長野県長野市
角藤
角藤は、鉄骨、建築基礎、外装、土木、橋梁などを手がける長野県内有数の専門工事業者。本社に隣接する長野工場は敷地総面積7万m2、年間4万8千トンを生産する大規模な鉄骨加工工場だ。自社の持つ高い技術力を武器に、社員たちが全国の現場で活躍している。
創業は1933年。農業用金物や農機具の販売から始まり、戦後は建築資材の販売も取り扱うようになった。1960年代「ただものを売るだけではなく付加価値を付けなければ」という当時の社長の思いから、鉄骨・鉄筋加工を開始して事業を拡大。四代目となる現社長の大久保公雄氏(51歳)は、6年前社長に就任した。
「その建物の大きさや高さによって、必要となる材料はそれぞれ違う。一つ一つの現場にあった材料をお客様に納めることで付加価値が生まれる。」と大久保社長は語る。
角藤の手掛ける工事は、首都圏をはじめ県外にも数多い。液晶テレビ「亀山ブランド」で知られる三重県亀山市のシャープ亀山工場にも、角藤の鉄骨加工技術が生かされている。工場の広さは400m×200m。二棟あるうちの一棟の工場建設に200m超の超高層ビル1棟に相当する鉄骨が使われているが、これを約半年で完成させた。鉄骨を早く組み立てられるのは日本の技術力だと語る大久保社長。「一番高いビルは作れないが、一番大きな工場を作る自信はある。」角藤の鉄骨加工工場は、まさに「工場を作る工場」なのだ。
角藤の三本柱は、「鉄骨工事」「基礎工事」「外装工事」。大手ゼネコンはその全てを一つの現場で一括して請け負うケースが多いが、角藤はそれぞれの専門分野を極める専門工事業の立場を崩さない。全国に9000社近くある鋼構造物部門の評価で全国のベスト30に入るなど、業界内でも高い評価を受けている。
鉄骨加工分野において、角藤は全国でも数少ない全ての鋼材を扱うことが出来る国土交通省Sグレード認定資格を持っている。この資格を取得するためには、鉄についての技術を習得すると同時に研究や新しい工法開発も必要だ。角藤長野工場ではツーアームシステムの溶接ロボットを導入しているほか、1m四方の鉄骨コラムを加工できる高い技術力を持っている。
基礎工事部門での角藤の強みは、非常に狭く土台が作りにくい狭隘地での作業が出来る専門の機械を自社で持っていることだ。老朽化した橋脚の補強などの工事には大きな力を発揮する。震災で被害を受けた現場を早く復旧させることができるため、東日本大震災の災害復興にもこの技術が役立てられている。
もう一つの柱が外装工事。特に困難を要するのが、空港や駅など交通機関に隣接する現場で、利用客に配慮するなどの観点から施工条件が限られるケースが多い。角藤が手掛けた東京メトロ銀座駅などの工事も、鉄道の日常運行に支障がないように進められた。そのような現場でのノウハウを持っていることが角藤の強みだ。
会社には創業以来代々受け継がれている基本理念がある。それは「社会にとって必要な存在で在り続ける」ということだ。「今の日本、ひいては世界に必要なものづくりをしていく。それを作る力がなければ企業としての存在価値もないし存続も出来ない。」と語る大久保社長。年商400億円を越える企業となった現在も、地元である長野県において地域との結びつきも大切にしている。上高井郡高山村への工場移転の際、その工場に隣接する土地でワイン用のぶどう栽培を始めたこともその一例だ。
会社のホームページでは、現場の最前線で働く社員たちが就職を希望する学生に自分たちの仕事を紹介している。それぞれの現場の独立性や自主性を尊重する角藤では、新入社員の採用を各部門の担当者に任せているのだ。
大久保社長は「上司や先輩になる立場の人間に、欲しい人材を選んでもらうのはごく普通のこと」と語る。新入社員には「出る杭は打たれる」ではなく、「出ない杭はないのと一緒だ」と言っているという。自分がやりたいことを積極的にどんどんやっていくような人材を角藤は求めている。
創業60周年を機に作られた現在のシンボルマーク。アルファベットの「K」の文字を形取っているが、これには意味がある。
緑の部分はカタカナの「ト」とも読めるが、漢字にすると「人」とも読める。そして赤の部分は「!」で、情熱を表している。つまり「情熱が溢れ出る人」という意味が込められているのだ。
更に緑の下の部分が跳ね上がっているのが、「尖がった人であれ」という意味もあるそうだ。社会にとって必要な企業であり続けるために、角藤の社員ひとりひとりがシンボルマークに込められた思いを胸に今日も働いている。
株式会社角藤
長野県長野市南屋島515 TEL:026-221-8141
http://www.kakuto.co.jp/