[サイプラススペシャル]102 オリジナルブランドの「電動アシスト装置」 現場のニーズに応えた小型化・高出力化

長野県須坂市

山一精工

普通の台車に装着可能
従業員はわずか5人

 1トンの台車を軽々と運べる優れモノ。須坂市の山一精工が開発した「電動アシスト装置」だ。最大の特徴は普通の台車にも取り付けられる点で、自動車メーカーなどの部品運搬現場で活躍する。

 開発・販売を行うのは、従業員5人の会社。もともとは、機械部品などを造っていた企業が取り組む、新しいものづくりの姿をご紹介する。

最大1トン搬送可能の「電動アシスト装置」とは?

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その軽さに、驚いた。

 その軽さに、驚いた。ハンドルをちょっと押すだけで、300kgの台車が前に進む。最大1トンの台車も軽々運べる「電動アシスト装置」だ。
 開発したのは、須坂市の山一精工。赤と白の一輪車のような装置を台車のハンドル部分に取り付けるだけで、普通の台車が電動アシスト台車に変わる。

毎月10台以上、売れるようになってきた。

 難しいボタン操作は不要。使い方も簡単だ。ハンドルを押すと、内蔵したセンサーが傾きを検知し、傾いた分だけモーターが回転する。「自動車メーカーさんで採用されました。部品を運ぶ現場で活躍しています。」実際に自ら手掛けた電動アシスト装置を押しながら、山崎亮(33)社長は説明を続けた。

 「お年寄りから、女性まで誰でも使えるようにしました。もちろん、安全にも配慮しています。ひずみセンサーで、ハンドルにかけた力の分だけモーターを動かしていますから、手を離せば止まります。勝手に前に進んで事故になることはありません。」価格は、50万円弱と安くはないが「毎月10台以上売れるようになってきた」と、山崎社長も手ごたえを感じている。

現場の要望に応じて進化を続ける

使う状況も使われかたも、千差万別。

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 山一精工が電動アシスト装置を開発したのは、5年ほど前。県外の電機メーカーからの依頼だった。「もともとOEM(相手先ブランドによる生産)で造っていました」と、山崎社長。しかし相手先が事業見直しでこの分野から撤退したことから2009年7月から、自社ブランド化した。

 「どこでも使われる台車だから、使う状況も、使われ方も千差万別。」オリジナルブランドとなった山一精工の強みは、要望に合わせてカスタマイズ可能な点だ。段差が多い現場用に、ギア比を組み換えて2倍の重量にも対応することができる。

ヒトが機械に合わすのは、おかしい。

 「本来、ヒトが機械に合わすのはおかしい。機械がヒトに合わすような製品を造っていきたい」という山崎社長の言葉通り、顧客の幅広いニーズに応え、電動アシスト装置は進化する。

 例えば、ハンドル。もともとは楕円形だったものを、T字型に変更した。「この方が押しやすいし、右や左に操作しやすい。」
 一番の特徴は、専用アダプタをはめることで既存の台車に取り付けが可能な点だ。「今使っている台車を活用した方が、作業の効率化につながる」と、山崎社長。車輪の小さな台車にも対応できるよう、小型化も行った。
 高さ80cmほどのボディに、独自の工夫が埋め込まれている。

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オリジナルブランドを支えるのは5人

営業マンは、いない。

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 「営業マンは、いないんです。」
 従業員は、わずか5人。どうやって販売しているのか?の問いに、山崎社長は笑顔で答えた。「ホームページを見たお客様から、メールなどで連絡があります。そのあとは、直接、設計者が対応しています。」インターネットからの問い合わせを受けて、個別に対応する販売を確立した山一精工。設計と組み立てに特化したものづくり企業だ。

自分で値段をつけられる仕事が、したかった。

 山一精工の創業は1990年。社長の父親、山崎直司会長が地元メーカーから独立し起業した。「クルマの電機系の部品製造で、大きく成長した。」全盛期は別の敷地にも工場を構え、従業員も現在の6倍30人を超えていたというが、「部品の価格が下落し、最終的に中国へ行ってしまった」と会長。
 「自分で値段をつけられる仕事がしたかった。」電動アシスト装置は、会長自らが開発した。直司会長は今でも現場で溶接などを行い「新しいものを考えたり造るのが好きなんです」という現役の技術者だ。

医療や介護の分野でも、商品を開発したい。

 下請けから脱却し、メーカーとして新しい一歩を踏み出した少数精鋭の山一精工。「人数を増やしたからといって、良いものができるわけじゃない。」若きリーダーは、開発を中心とした企業づくりを目指す。
 「医療や介護の分野でも商品を開発したい。」"ヒトに合わせる"という開発の発想は、現在の工場での顧客だけでなく、新しい分野でも活躍が期待される。

【取材日:2010年11月4日】

企業データ

株式会社山一精工
長野県須坂市野辺1891-2 TEL:026-245-6402
http://yamaichi-seikou.com/