[サイプラススペシャル]126 高付加価値のオリジナル製品を生み出す 社員みんなで「いい会社をつくろう!」

長野県高森町

協和精工

 協和精工は、下伊那郡高森町のものづくり企業。取引先からのニーズに応えるオリジナル製品を製造することで存在感を高めている。現社長就任以前は赤字経営が続いていたが、社員一人一人のモチュベーションを高めることで建て直しに成功した。キーワードは「経営の見える化」。社員全員で「いい会社をつくろう!」をスローガンに取り組む現場を取材した。

スローガンは「いい会社をつくろう!」

主力製品はブレーキ

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 協和精工の主力製品は、電磁ブレーキ。モーターが止まると両側の電磁石の電流も切れ、バネの力で2枚の円盤が回転している円盤をはさみブレーキをかける。モーターが回るときは電磁石に円盤がひきつけられてブレーキが外れる。サーボモーターなどに使用されるもので、OA機器・ロボット・工作機械などに欠かせない製品だ。協和精工のブレーキの特徴は、全てが既製品でなく「オーダーメイド」。取引先ごとのオリジナル製品をオーダー数に応じて製造しているため、在庫を抱えることもなく他社に容易にとって代わられないことが強みだ。

高付加価値の部品加工

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 もう一つの事業は部品加工。半導体製造装置や液晶製造装置、医療機器の部品製造を行なっている。部品加工において、協和精工には経営の効率化を図る3つのレスがある。それは「仕上げレス」「検査レス」「管理レス」。それぞれの工程の源からを管理することによって、「レス化」に近づける取り組みだ。部品加工に付加価値をつけるために、協和精工が目指しているのが部品のユニット化。ユニットメーカーになることによって更に付加価値を高め、価格競争に巻き込まれない企業体質を作り出すべく社員一丸となって取り組んでいる。

社員一人一人のやる気を高める

 企業理念は「いい会社をつくろう!」。この言葉に「会社は人である」という強い気持ちが込められている。社長の堀さんが就任して約5年を経てこのスローガンを導入、「この会社を社員みんなの会社にしていこう」という想いから様々な取り組みを始めた。そのひとつが現在も行なわれている社長以下社員全員でおこなう会議。開発から製造までの方針がこの会議で決定される。当初は社長が一方的に喋る時間が長かったが、現在は社長がほとんど発言することなく社員一人一人が主体的に考え発言するようになった。「社員全員がいい会社にしようと思えば良い結果に結びつく」。自ら考え納得して行動することで、社員の意識も高くなった。

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取り組んだ経営の「見える化」

マイナスからのスタート

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 創業は昭和39年。山林業で財を成した地元の資産家・宮脇権右衛が、経営不振に陥った製造会社を引き受けたのが始まり、つまり負債を抱えてのスタートだった。創業当初は創業者の個人資産を基に何とか経営してきたが、なかなかうまくいかない。その後半導体分野に進出するなどしたが、経営状況は改善しなかった。厳しい状況下で創業者が後継者に指名したのが、3代目となる現社長の堀政則氏(63歳)だ。

サラリーマンから経営者に

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 堀社長は山口県下関市出身で、生粋の海育ち。山への憧れから長野県内の大手メーカーに就職し、その企業から技術指導で赴いた先が協和精工だった。派遣から一旦戻ったものの「大きな会社では歯車のひとつになってしまう」という強い想いから、数年後協和精工へ転職。地元の自然に惹かれて、高森町を終の棲家と決めた。しばらくは技術者として勤務していたが、創業者からの突然の指名を受けて2000年に社長に就任した。就任直後、「経理の数字に驚いた」と語る堀社長。当時の協和精工は、前述の通り赤字体質から抜け出せない状況にあった。「社長になった以上、会社の借金は自分のもので他人のものではない。自力で返さなければいけない。」と考えた社長が着手したのが「経営の見える化」だった。

経営の見える化で赤字経営から脱却

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具体的に取り組んだのが、その日ごとに赤字か黒字かを社員一人一人がわかるような仕組みを導入すること。毎日の収支を張り出して「今日赤字だったら明日は黒字にしよう」という意識を社員に植え付け、月ごとの収支を改善するように努めた。創業者の資産が既に担保として借り入れに使われていたため、地元の人を中心に「少人数私募債」による資金調達をおこなうなどの苦労もあった。「経営と技術を一体に考えるとドキドキする」と語る堀社長。そんな社長の思いが、会社の体質を変え始めていった。

ものづくりへの飽くなき挑戦

他社に出来ないことをやる

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 当初は大手メーカーの下請けだった協和精工だが、そのメーカーが製造を止めた製品を自分たちで作り始めたことが転機となる。取引先から依頼を受け入れて、その希望にあった製品を独自に作り出すことによって、信頼を勝ち得た。「他社が4ヶ月かかるならウチは1ヶ月でやる」という社長の言葉通り、品質や技術だけでなくスピードも重視している。また大手メーカーが手がけない製品にあえて挑戦することで、顧客ニーズに応える努力も怠らない。「お客さんに信頼されるものを作りたい」。取引先の信頼に応えるということに、一切の妥協はない。

常に新しい商品を送り出したい

 堀社長の夢は、「更にいい会社にする」こと。そんな社長が求める人材は、自らやる気を高めて働いてもらえる人。「現在の製品が5年後・10年後に通用しないという意識を持つことが大事。時代ごとの新しい商品を開発し、生み出せる人材を育てていきたい」と語る堀社長。常に現状に満足せず、「旬」を読むことによって新たな挑戦を続けている。

地域に根ざした自立型企業を目指して

 社員全員が「いい会社をつくろう!」という気持ちで働く協和精工。社長が目指す自立型企業とは、「人も自立、商品も自立、会社も自立」すること。また地域との結びつきも大切にしていて、飯田航空宇宙プロジェクトにも参画するなど地元企業との連携も図っている。少子高齢化社会を視野に入れて、5年前から医療介護分野の商品開発にも進出している。地域で一番幸せを感じられる企業となることが目標だ。

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【取材日:2011年6月13日】

企業データ

株式会社協和精工
長野県下伊那郡高森町下市田1514-1 TEL:0265-35-2421
http://www.kyowaseiko.jp/