[サイプラススペシャル]139 日本唯一の「繊維学部」ファイバーイノベーション拠点へ 信大繊維学部のものづくり②

長野県上田市

信州大学繊維学部Fii(ファイバーイノベーション・インキュベーター)

次世代ファイバー工学をリードする
未知の素材・未来の技術をつくる「産学官連携施設」Fii

「プログラムを組んでマシンにかけると、すぐに製品が出てきます。」
信州大学繊維学部の土屋攝子さんが手にしたのは、ピンク色の子ども服。縫い目が全くない「編み物」です。コンピューター上で設計図を入力すれば、まるでプリンターが印刷するように、最新の「編み物機」が自動で編み上げて製品が完成します。

【特集】信大繊維学部のすごいものづくり。
今回は、今年4月にオープンした最新鋭の起業支援施設【ファイバーイノベーション・インキュベーター】をご紹介します。

最新鋭Fiiから生まれる「新しい産業」

日本の大学ではココだけ!

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 パソコンに入力すれば自動で思いのままの編み物が出来上がる「編み物機」や、幅2mを超す布を一気に織る高速の「織物機」。
 信州大学繊維学部に今年4月オープンした起業支援施設ファイバーイノベーション・インキュベーター(Fii)には、入居した企業や研究室なら誰でも使える最新鋭の繊維機器が揃っています。


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 「これだけの設備があるのは、日本の大学ではここだけ」という、信州大学繊維学部長の濱田州博先生の言葉通り、そもそも日本の大学で繊維学部があるは、信州大学だけ。単なる研究のための装置でなく、量産化の一歩手前、本番同様の環境で「試作品」を生産できる設備や、その評価性能をテストできるような環境を整えているのが特徴です。

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革新的な繊維の技術で、起業支援

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 ファイバーイノベーション・インキュベーター。難しい名前ですが、ファイバーとは繊維のこと。イノベーションは革新、インキュベーターは起業支援。
 つまり、革新的な繊維の技術で起業を支援する施設です。

 自然素材や地域に根差した綿製品を研究するアバンティという東京の会社もFiiに入居し、話題のオーガニックコットン商品の開発を行っています。
 「最新鋭の織機や編機などを使えることが最大のメリット」と、開発の中心に立つ高橋雅子さん。綿花の栽培から、商品企画、製造までを産学連携で進めています。
 Fiiには研究施設としての役割だけでなく、上田地域での産学連携の支援や、最新の情報を集め発信することで、新規事業をサポートし、あらたな産業をつくる役割も期待されています。

次世代ファイバー工学をリードする

衣料だけじゃない!すごい繊維

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 「繊維といっても、洋服だけではない」と、濱田学部長。
 「繊維」と聞けば衣服などの衣料をイメージしがちですが、現在、繊維(ファイバー)素材は建築・土木、航空機、電気電子素材など様々な産業分野で活用されています。
 「細くて長いモノ=繊維」として、ファイバー工学を進めているのが信大繊維学部の特徴です。

 「先端材料、例えばナノファイバーなども研究している」と、濱田学部長が案内したのがナノファイバー製造装置。Fiiの設備を活用し、創造工学の金翼水准教授が学生たちと研究をしていました。

ナノファイバーの可能性

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 「人間の髪の毛の数百分の一」という、ナノファイバー。ヒトの細胞レベルまで小さいナノサイズの繊維の、新しい機能と実用性を探るのが金先生の研究です。

 「ちょっと見てください。」金先生が手にしたのは、"できたてほやほや"のナノファイバーでできた白い布。肌触りはシルクのようになめらかで、薄いゴムのように弾力性があります。水を垂らすと、大きな水滴ができました。「このように水は通さないのですが、空気は通すんです。これもナノファイバーの特徴のひとつです。」
 ナノファイバーは、どんな細かい異物も通過させない高性能フィルターや、化学繊維の強度アップや高機能衣服の実現、さらに次世代電池の効率アップなどに活用が期待されています。
 防水性が非常に高く通気性に優れた高機能繊維は、透湿防水ウインドブレーカーとして製品化も間近です。

産学官の連携で「未来を紡ぐ」

Fiiで可能になった「製品化」

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 より細く、より丈夫な繊維素材。
 多様なニーズと可能性を秘める一方で「大学の研究室の規模では、製品化や実用化までなかなかたどり着けない」と、金先生は言います。
 Fiiでは、ナノファイバー製造装置のように実用化により近づく量産用機器を導入し、その特性を測ったり、製品の評価を行える施設まで備えています。「素材から製品までワンストップで考察し、生産が可能になった」と金先生。
 研究室レベルでは難しかった「製品化」が、Fiiなら可能です。


世界トップレベルの素材研究

 「製品化には産学連携が欠かせない。連携によって、新しい産業が必ず生まれると思っています」と、濱田学部長。
 企業のレンタルラボ(研究室)と、試作品の生産と分析ができる最新機器が揃うFii・ファイバーイノベーション・インキュベータ。研究開発・新規事業開拓・人材育成などの分野で産学官連携を推し進める施設・機構です。

 世界トップレベルの繊維素材を研究する信大繊維学部。最新鋭の施設から、明るい未来をつくる新素材が生まれます。

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【取材日:2011年8月31日】

企業データ

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