jp/