[サイプラススペシャル]138 フレッシュでおいしい牛乳を食卓に 365日24時間稼働する工場

長野県茅野市

八ヶ岳乳業

スーパーマーケットの乳製品、中でも牛乳が並ぶ一角は、主婦の立ち寄り率ナンバーワンのコーナーである。ここに並ぶ牛乳は栄養があっておいしい、加えて食料自給率40%(カロリーベース)の日本にあっては数少ない国産100%の食品だ。しかし原料は酪農家が毎日搾乳する牛の乳、八ヶ岳乳業の茅野工場では365日休みなしの牛乳生産が続いている。

1日に搬入される生乳は約60トン

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 「脂肪やたんぱく質など、乳質が非常に良いのが八ヶ岳の牧場で搾られた牛乳、搾乳から店頭に並ぶまで2日、遅くても3日です。」と語る八ヶ岳乳業社長藤田昭雄氏。牛乳は毎日飲み、広大な八ヶ岳の、豊かな自然が育んだ「おいしさ」を味わうという。牛乳の季節ごとの微妙な味の違いについても「わかりますよ。」と身を乗り出してきた。
 「茅野工場には、八ヶ岳山麓など近隣の酪農家から1日に60トンほどの生乳(=殺菌前の搾ったままの原乳)が持ち込まれます。牛が出す乳量は、その日の気温や気候によって異なりますが、搬入され検査に合格したものは全て受け入れています。酪農家の皆さんは、朝晩搾乳し、それをこの工場に持ってきてくれます。」地元酪農家との信頼関係も篤い。受け入れから乳製品の生産まで、酪農家と同様八ヶ岳乳業の工場も365日、休みはない。
 「おいしい生乳をそのまま消費者の皆さんに飲んでいただきたい、これは1954年の創業以来、八ヶ岳乳業の変わらない信念です。」藤田社長の言葉に力がこもる。

生乳は外気に触れることなく工場に

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 搾ったばかりの生乳を積んだタンクローリーが八ヶ岳乳業茅野工場の敷地内に入ってきた。車はまっすぐ事務棟隣にある屋根つきのオープンスペースへ、ここの地面に埋め込まれた重量計で車ごと、まずは計量。次に車を工場脇に移動し、荷台のタンクのパイプを工場入り口にあるパイプラインにつなぐと、タンク内の生乳は一気に工場の貯蔵タンクへ送られていく。全く外気に触れることなく、生産ラインに取り込まれていくのだ。殺菌は130℃2秒間、ラインに組み込まれた殺菌ブレードと呼ばれる殺菌装置で行われる。温度をかければかけるほど生乳の味は落ちる、殺菌後は直ちに冷却し、一時保管用のサージタンクへ、成分無調整八ヶ岳牛乳はここでパッキングを待つ。

外気から遮断された空間で

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 工場内の入り口では、専用の白衣長靴帽子を着用、時計をはずし、筆記用具も用意されたものを使う。手を洗い、消毒マットを踏む。粘着テープを使って再度白衣の表面をチェック、エアーシャワーを浴びて生産ラインが稼動しているフロアに進む。外気の侵入を妨げるために陽圧しているという室内、しかも生産ラインは更に厚いビニールに覆われたクリーンブース内にある。外気とは2重3重に遮断されている中の作業に、こちらの背筋が伸びる。

安全・安心な製品はここから

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 八ヶ岳乳業茅野工場では、紙パック牛乳用、瓶牛乳用、そしてヨーグルト・プリン生産用と3つのラインが稼動している。
 紙パック製造では、牛乳を充填して賞味期限を印刷、印刷した日付を機械で読み取らせ、金属探知機で検査、出荷用ケースに詰められる。瓶製品のラインは、検瓶の作業から始まる。製品は学校給食や牛乳の宅配で使われている瓶入り牛乳だが、この瓶入り牛乳は観光地やイベント会場でも人気が高い。ラインでは、1時間に12000本、1日に8万から9万本の生産量だ。ヨーグルトの生産工程は、牛乳に乳酸菌などを加えた原料を1人分のパックに充填し発酵室を経て冷却、検査後出荷という流れ、自社製品ばかりでなく一部受託(OEM)製品も生産している。
yatsugatakemilk07.jpg  どのラインでも徹底しているのが製品検査と品質管理。機械的に異常が見つかれば生産ラインが止まるのは当然だが、ラインの担当者も忙しく動き回っている。担当者の業務は監視というよりも、原料の比重を確認したり製品を抜き取って目視で行う異物有無のチェック。ライン横に設置されたQCコーナーには、頻繁に行われるチェックデータの記録が書き込まれる。
yatsugatakemilk08.jpg  また、抜き取られたサンプル用の製品は、生産ライン上で行われる検査とは別に、品質管理室へ持ち込まれ、検査される。検査が終わった製品はその後、品質管理室内の冷蔵庫で一定期間保管管理する。24時間毎日繰り返される作業だが、安心・安全な製品をいかに早く消費者にとどけるか、八ヶ岳乳業の信頼を支える作業だ。

1日約500トンの水で洗浄

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 午前中というのに既に生産が終了し、洗浄作業が行われているラインもあった。生産過程はほぼ自動化されているがやはり、洗浄は人の役目。足元に置かれた洗剤の入ったバケツ、ブラシを細かく動かし、ホースから水をかける。もくもくと動く手からは誠実さが伝わる。
 「1リットルの紙パックの製造ラインでも牛乳だったり、乳飲料だったりと製品が変わるごとに生産ラインを洗浄します。実際、稼働時間よりも洗浄している時間の方が長いくらいです。」小原勝義専務取締役はその徹底した洗浄作業を説明する。ラインや装置の洗浄に使う水は1日約500トン、使われる水はここでも八ヶ岳山麓の良質な井戸水だ。

需要供給のバランスをとりながら

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 「八ヶ岳酪農協同株式会社」としてスタートした会社の歴史が示すように、恵まれた自然環境や乳質の良さと鮮度でロイヤリティの高い「八ヶ岳」ブランドを展開している。しかし、それだけではない。
 「八ヶ岳」を冠したオリジナルデザートの開発、特定の酪農家の牛乳を使った「八ヶ岳高原牛乳」や「信州霧ケ峰高原牛乳」などのより特化した商品も提供している。業務用の缶コーヒーに使われる殺菌乳の製造や、牛乳を中心とした宅配もある。また、地元密着の業態をいかした飲料販売の卸店業務も事業の柱となっている。


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 「八ヶ岳牛乳」の原材料はあくまで「牛の乳」、日ごとに変わる需給バランスを把握しつつ、常においしくフレッシュな製品を市場に出し続けるという意志、「水がおいしい、空気がおいしい八ヶ岳の自然をそのままご家庭へ」創業以来の信念は今も製品に生きている。

【取材日:2011年8月25日】

企業データ

八ヶ岳乳業株式会社
長野県茅野市ちの172 TEL:0266-72-5600
http://www.yatsugatakemilk.co.jp/